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さほど高性能でもない2台のスズキ製250ccスポーツは、なぜ意外と目立つのか?

車検がないのに高速道路に乗れるのが、125cc超~250cc以下の軽二輪モデルのメリットだ。そのため国内各メーカーもこのクラスに力を入れており、各社とも品揃えは様々ながらもフルカウルスポーツからネイキッド、クルーザーやオフモデルなどを用意している。
その中で、高性能軽二輪の系統に当たるのがフルカウルスポーツだが、珍しいことにスズキはその路線から少し距離を置いたモデルを2台ラインアップしている。それが今回紹介するGSX250R、ジクサーSF250だ。
今の時代、バイクの進化が目覚ましかったかつての時代ほど「高性能一辺倒」ではないものの、スズキ以外の国内3社のモデルを見てみると…
■ホンダ:CBR250RR(価格:90万2000円~)

水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブ 最高出力31kW(42ps)/1万3500rpm 最大トルク25Nm(2.5kgm)/1万750rpm 車重168kg 【生産国:日本】
※並列2気筒で高出力化を追求しながら電子制御技術のライディングモードも装備するなど、相応に気合の入ったモデルで、価格も結構高め。
■ヤマハYZF-R25(価格:69万800円)

水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブ 最高出力26kW(35ps)/1万2000rpm 最大トルク23Nm(2.3kgm)/1万rpm 車重169kg 【生産国;インドネシア】
※上級モデルのYZF-R3(320cc)と基本を共用してコストを抑えつつも、R25では相応に高出力化を追求。ネイキッドモデルのMT-03、MT-25も揃えてラインアップを拡充。
■カワサキ・ZX-25R SE/同RR(価格:101万4200円/105万2700円)

水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブ 最高出力34kW(46ps)/1万6000rpm(ラムエア加圧時:35kW(48ps)/1万6000rpm) 最大トルク21Nm(2.1kgm)/1万2500rpm 車重184kg 【生産国:タイ】
※現在の国内メーカーで唯一高回転型250cc4気筒を搭載する超高性能スポーツ。高品質なシャシーで固め、抜きん出た性能値はライバル車を圧倒するものの、価格も100万円オーバーで圧倒。
■カワサキ・ニンジャ250(価格:72万6000円)

水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブ 最高出力26kW(35ps)/1万2500rpm 最大トルク22Nm(2.2kgm)/1万500rpm 車重166kg【生産国:タイ】
※カワサキのロングセラーフルカウルスポーツ。ZX-25R以前から存在し、ツインエンジンで相応の性能を確保する一方、ネイキッドモデルのZ250とエンジン・シャシーを共用してコストも抑え、買い求めやすさも維持。
上記のように、軒並み30psを超えの性能を発揮する250ccフルカウルスポーツの中にあって、GSX250Rは並列2気筒ながらも最高出力が24ps、スズキ伝統の油冷方式で新規開発された単気筒のジクサーSF250は26ps。ライバルに対して性能値では勝ち目がないが、価格では優位に立つ。GSX250Rは63~64万円、ジクサーSF250に至っては唯一の50万円台(51万4800円)なのだ。
そして、ツーリング先や街なかでチェックしてみると、スズキの2車が意外と目に付く。「けっこう売れているのか?」
250ccという限られた排気量の中で、高性能をさほど追求していないGSX250RとジクサーSF250は、なぜに目立つのか? それを解き明かすため、市街地&一般道を流し、高速・ワインディングへ繰り出してみた。
GSX250R/ジクサーSF250の素性とスタイリング
【GSX250R】

GSX250Rはスズキの中国での合弁会社で生産されるモデルで、2017年より日本で販売。エンジンのベースは2012年に登場したネイキッドモデルGSR250に搭載された水冷並列2気筒OHC2バルブ。同エンジンの特徴は低振動かつ低中速域での扱いやすさを重視したロングストローク型で、性能スペックはGSX250Rもほぼ踏襲。ちなみに、同系エンジンは現在根強い人気を誇るアドベンチャーツアラーVストローム250にも搭載されているが、前述のとおりGSX250Rはカリカリのスポーツ性能をねらってはいない。
しかし、適度にスラントしたフロントカウルや跳ね上がったテールデザインで構成されるGSX250Rのフォルムは、なかなかにレーシー。ライバル車のフォルムと比較しても、全く引けを取らないスタイリッシュさだと感じる。
【ジクサーSF250】

スズキのインド現地法人で生産されるジクサーSF250は、ネイキッドモデルのジクサー250とともにインドで先行発売、2020年に日本での販売が開始された。新開発の油冷単気筒は、低燃費でありながら高い出力を両立できることをアピール。軽量かつコンパクトな設計で、こちらもGSX250Rと同様に低中速域からの力強いトルクを特徴とし、常用域での使いやすさをねらっている。また前述したように、約50万円という格段に安い価格もアピールポイント。軽二輪スポーツとして平均的な性能を確保しながら、この価格は相当に魅力的だ。
そしてSF250も、GSX250Rに比肩するほどスポーティなフォルムをまとう。メーターバイザー程度の高さしかないカウルスクリーンのため、整流効果がほぼ期待できないのは残念だが、レーシーな雰囲気はうまく演出されている。
どちらも好印象な、GSX250R/ジクサーSF250の一般道走行

【GSX250R・一般道走行】
またがってすぐに実感できるのが、リラックスムードの感じられる緩い前傾姿勢だということ。ハンドルは適度に低められて近くにあるものの窮屈ではなく、フラットな座面のシートも着座感は良好(実際長めのツーリングでも疲れない)。そしてシート高は、身長173cmの体格だと両足接地ではほぼカカトまで届いて不安感は皆無だ。
手強さを感じることなくエンジンを始動すると、2気筒エンジンは静かに鼓動する。スロットルをひねれば、180度クランクらしく「ドルルンッ」とした爆発と鼓動を伝えて来るが、音量はよく抑えられている。これなら早朝の住宅地で短時間暖機したとしても、迷惑じゃないだろうと思わせるサウンドだ。
走行500km程度の広報車のためシフトはやや固めな感触だが、節度はよくシャカシャカと入る。久しぶりに味わう250cc2気筒のため、回転をけっこう回しながら走るものなんだなと改めて感じたが、同車が実用的で元気に加速する回転数は4500rpmから上。自然とその辺をキープしながら走っていることに気づく。
ちなみに、トップ6速のメーター読み60km/hで約4500rpmを表示。それ以下で流すなら5速も使うが、スロットルで加減速をしつつ40~70km/hで一般道を流すとき、パワフルな感じはないものの実に滑らかで気持ちいい。比較的ロングストロークなエンジンの、穏やかな回転フィールがそう感じさせるのだろう。
【ジクサーSF250・一般道走行】
GSX250Rに対して軽く、全長がコンパクトな印象なのがジクサーSF250だ。車重で23kg軽く、ホイールベースで85mm短いのだからさもありなん。またがった印象は、GSXよりも若干上体がアップライトで着座位置も若干高め。そしてステップの位置はGSXよりやや前方寄りで低い位置。ヒザの曲がりも緩めだが、スポーティな乗車姿勢の部類だろう。肉厚で幅広に感じるシートは、実際GSXよりも若干高く、両足接地でカカトが1~2cm浮く。とはいえ不安感は皆無だ。ただし、少し長めに走って感じたのは、座面がやや前下がりでシートが意外と硬い感触なこと。比較的跳ね気味なサス設定も相まって、長距離ツーリングでは尻の痛みを感じるかもしれない。
軽快に吹き上がる単気筒エンジンは、音量が程よく抑制されているものの歯切れのよい鼓動が感じられる。シフトを入れスロットルを開けていくと素直かつ軽やかに加速。ツブツブとした振動を感じさせる点は単気筒ならではで、スロットルに対するエンジンレスポンス、ピックアップのよさはGSXよりも上。軽快な車体と相まって、生きの良さを明瞭に実感できる。トップ6速ギヤのメーター読み60km/hでの回転数は約4200rpm。この回転域だと6速を常用でき、実用的な加速が味わえるのはGSXより低い3500rpm付近からという印象。元気な加速を味わうなら4500rpmから最大トルクを発生する7500rpm付近までを使えばいいが、歯切れのよい単気筒ならではの加速感は、今や2気筒が主流の国産250ccフルカウルスポーツの中で、なかなかに好印象だ。
キャラクターの違いを実感できる、高速道路でのGSX250R/ジクサーSF250
【GSX250R・高速走行】
一般道を走る限りでは、控えめな存在感で素直かつ滑らかな加速を味わわせるGSX250Rだが、高速の入ると同車の安定感のある性能がクローズアップされてくる。同行したジクサーSF250と比較しての印象が強くなってしまうが、250スポーツとしては長めのホイールベース(1430mm)とフロントの硬すぎないサスの感触もあって、挙動がゆったりとして乗り手を疲れさせないのだ。スクリーン高が適度にあるために整流も効いていて上半身は大きく揺らされず、すっぽりと着座できるシートの落ち着き感も好印象。
メーター読みで80km/hを超えるとエンジンはそこそこに回っている印象となるが、6速ではちょうど6000rpm付近を指す。高速の120km/h区間で試すと、100km/hで約7500rpm、120km/hで約9000rpmとなる。ピークトルクを7300rpmで発生するエンジンだから、8000rpm以上ではさほど力感はないものの、120km/hまでストレスは感じずに難なく到達。またそうした速度域でも、振動がどこにも出てこないのがGSXの優れた点だ。
さらに加速しようとすればメーター読みで130km/hは超えていくはずで、計算上は140km/hでレッドゾーンに近い1万500rpmに届くはずだが、実際はそこまで伸びないだろう。だが、不満はない。振動も増さず、そうした高速域でもサスの挙動に破綻も感じられず安定しているからだ。
【ジクサーSF250・高速走行】
トップ6速、メータ読み80km/hで約5250rpm付近を指すジクサーのエンジンは、最高出力、ピークトルクともにGSXより高い回転数で発生する。それゆえ100km/h、120km/hと速度を上げていっても力感はGSXより長く続く。しかし、それと同時に振動がステップ、ハンドルに現れ始める。高速域になるほど単気筒ならではの鼓動にネガな要素が混じってくるのだが、とはいえ許容できるレベル。だが、高速を巡航するなら100km/h強までがストレスを感じない領域かもしれない。
最高速はおそらくGSX250Rと同等で、エンジンはGSXより勢いが長く続く印象だが、そこまで絞り出したい気持ちにはならない。そして、巷間言われている標準設定でのサスの硬さが、路面の継ぎ目などで感じられる分、高速巡航ではGSXほど落ち着いた気分になれない。旧知のライター中村友彦氏もその点を他誌の試乗で記していて、リヤのプリロード(7段階調整可能で標準設定は4)を弱めたほうが具合がいいし、「最弱の1にしても悪くない」とも)と書いていたが、自分もそう感じた。そして、防風効果をほぼ期待できないジクサーSF250のカウルスクリーンも、高速では分が悪い。
とはいえ、それも比較しての話だ。同行したジクサーSF250オーナーの友人は、このバイクで仙台へ牛タンを食べに、名古屋へひつまぶしを食べにと、高速を使ってグルメツーリングを楽しんでいる。だから、ジクサーでも高速ツーリングで十分役を果たす。GSX250Rに快適性で若干劣るというだけのことなのだ。
GSX250R/ジクサーSF250・ライディングポジション


■写真では分かりづらいが、身長173cmのライダーがまたがったGSX250R(上写真)は低い位置にしっとりと座っている印象で、ジクサーよりシート高も若干低くて両足接地ではかかとまでほぼ接地。対するジクサー(下写真)は、高い位置への着座感があり、ハンドル・メーター類が下方にある印象。また両足接地した場合のジクサーはカカトが1〜2cmほど浮くが、まったく不安はない。
以上、今回はここまで。次の機会には、ワインディングでの2車の印象ほか、結局2台のキャラクターはどう違うのかを紹介します。
| 項目\モデル名 | GSX250R | ジクサーSF250 |
| エンジン/弁形式 | 水冷4ストローク並列2気筒OHC2バルブ | 油冷4ストローク単気筒OHC4バルブ |
| ボア・ストローク/圧縮比 | 53.5×55.2mm/11.5 | 76×54.9mm/10.7 |
| 排気量 | 248cc | 249cc |
| 燃料供給装置 | フューエルインジェクション | フューエルインジェクション |
| 点火方式 | フルトランジスタ | フルトランジスタ |
| 始動方式 | セル | セル |
| 最高出力 | 18kW(24ps)/8000rpm | 19kW(26ps)/9300rpm |
| 最大トルク | 22Nm(2.2kgm)/6500rpm | 22Nm(2.2kgm)/7300rpm |
| 燃費(WMTCモード値) | 32.8km/L | 34.5 km/L |
| 変速機 | 6段リターン | 6段リターン |
| 変速比1 | 2.416 | 2.500 |
| 〃 2 | 1.529 | 1.687 |
| 〃 3 | 1.181 | 1.315 |
| 〃 4 | 1.043 | 1.111 |
| 〃 5 | 0.909 | 0.954 |
| 〃 6 | 0.807 | 0.826 |
| 一次/二次減速比 | 3.238/3.285 | 3.086 /3.076 |
| 全長/全幅/全高 | 2085/740/1110mm | 2010 /740 /1035mm |
| 軸間距離/最低地上高 | 1430/160mm | 1345/165mm |
| シート高 | 790mm | 800mm |
| キャスター/トレール | 25°35′/104mm | 24°20’/ 96mm |
| タイヤサイズ前 | 110/80-17M/C 57H | 110/70R17M/C 54H |
| 〃 後 | 140/70-17M/C 66H | 150/60R17M/C 66H |
| 車両重量 | 181kg | 158kg |
| 燃料タンク容量 | 15L | 12L |
| エンジンオイル量 | 2.4L | 1.8L |
| 車体色 | 青、白、赤×黒、黒 | 青×白、赤×黒、マット黒 |
| 価格 | 64万7900円(青、白)、63万5800円(赤×黒、黒) | 51万4800円 |
| 生産国 | 中国 | インド |
文●モーサイ編集部・阪本一史 写真●モーサイ編集部、スズキ、ホンダ、ヤマハ、カワサキ
スズキ
TEL0120-402-253(お客様相談室)
https://www1.suzuki.co.jp/motor/











































