サーキットで光るチェーンドライブの有用性
そんなわけで最近はベルトとシャフトドライブに感心する機会が増えているのだが、実は僕は数年前からTZR250で草レースに参戦中で、サーキットではチェーンドライブのありがたさをヒシヒシと感じている。
現在の僕が所有しているTZR250用のスプロケットは、フロント×3種(13/14/15T)、リヤ×5種(40/42/44/46/48T)で、組み合わせは走るコースやエンジンチューンの状況によって結構変わる。こういう形で理想のファイナルレシオを追求できるのは、やっぱりチェーンドライブならではの美点だろう。

1985年型TZR250(1KT)の純正ファイナルレシオは14/41T(2.928)だが、数年前からこの車両で草レースに参戦している僕の場合、最近の基準は15/43T(2.866)。14/40T(2.857)にしなかった理由は、前後スプロケットを通過する際のチェーンの曲がりを弱くし、抵抗を低減するためだが、重量増を考えると、15/43Tが正解かどうかは微妙なところ。
最新アドベンチャーツアラーの後輪駆動事情
近年のバイク界における後輪駆動のトピックと言えば、ハーレー初のアドベンチャーツアラーであるパンアメリカが、同社にとって約四半世紀ぶりのチェーンドライブを採用したことだろう。
個人的には、ベルトドライブにこだわって来たメーカーとして、フルカバードベルトを採用して欲しかったものの、初のアドベンチャーツアラーでそこまで大胆なチャレンジは難しそうだし、現在のハーレーにはシャフトドライブのノウハウがないのだから、パンアメリカの後輪駆動がチェーンドライブになったのは当然だろう。

2019年秋のEICMAで、ハーレーは全面新設計車となる水冷60度Vツインのブロンクスとパンアメリカを公開。ストリートファイターのブロンクスが同社の特徴であるベルトドライブを維持しているのに対して、悪路走破性を重視するパンアメリカはチェーンドライブを採用。
ちなみに、1000cc以上のアドベンチャーツアラーの後輪駆動と言うと、この分野の先駆者であるBMWのフラットツインGSがそうだったせいか、一昔前はシャフトドライブこそが王道という雰囲気になっていたものの(ヤマハとトライアンフがBMWの手法に追随)、最近はチェーンドライブ派(KTM、ドゥカティ、ホンダ、スズキ)が勢力を拡大している。
もちろん、シャフトドライブ派は耐久性と静粛性、チェーンドライブ派はダイレクトな操作性と軽さを重視しているわけだが、冒頭で述べたように、どちらの後輪駆動にも長所と短所あるので、この派閥争い?に決着がつく日は来ないと思う。
文●中村友彦 写真●中村友彦、山内潤也
2