雑ネタ

知るとバイクがもっと楽しくなる!? チェーン/シャフト/ベルト、各駆動方式を改めてインプレッション

ライター中村の考える、各駆動方式の美点

近年のモーターサイクルには、ローラーチェーン+スプロケット式、ドライブシャフト+ベベルギヤ式、コグドベルト+プーリー式の3種類の後輪駆動方式が採用されており、電動効率や静粛せいしゅく性、メンテナンス性などそれぞれに長所と短所を備えている。
(詳細はこちらから。駆動方式の歴史と特徴駆動方式の進歩
だからどの方式がベストとは言えないし、そもそも後輪駆動の種類でバイク選びをする人は、世の中にはめったにいないのだが……。もしかしたら、読者の皆様にとって何らかの参考になるかもしれないので、以下にこれまでに多種多様なバイクを所有してきた、僕自身の後輪駆動に関する体験談を紹介したいと思う。


チェーンドライブ:手入れは要るが、グレードアップが気楽に行える

改めて振り返ると、1987年に2輪免許を取得してからこれまでの間に、僕は約30台のバイクを所有したが、そのほとんどはチェーンドライブのバイクだった。そして昔と今を比較してみると、ローラーチェーンとスプロケットの耐久性は飛躍的に伸びていると思う。
と言うのも、かつてのローラーチェーンは、どんなにマメな整備を行っても、ある程度の距離を走れば残念なレベルの伸び&サビが発生したし(僕自身は未経験だが、ノンシール時代のローラーチェーンはよく切れたらしい)、アフターマーケット製のアルミスプロケットは、1万km前後で寿命を迎えるのが普通だったのだ。

チェーンドライブの旧車は、現代のパーツを用いてグレードアップを楽しむことが可能。写真は僕が15年ほど前から所有している1976年型ノートンコマンドで、ノーマルチェーンはノンシールだが、現在装着しているのはOリング入りのRK BL520RX。なお国産旧車の場合は、630→530、532→530/520といったサイズダウンを行うケースが多い。

でも現代のローラーチェーンとスプロケットは、上手く使えば2万km、場合によっては3万km以上もつことがある。もっともその耐久性は、「アフターマーケットの高級チェーンやノーマルスプロケットに定期的な清掃&注油を行えば」という条件付きなのだが。
メンテや交換時のパーツ選びが面倒な人にとっては、チェーンドライブは不向き……と言えるのかもしれない?

ノートンコマンド850
マフラーをロードスター用、シートを社外品に変更しているものの、僕のノートンはインターステイツ。ガソリンタンク容量は24L。

ベルトドライブ:静粛性と走行時の快適性が魅力

僕にとって人生で初めて所有したベルトドライブ車は、2006年に購入したハーレー・ダビットソンXL883である。そしてこのバイクで最も大きな悩みの種となったのは、ツーリングの途中で不意のダートに遭遇した際の判断だった。
基本的に僕はツーリング中に引き返すという行為が好きではないので、ほとんどの場面でそのまま進むという選択をしてきたものの、XL883でダートを走ると、頭の中は砂や石などの噛み込み、ベルト切れの不安でいっぱいになる。
幸いなことに僕自身は、実際にベルト切れに遭遇したことは一度もないのだが、周囲のハーレー乗りに話を聞いてみると、ベルト切れでレッカーを呼んだという残念な体験をしている人は少なくなかった。

チェーンドライブほど潤沢な選択肢はないけれど、ハーレーのドライブベルト+プーリーにはアフターマーケット製も数多く存在。現在僕がXL883に使っているのは純正品だが、リヤのプーリーは北米仕様に変更している。
なお近年では廃止されたが、2004年以降の日本仕様のスポーツスターでは騒音対策として、リヤプーリー内にハブダンパーを装備していた。

そのあたりを踏まえて、僕は6万kmを走った時点で、後輪駆動をチェーンドライブに変更したのだが、以後はまさかの展開が待っていた。
ベルトドライブと比較すると、まずチェーンドライブは走行中の騒音が非常にうるさかったし、高速巡航では意外に大きな振動が発生した。
また、峠道でスポーティに走ろうとすると、コーナー手前でシフトダウンした際の衝撃の大きさがネックになったし(ベルトドライブには衝撃吸収能力があるのだ)、ベルトドライブのメンテナンスフリー感覚に慣れたせいか、ローラーチェーンの定期的な清掃・注油はかなり面倒と思えた。
結局僕のXL883の後輪駆動は、オドメーターが9万kmに達したあたりで、ベルトドライブに戻ることとなったのである。

ハーレー・ダビットソン・スポーツスターXL883
”パパサン”の愛称でも親しまれる、スポーツスターシリーズ最小排気量車。

と言っても、スロットルを開けた際のダイレクト感や、ファイナルレシオの自由度を求めて、後輪駆動をチェーンドライブに変更するハーレーライダーが世の中には大勢いる。
でもメリットとデメリットを天秤にかけて考えると、僕の場合は、ベルトドライブのほうに大きなメリットを感じたのだ。

シャフトドライブ:ツーリングライダーには最高の駆動方式?

今から10年以上前に、モトグッツィV11ルマンで約2年、BMW R100Rで約1年の仮オーナー気分を味わったことはあるけれど(前者は某誌の長期試乗車で、後者は友人の預かりもの)、僕が初めて所有したシャフトドライブ車は、数年前に入手したモトグッツィV850GTである。そしてこの駆動方式に僕が抱いた印象は……、とにかく楽。
ファイナルギヤオイルの交換は1年に1回のペースで行うものの、定期的な清掃・注油の必要はなく、ベルト切れの心配もなく、騒音や振動は気にならない。改めて言うのも気が引けるが、ツーリング好きのライダーにとって、これほど最適な後輪駆動方式はないだろう。

昨今では世界で唯一のシャフトドライブ専業メーカーとなったモトグッツィ。僕の1974年型V850GTのファイナルギヤケースは、現行車のV7系やV85TTと同様のリジッド式だが、1990年代以降の1000~1400ccモデルはフローティング式が主流になっている。

V850GTオーナーになってから、僕が面白いと思ったのは、世間一般で言われているシャフトドライブ特有の弱点(製造コストの高さや重量、ファイナルレシオの変更が難しい、アクセルオン/オフに伴うトルクリアクション等)が、まったく気にならなかったことである。
製造コストの高さはオーナーになってしまえば関係ない話だし、ファイナルレシオは変更できなければできないでまあ……という気持ちになるし、他の後輪駆動と直接的な比較の手段がない以上、重さは短所と認識できない。
なお1970~80年代のモトグッツィ850/1000ccモデルで顕著と言われたトルクリアクションは、僕としては許容範囲、と言うよりも愛嬌と思える挙動で、マイナス要素とは思えなかった。

モトグッツィ・V850GT
1972年に、V7Sportと共に発売されたグランドツアラー。

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