雑ネタ

知るとバイクがもっと楽しくなる!? チェーン/シャフト/ベルト、駆動方式の美点と欠点とは?

モーターサイクルが移動するためには、エンジンの回転を車輪に伝える必要があり、一部の例外はあるものの(フランスのヴェロソレックスやドイツのメゴラなど古いバイクほど例外が多い)、駆動輪はほぼすべてが後輪である。
ただし、パワーユニットから後輪に駆動力を伝える手法は各車各様で、一番ポピュラーな方法はローラーチェーン+スプロケット式だが、そのほかに革ベルト+プーリー式、ドライブシャフト+ベベルギヤ式、コグドベルト+プーリー式、ギヤ式が存在する。

ローラーチェーン+スプロケット式

インディアンの初期の車両(1905年、500cc単気筒、2.25馬力)
自転車の世界で現代的な後輪駆動が確立したのは、1800年代末。インディアンはその方式を踏襲する形で、1901年の第一号車からローラーチェーン+スプロケット式を採用していた。

革ベルト+プーリー式

TriumphタイプH(1914)
今となっては意外な気がするけれど、黎明期のモーターサイクルの後輪駆動は革ベルト+プーリーが王道。逆に言うなら当時のローラーチェーンは、信頼性がいまひとつだったのである。

ドライブシャフト+ベベルギヤ式

1905年 FN(ベルギー) Four
シャフトドライブを得意とするメーカーと言ったら、誰もが最初に思い出すのはBMWだろう。とはいえ、ベルギーのFNやイギリスのウィルキンソンなど、1900年代初頭から縦置きクランク車ではシャフト駆動が定番の手法だった。

コグドベルト+プーリー式

1982年 ハーレー・FXBスタージス
スクーターを除くモーターサイクルの後輪駆動で、コグドベルト+プーリーの普及が始まったのは1980年代から。
内部にはスチールやケブラー製のコードが編み込まれており、後者の原点はNASAが開発したスペースシャトルの補強材と言われた。

ギヤ式

2002年スカイウェイブ650(上)スカイウェイブ650の2次減速用ギア(下)
2002年からスズキが発売を開始したスカイウェイブ650は、後輪駆動に6枚のギアを使用。もちろん、こういった構造は前代未聞である。ホンダのカムギアトレイン的な表現をするなら、ドライブギアトレイン?

もっとも、革ベルトはエンジン出力がひと桁~10ps台だった頃の技術で、1920年代後半にはほとんど消滅していたし、ギヤ式に該当するモデルはハンドシフト時代のベスパや前述のスカイウェイブ650など、ごくわずかしか存在しない。
つまり近年の定番はそれ以外の3種となる。では後輪を駆動するというひとつの目的に対して、どうしていろいろな手法が存在するかと言うと……、メーカーや車両や時代によって、理想の後輪駆動が異なるからだ。というわけで、以下に今日の定番となっている3種の長所と短所を説明しよう。

ローラーチェーン+スプロケット


1930年代から現代に至るまで、モーターサイクルの王道になっている後輪駆動方式が、ローラーチェーン+スプロケット。
かつてはチェーンの伸びや破断が弱点とされていたが、近年の一流メーカーが手がける製品なら、伸びは最小限に抑えられているし、破断の可能性はほぼ皆無となっている。オンロード、オフロードを問わず、レースの世界でも定番中の定番。
■長所
●伝達効率に優れる
●製造コストが安い
●交換作業が容易
●ファイナルレシオ変更が簡単に行える

■短所
●定期的な清掃・注油が必要
●後輪に油汚れが付着する
●主要部品の磨耗が他2種より早い
●走行中の騒音が大きい

ドライブシャフト+ベベルギヤ


世間一般ではシャフトドライブと呼ばれる後輪駆動は、基本的にはエンジン+ミッションの主要な軸が前後方向に配置されている、縦置きクランク車に適している。ちなみに、現代のクルマの駆動は基本的にドライブシャフトで行われている。
ただし、ローラーチェーン+スプロケット式を大幅に上回る耐久性と静粛性せいしゅくせいが実現できるため、1970年代以降は横置きクランク車でも採用車が増加。製造コストが高いうえに、重量が重くなるので、昨今では大排気量ツアラー用として認知されているようだが、かつてのヤマハは原付モデルにもこの後輪駆動方式を導入していた。
■長所
●静粛性に優れる
●耐久性が抜群に高く、他2種のような主要部品の交換は基本的に必要ない(ただし、シールやベアリングなどは磨耗する)
●メンテナンスフリーに近い感覚で扱える(1万~2万km前後でファイナルギヤオイルの交換が必要だが……)

■短所
●製造コストが高い
●ファイナルレシオの変更が難しい
●他2種より重量が重い
●アクセルオンで車体後半が持ち上がり、アクセルオフで車体後半が沈む、トルクリアクションが発生する

コグドベルト+プーリー


スクーターの世界では1950年代から採用車があったけれど、クルーザーを中心とする一般的なモーターサイクルで、コグドベルト+プーリーの普及が始まったのは1980年代から。
ローラーチェーン+スプロケットの欠点を克服することを目的に採用されていた。
異物の噛み込みや経年変化によって、いきなりベルトが切れる可能性はあるものの、耐久性は技術進歩のおかげで年々向上している。

■長所
●静粛性に優れる
●ローラーチェーンのような伸びがほとんどない
●清掃・注油が不要。もちろんオイル交換も不要なので、メンテナンスフリーに近い感覚で扱える
●他2種とは一線を画する、衝撃吸収能力を備える

■短所
●ファイナルレシオの変更が一般的ではない
●ローラーチェーンより幅が広い
●突発的にベルトが切れる可能性がある

→次のページ:駆動の際に何を重視するべきか

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