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呼びやすく親しみやすいバイクのあだ名
人気があるものには、必ずと言っていいほどあだ名が存在します。もちろんバイクも例外ではありませんが、中には「バブ」「ゴキ」「マッパ」など、不思議なあだ名で呼ばれるバイクも存在します。
当記事では、不思議なあだ名のバイクがなぜそう呼ばれているのかについて詳しく紹介していきます。
そもそも、バイクの車名は一体どのようにして付けられているのでしょうか。実は多くのバイクの名前は、アルファベットと排気量の数字の組み合わせで付けられています。
しかし、これをそのまま会話の中で使うとなると、非常に言いづらくなってしまうでしょう。「俺のシービーセンサンビャクは〜」のように名前を最初から最後まで言っていたら、なかなか話が進みません!?
効率的に短い言葉でバイクを呼ぶにしても、なるべく言いやすくて伝わりやすい方がいいわけで。
多くの場合「ナナハン(750cc)」や「ニーハン(250cc)」「サンパチ(380cc)」などの排気量や、「シービーアール(CBR系)」や「アールシックス(YZF-R6)」など、車名の一部分からあだ名が生まれます。
中にはハーレーダビッドソンのスポーツスター883を「パパサン」と独特なあだ名で呼ぶこともあります。ここまで来ると、もはやバイクを知らない人からすると何のことを言っているのか分かりません。
それ以外にも、見た目や性能から特殊なあだ名を付けられているバイクも存在します。
ホンダ ホークCB250T 独特な排気音から付けられた「バブ」
■1977年に登場した初代ホークCB250T。エンジンは249ccの空冷4ストローク並列2気筒OHC3バルブ。ボア×ストロークは62.0×41.4mmとショートストロークで、26ps/1万rpm。独特な排気音を生み出したのは「2 into 1チャンバー、2マフラー」の排気システム。当時の本体価格は29万9000円(メーカー希望小売価格)
ホンダが1970年代〜80年代にかけて発売していたホーク系全般で呼ばれていたあだ名です。排気音が「バーブー」と聞こえることから、この呼び名が付けられたとされています。実際に排気音を聞いてみると納得で、独特のサウンドをしています。
また、この「バブ」は2017年から『週刊少年マガジン』(講談社)で連載されている大人気漫画『東京卍リベンジャーズ』に登場する主人公の花垣武道やマイキーこと佐野万次郎の愛車として登場し、再び脚光を浴びることになりました。もちろん作中でもしっかり「バブ」のあだ名で呼ばれています。
さらにホークシリーズは、特徴的な形状をしているパーツにもそれぞれあだ名が付けられています。
やかん……丸みを帯びたタンク形状(初期型)
座布団……分厚く設計されたシート(初期型)
タヌキの尻尾……円錐形で後方に真っ直ぐ伸びたサイレンサー
スズキ GSX250E ザリガニのような見た目から「ザリ」
■1980年に発売されたスズキ GSX250E。エンジンは249ccの空冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブで、29ps/1万rpm。当時の本体価格は32万円(メーカー希望小売価格)。
スズキ GS400Eの後継車として登場したGSX250/400Eは、赤いタンクと角ばったデザインがザリガニを連想させるため「ザリ」と呼ばれていました。
直線的なラインを持つこのモデルは、今なお熱狂的なファンが多いことでも有名です。また、カフェレーサーのベース車としても人気があります。ちなみに赤いタンク以外のものも「ザリ」と呼ばれています。
スズキ GSX400Eカタナ 黒光りするあの虫を連想させる「ゴキ」
■1982年の発売後、スズキ GSX400Eカタナは翌年1983年にマイナーチェンジされ、「ゴキ」と呼ばれたカラーリングが追加された。エンジンは399ccの空冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブで、44ps/9500rpm。当時の本体価格は40万9000円(メーカー希望小売価格)。
先ほど紹介したGSX250/400Eは1982年に外装を変更され、このモデルはなんと「ゴキ」というあだ名が付けられています。なぜこのようなに呼ばれたのでしょうか。
実は、マイナーチェンジのタイミングで海外の有名デザイナーがGSXシリーズのデザインを担当したことで、前期モデルから形状が大幅に一新。丸み帯びた形状と、ブラックとゴールドのカラーリングから、ゴキブリを連想させるという結果になりました。
当然、あの虫のように自然と認知が広まっていくことになったのは、言うまでもありませんが……。
カワサキ 500SSマッハIII 見た目や性能から生まれた「マッパ」
■1969年に発売された初期型のカワサキ 500SSマッハIII。エンジンは499ccの空冷2ストローク並列3気筒ピストンバルブで、60ps/7500rpm。当時の本体価格は29万8000円(メーカー希望小売価格)。
1969年〜1980年代初頭にかけてカワサキから発売されていたマッハシリーズは、その名前から「マッパ」と呼ばれていました。心臓部に搭載された2ストローク3気筒エンジンの暴力的な加速力は、その名の通りマッハ級。多くの若者を虜にした人気モデルです。
大きなシリンダーが剥き出しになっている姿は「真っ裸」と表現することもできるため、このあだ名になったとも言われています。
2代目ヤマハ TZR250 型式名から生まれた愛称「サンマ」
■1989年に発売された2代目のヤマハ TZR250。エンジンは249ccの水冷2ストローク並列2気筒クランクケースリードバルブで、45ps/9500rpm。後方排気を採用。当時の本体価格は54万9000円(メーカー希望小売価格)。
1989年に発売された2代目のヤマハ TZR250のあだ名は、なんと「サンマ」。型式名が「3MA」であることから、そう呼ばれるようになりました。
当時はレーサーレプリカ全盛期。毎年のようにモデルチェンジがあることで自然と型式で呼ばれることになったため、このようなあだ名で区別していたというわけですね。
ホンダ ディオZX 正式名称よりも知名度が高い!?「ゼッペケ」
■1994年に発売されたホンダ ディオZX。エンジンは49ccの空冷2ストローク単気筒で、7.2ps/6500rpm。当時の本体価格は16万7000円(メーカー希望小売価格)。
ホンダから発売されていたディオ ZXのあだ名は「ゼッペケ」。一部の人は、あだ名が正式名称だと勘違いしているとか!?
パーツが安くてカスタムしやすい、原付免許もしくは普通自動車の免許を持っていれば乗れる50ccクラス、比較的誰でもアクセルを全開にして甲高いエンジン音を響かせることができる……など、10代を中心に人気がありました。
ちなみに「ゼッペケ」のように「X」を「ペケ」と呼んであだ名としたバイクはほかにもあります。
XJR……ペケジェイアール
ZXR……ゼッペケアール
GSX-R……ジスペケアール
口にしてみると正式名称より遥かに言いやすくなっているので、このあだ名で呼ばれていることにも納得です。
バイクのあだ名は、紹介したバイク以外にもたくさん存在します。全国的に認知されているものもあれば、特定の地域でしか伝わらない方言レベルのものもあります(その由来は千差万別)。
もしかしたら周囲のライダーと仲間内で、自然と使っているあだ名があるのではないでしょうか。普段の会話で何気なく使っている言葉の中に、あらためてバイクのあだ名を探してみるのも面白いかもしれませんね。
レポート●森中 忍 編集●小泉元暉