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円高やロシアのウクライナ侵攻が大きな影響を与えていることによる、ガソリン高が止まりません。
原稿執筆時のガソリン店頭現金小売価格は4週連続で値下がりしたとはいうもののレギュラーガソリンが170.4円(7月25日時点・資源エネルギー庁調査から抜粋)。クルマに比べガソリンタンクの容量が少ないバイクとはいえ、満タンにするとお財布にかなりの打撃が……。
このままガソリン価格が高値のまま続くと経済的に厳しいなあ……と、悩みはつきませんがこんなご時世だからこそガソリンについて知りたいと思うのは筆者だけではないはず。
今回はバイクやクルマの燃料であるガソリンについて、深堀りしていきましょう。
ガソリンは「原油を精製しただけ」のものじゃない
ガソリンが石油から製造されることはみなさんご存知でしょうが、原油からはガソリン以外にもLPガス、灯油、重油、軽油などさまざまな製品が生み出されます。
それらの製品は原油を加熱炉で熱し、大気圧より少し高い圧力で蒸留する常圧蒸留装置で精製し作られるのですが、沸点の違いで種類を区別しています。ガソリンは一般的に沸点35〜180℃、ディーゼルエンジンの燃料となる軽油が240〜350℃と留出される温度で分類されます。
もっと細かく説明するとガソリンの元となる成分は常圧蒸留装置から精製される「ナフサ」で、このナフサを水素化精製装置で硫黄分を除去し軽質ナフサと重質ナフサへ分類。軽質ナフサはガソリンの基盤や石油化学用の原料となり、重質ナフサは主にガソリンの基材となります。この基材を調合し完成するのがガソリンです。
ガソリンは石油から作られるものではありますが、原油を精製しただけでできるものではないことは覚えておきましょう。


石油から精製されたガソリンはそもそも無色!?
このように製造されたガソリンですが、ナフサを調合し完成された時点では無色透明です。
「え?給油するときに見るガソリンはオレンジ色っぽい茶色なんですけど??」と突っ込みたくなる方が多いでしょうが、無色透明のガソリンはあえてグレープフルーツジュースのような色に着色されています。
その理由はなぜか、簡単に言うとガソリンは危険性が高い燃料だから。
ガソリンスタンドで給油される際、ガソリンや軽油とともに灯油を販売しているスタンドも多いと思いますがガソリンが着色されているのは、無色透明であるこの灯油と間違えないことが一番の理由です。
常温常圧の状態で蒸発しやすいガソリンは消防法上の危険物に該当する、まさに危険な物質。取り扱い方法を誤れば、火災や爆発など大きな被害を及ぼす可能性があるのです。
なにせガソリンはマイナス40℃でも気化する物質。常温であれば常に可燃性のガスを発生させていることを忘れてはなりません。
そのためストーブやファンヒーターの燃料となる灯油との間違いを防ぐべく、ガソリンは「オレンジ色」の着色がなされています。また軽油も同様に「薄黄色」へと着色。ただ無色透明の軽油もあるので、その場合は灯油と色で区別することはできません。


ガソリンの色はJIS規格で決まっている
ガソリンの品質は、JIS規格(日本産業規格、Japanese Industrial Standardsの略)K2202-2012に細かく定められています。
JIS規格とは日本の産業製品に関する規格や測定方法などが取り決められた日本の国家規格のことで、法規に引用されないかぎり法的拘束力はありませんが、現在国内のすべてのガソリンはこの基準を満たしています。
JIS規格 K2202-2012では、ガソリンの色について「オレンジ系色」と定められています。先述の通りガソリン本来の色は無色透明ですが、JIS規格 K2202-2012に適合するように人工的に着色されているのです。

ガソリンには幻覚や幸福感を引き起こす「ベンゼン」も含まれている
余談ですが、世の中に少なからず存在するのがガソリンの匂いが好きだという人。筆者的には理解できないのですが、ガソリン臭の主な化合物はベンゼンです。このベンゼンは甘い香りがすることでガソリン臭に惹きつけられる人が発生するのでしょう。しかもこのベンゼンは幻覚や幸福感なども効果も引き起こすのだとか。
ただそこは化合物。過剰に吸入した場合はめまいや意識の喪失を引き起こす可能性もあるのだとか…。
当たり前ですが、いくら好きな匂いだとはいえガソリン臭の嗅ぎすぎには注意しましょう。
レポート●手束 穀 写真●モーサイ編集部