学生時代はヤマハ ジョグ Zに乗っていたが、現在バイクは所有していない

──ペーパークラフトの設計は資料や本などを参考に進めているのでしょうか? それとも実車を見ながら作っていくのでしょうか?
両方と言えますね。まず、資料を集めて書籍や図面で内容や数値を確かめます。そして、実車を撮影した3Dデータなどで造形的な部分のチェックをします。
設計をする最初の一歩なので、できるだけ多く資料を集めて、ゴールとなる完成モデルが頭に浮かぶまで精査していくんです。
あとは、作りやすさと造形美を天秤にかけトライ&エラーを繰り返し、納得がいくまで理想の形状に近づけるようにしていますね。
──実車を再現するうえで、特にどのような部分を重視しているのでしょうか?
車種によってポイントとなる部分は異なりますが、セールスポイントとなる部分は若干強調するようにしています。
たとえば、クルーザーモデルならリアタイヤ、フロントタイヤ、ヘッドライトを結ぶ三角形を壊さないようにしつつ、フロントフォークの角度を実物より斜めにしたり、スーパースポーツモデルなら流れるような優美な姿を意識して、細部の造形が邪魔しないように気を配って設計しています。
あと大事なことは、ユーザーの頭の中にあるであろうそのバイクのイメージを造形に表すことだと考えていますね。
──ちなみに、参考のためペーパークラフト化するバイクに乗ったり、所有しているバイクを参考にしたりすることもあるのでしょうか?
長くバイクを作品のモチーフとしてきたので、30代の頃に大型免許は取得したのですが、バイクを所有してしまうとバイクへの憧れが薄れてしまうような気がして……いまだに所有はしていません。
本当は、乗ったら違う視点で設計や試作ができるかもしれないんですけどね。
ちなみに、現在は乗っていませんが、学生時代にヤマハ ジョグZに乗っていましたね。
ペーパークラフトの面白みはユーザーとのコミュニケーション

──長年、ヤマハ発動機のサイトで公開されていたペーパークラフトを手掛けた向山さんにとって、ペーパークラフトの面白さとは何でしょうか?
ペーパークラフトを作ってくれたユーザーとのコミュニケーションです。
最初は受け入れられると思っていなかった超精密シリーズ(難易度は高いが、クオリティの高い作品が制作できるシリーズ)を完成させた方の作品を見ると、私も真似できないくらい上手く作り上げる方もいます。
ウケるモチーフ、興味も持たれないモチーフなど、ペーパークラフトを通して色々な反応を感じられるところも面白いなと思いますね。
ヤマハ発動機のペーパークラフトサイトが閉鎖されて約数年経ちますが、いまだにこれらの作品を作りたいという声や、新作を望まれる方の声が私に届きます。
無機質に思われがちな文字やデータのやり取りですが、やはりそこには発信する側の人間と受け手の人間とのコミュニケーションがちゃんと存在しており、発信する側としては励みにもなりますね。
──そうした声に応える……ではないですが、向山さんとしては今後、どのような活動をしてみたいと考えていますか?
頭の中だけでいえば様々なアイディアがあります。
たとえばヤマハ発動機のサイトで公開されていたバイクのペーパークラフトを元にしてカフェレーサー仕様やストリート仕様にしたカスタムモデルを作ったり、希少動物をペーパークラフトにしたり、伊藤若冲(いとう じゃくちゅう)が描いた絵画を立体化したペーパークラフトも作ろうと考えています。
また、もう10年以上前になりますが「萌え」という言葉が流行ったことがありましたが、その中に「廃墟萌え」という廃墟好きな人がいるという何かの記事を見たことがあり、それで言えば私は「工場萌え」だと感じたことがありました。
工場のパイプや全体像を眺めていると生き物を見ているような感覚になるので、表現したい何かとリンクする事があれば、ペーパークラフトとして工場なども題材にしてみたいと考えていますね。
レポート●モーサイ編集部・小泉 写真●向山信孝さん
2