アマゾネス=世界最大のモンスターバイクという触れ込みに衝撃を受けた
四輪用のエンジンを使ったバイクとして、今なお真っ先に名前が挙がるブラジル生まれの「アマゾネス」。
現在50歳以上の人であれば覚えている人も多いかと思うが、1981年に日本に輸入されたときには、スーパーカーブームの余韻や折からのバイクブームも手伝って「世界最大のモンスターバイク」として雑誌やテレビ等で大きく取り上げられた。
当記事で紹介する芳賀吉宏さん(51歳)もそれに影響を受けた一人で、25年ほど前にアマゾネスの中古車を発見して、それまで乗っていた並列6気筒のカワサキZ1300から乗り換え、現在(2020年)まで所有し続けている。
VWビートルの1600ccエンジンを搭載するアマゾネスは今も現役だった
今となっては1600ccのアマゾネスより大きな車体や排気量のバイクも珍しくないが、バラバラという空冷ビートルそのものの排気音とともに現れたアマゾネスは、やはり一種異様な雰囲気。
現在までの走行距離は約3万kmと、所有年数の割には少ないものの、急な取材のお願いにもかかわらずちゃんと自走しての登場で、メンテナンスがしっかり行き届いている様子。普段は仲間とともに草津などへツーリングに行ったりしているそうだ。
「ほかに乗っている人は見たことないですね。バンク角は少ないしブレーキの効きも今ひとつ、クラッチも本来は足動のものを手で動かすので重いです。無茶は禁物ですが、重心は低いので峠なんかも結構素直に走ります。燃費も13km/Lとか15km/Lとかですが、20km/Lくらい走ったこともあります。かなり重いんで、立ちゴケして車体に体をはさまれて身動き取れなくなったことはあります。そのときは通りがかった若い人に助けてもらいました(笑)」と語る芳賀さん。
意外な事実、超高級車アマゾネスの外装類はFRP製だった!!
実車を目の当たりにすると、意外な発見があった。
当時の雑誌誌面などでは分からなかったが、フェンダーや燃料タンク、エンジンを囲うカバーに至るまで、外装の大半はFRP製で裏側がデコボコしている。
また、ブレーキのディスクローターは厚みが1cmはあろうかという分厚さで、キャリパーやバッテリー、メーター類も四輪用そのもの。「軽量化?何それ」といわんばかりの寄せ集め感と手作り感あふれる車体が何とも微笑ましい。
80年代当時のアマゾネスの価格は、ツーリスモが298万円、スポーツが293万円。
同時期のホンダCB750Fの新車価格は59万5000円で、1981年に発売されて「ハイソカー」として人気を博したトヨタソアラの最上級グレード、2800GTエクストラ(AT)の価格が299万8000円──。
アマゾネスがどれくらい高価だったかが分かるが、質感に限ればハーレーはもとより、今どきの東南アジア製モデルのほうがはるかにうまく仕上げている。
しかしその分、後年アメリカで生まれたボスホスやビッグカノンといった「アメリカンジョーク」のようなバイク(いずれも5000ccオーバーの四輪用V8エンジンを搭載)とは異なる真剣さ、切実さもうかがえる。
メンテナンスには苦労しているが……
日本に輸入されたのは約50台とかなり少数で、メーカーも本国では無くなっている。そんなアマゾネスを現在も維持するには相当な苦労が伺え、車体周りはホンダ・ゴールドウイングやサイドカー/トライクなど超大型車を得意とする「ファクトリートンボイ」に、エンジンは空冷ビートルを得意とするショップに面倒を見てもらっている。
「じつは別のバイク屋さんのお世話になっていたんですが、モノがモノだけにお手上げ状態で、どこか面倒見てくれるお店はないかとあちこち探してもらった末にたどり着いたのがトンボイさんです。GL1100のトライクやサイドカーも含めて今でも扱っていて、同じ水平対向4気筒エンジンだし、似たようなもんだろうということで(笑)」。
信頼できるショップに出会えた芳賀さんは、今後も可能な限り維持してアマゾネスに乗り続けたいということだ。
レポート●高野栄一 写真●高野栄一/八重洲出版 編集●上野茂岐