■入庫したハーレーダビッドソンFXSローライダー(1980年式)。
SNSでの呟きで、ショベルを引き取り、レストアすることに!
バイクいじりが大好きなカメラマンの小見です。
便利なご時世、SNSなるモノを始めて2年弱といった時期のこと。ふと思っていたことをボソッと呟いてみたところ、投稿し合っていた同業者の友人から突然DMを頂いたのです。
何を呟いたかというと、バイクのデザインって作り手の意思がもっとも反映されるのは、やっぱり初期型じゃなかろうか?といった思い込みとともに、昔好きだったけれど縁はないだろうと思っていたハーレーダビッドソン・ローライダー(ショベルヘッド)の拾い画像を投稿したのです。
ここでちょっと余談で、自分とハーレーの仕事上での関わりを少々。「モーサイ」の連載で読んでいただいている記事、私の担当していた自己車両は国産のバイクだけだったのですが、じつはずっと昔は他社のハーレー専門誌にて、古くはWLA~ナックル、パンヘッド、ショベルの世代など、かなりの数を撮影していました。
撮影で乗った感触ではツインカム88のローライダー(京都での発表試乗会に行った)がしっくりきて、かなり欲しくなったものです。
だが工具の用意も経済的余裕もなく、結局ツインカム88には縁がありませんでした。
話を戻します。
どうしてまた急にDMをくださったんだろうと文面を拝読してみると、ご当人と私は30年以上も前に同じ喫茶店の常連で、よくバイク談議をしていた友人であったと判明。驚きました。そして懐かしい文京区の喫茶店を思い出しました。
時の流れは酷なものでバイク乗りだったマスターの消息は分からず、喫茶店もとうの昔に閉店していました。なのに、薄れていた店内や常連たちの顔はSSDからデータを引っ張り出すが如く、瞬く間に私の脳裏に再生されたのですよ。
さらに驚いたのは続く文面で、乗らずに長期保管していたローライダー(状態不明)を引き取りませんか?という、友人・三平さん(仮名)からのお申し出でした。
えっ! ローライダーで、ショベルでつか?
AMF時代に近いローライダーと言えば、あのデザインである。ツインカム88も素晴らしいが、古い人間にしてみるとノコギリクワガタとミヤマクワガタの違いほど造形や存在感に差を感じるのは否めない。あぁ、大変だ(嬉しいが責任も)。

■ローライダーを引き継ぐ話の当初。三平さん宅を訪ね、数十年ぶりの再会で昔話に花が咲く。「随分久しぶりだけど、車体を見てみますか」と4重にかけられていたカバーをめくる三平氏。

■おお……なんてこった。人知れず植物やサビと親睦を深めていたらしきショベルヘッドが、ついにその姿を現した(大混乱)。

■そういえばインチ工具はなかったなーと正気に戻り、通販で比較的廉価なインチ工具を漁ってみました。スパナやメガネレンチはまさにそんなノリで、六角はまあまあクラス。

■KTCやスナップオンのハンドルがあるので、ソケットレンチはちゃんとしたモノを選択。“デイトナガレージ”のインチソケットセットを購入。

■メトリックの工具はキャビネットに入れてあるので、インチ工具はわかりやすいように別にしておきます。デイトナのメンテナンスツールバッグを選びました。

■職人さん愛用の道具入れ的デザインでありながらスプレーが横に入れられるポケットもあり、かなり使いやすいもの。

■ずいぶん前、ハーレー専門誌の撮影で各地を回っていた時代のスナップ。「チョッパージャーナル」編集長であった渡辺まこと氏がホットバイク在籍当時。氏のFLを預かって交代要員で楽しんでるところ。

■思い起こせば「VIBES」創刊号や初期の撮影では普通にショベルのハーレーも参戦していた。神山均さんらと雨の中、福井県まで自走で行ったりもしたが、当時の編集長であった只野氏は元気だろうか。

■いよいよ意を決して不動ローライダーをユニックなど使わずに移動できるか、作戦決行。周りにあった植木鉢を全部どけて、車体カバーを撤去し、移動準備にかかる三平さん。

■4重のカバーや紐を外すと車体前側が姿を表した。なんだか茶色い部品が一層増えた? 左は、手伝ってくれながら笑いが堪えきれないエージ君(連載中エイプの元オーナー)。

■車体下に括り付けられていた謎の単管パイプ。どうしたものか考え込むふたり。
車体カバーをめくってみると……
それから数日後。三平さんが懐かしいのと、ローライダーがどんな様子なのかワクワクドキドキの心境で彼の保管場所を訪ねてみました。ひとしきり昔話に花が咲き、同業の話題(カメラ話)で盛り上がったあと、何重にもかけられた車体カバーをジワジワめくってみました。
「おぉ……」!
四半世紀近くそのままだったローライダーは、緑青のせいかあちこちにグリーンとシアンの色調と赤サビの赤やアンバー色が散りばめられ、私の梅干しほどの脳内電子計算機ではいったいどのくらい再生に時間がかかるのかすぐには弾き出すことができませんでした。
非常に面白いけど「こりゃ大変だ~!」と複雑な喜びを、一応モーサイ編集部でいつも担当してくれている黒田氏にひとまず連絡をしておきました。
それから数ヶ月。お互いに多忙な状況だったのですが、編集部はやけに乗り気で、担当の黒ちゃんは「小見さ~ん、ローライダーどうなってます~?」な~んて、じつに軽いノリ。私がすでに引き取ってきて作業を始めていると思っていたらしい。
なかなか受け取りに行けていませんでした。
三平さんをせかす意図はなかったし、移動の大変さも想像できていました。
あちこち固着しているであろう車体が容易に動かせるとは思えないので、部分的に油だけでも挿しに行こうかと思ったものの、なかなか業務のタイミングが合わずそれも難しかったのです。
心変わりがあっても不思議ではないしなと、率直にご自身でレストアしたいのであれば、私はそれでも結構ですョと連絡をしたりしているうちに、いよいよ引き取りの日が決まりました。体に不調のあった三平さんの負担にならないよう、不動車扱いに慣れた重量車仲間=エイプの元オーナーのエージ君にアシストを要請し、一発勝負?でローライダー移動に取りかかることにしました。

■単管パイプが外せたので左前から眺めた図。昔レーサーにした廃車同然のGS750よりはまだマシというレベルで、きっと何とかなるだろうが構造については未知の領域が多い。

■平たくなったタイヤに空気が入るか賭けに出た。幸いなことに前後ともパンクはなし。

■固着した前後キャリパーに少しづつ衝撃を与えて、ピストンを引っ込めるよう念力を。後日キャリパーのピストンシールは換えるにせよ、運搬中にもれぬよう祈るのです。

■サビたローターにブラシをかけて、少しでも転がり抵抗を減らそうともくろむ筆者。いつの間にか無精髭が白くなっていて、これを見た自分が老いを痛感したカット。

■穴は空いているがシンプルな一枚モノのローター。見事にサビ仕様である。

■構造のよく分からないリヤディスク周辺も、ハンマー攻撃で固着をほぐしてみた。このキャリパーとスプリングの関係はどういう意味だろう(当日の感想)?

■シート下のレール(フェンダーの固定にもなってますね)に付着した緑青さん。舐めたら死んでしまうのだろうか?などとくだらないことが頭に浮かびました。昭和なので、まだ緑青は毒ということになっています。

■ヘッドライトリムやウインカーにも緑青さんがはびこっています。もう致死量かもしれん。

■思っていたよりミラーの位置も低かったため、ミラーを外さずに標準ルーフのハイエースに積むことができました。最低地上高は普通のラダーでも大丈夫。

■ついに手元においでになったショベル・ローライダー。どこから手をつけたらいいのか途方に暮れそうなので、気にせず思いついたまま美化作業し、各部基本的な押し歩きの動きの良さから判断して復元してみます。
不動状態のショベルを運搬!高低差がきつい!
三平さんのご実家は道路から階段で少し上がったところにバイクが置いてありました。しかもローライダーのブレーキは固着し、タイヤにはエアがほぼ入っていませんでした。
空気入れやハンマー、ワイヤーブラシにCRC 5-56を用意しておいたので、さっそく移動のための対処にかかります。片押しキャリパーなら少し楽ですが、フロントブレーキが対向4ポットに換装されていたので慎重にキャリパーをたたき、ピストンが僅かに引っ込むよう軽くショックを与えてから、次にタイヤにエアを入れてみました。チューブは大丈夫らしく、徐々に車高が上がります。何だか動かせそうな気がしてきました。
動かす前に、サビで真っ赤になっていたディスクローターにワイヤーブラシをかけ、少しでも抵抗を減らす努力をしてみました。すると、ほんの少し動かせたのですが、まだ車体を運べるほどではありません。動かないのはもしかして?とストロークの長いチェンジペダルを操作してみると、ギヤがローに入っていたようで、ニュートラルにするとじわっと車体が動くようになりました。
次は道路に下ろすため、階段をノーブレーキで下るという作業が待っています。ラダーレールを持ってきたので準備していると、昔使っていたという特製?の“そこ専用のラダー”が発掘されました。これなら公道の中央付近までアルミのラダーを出して通行の妨げにならずに済みます。
道路まで下ろしたあと、トランポに積むためにミラーと外そうかと思ったら、高さはそれほどでもなくそのまま積めそうな感じだったので押し込んでみました。その点は、予想より楽にローライダーがトランポに収められたわけです。
ひとしきり後々の話を済ませ、三平さん宅をあとにして都内北部からの帰路、これからの手順を考えてエージ君に下ろすまでのアシストをお願いしたのでした。
車庫に着いてからは、ブレーキがまったくあてにならないため、慎重にローライダーを降ろしました。
何故かスラッシュカットのマフラーだけは少し磨けば綺麗になりそうで、これが最初の楽しみだなとトイレに行って戻ってみると、なんとエージ君がその隙に勝手にマフラーを磨いてしまい綺麗になっていた。なんだか少し楽しみを奪われた気分でした(笑)。
さあショベル君、(そこそこ)綺麗にしてやるぞ!

■やや絶望的かもしれないエキパイはクローム層がサビてひび割れし、浮いてしまっています。前面剥ぎ落として銅下も落としてから判断でしょうか。手がかかりそうでワクワクしますね。

■色温度の下がった西日を受けて、燦然と輝くサビサビローター。使用限界が何mmかが分からないが、ホイールから外して裏面もサビ落とししなくてはダメでしょうね。フォークもお約束のようにオイルもれアリ。

■シートに座れば目に飛び込んでくるこの光景。これだけで美味い酒が呑めそうだ。

■とうにめっきの浮きまくったトリプルツリーのカバーに、ローライダーのロゴ。ここは再めっきするかもしれないけど、新品のデカールなど存在するのでしょうか。

■唯一、少しの手間で綺麗になりそうなマフラーから磨いてみようかと思ったらコレです。心理的に美味しいところをもっていかれました(笑)! オフロード仲間でもあるエージ君。

■エイプ・ダートラ号の置き場を占拠したローライダー。エイプは母屋1階の廊下に強制移転となりました(ここがまた夏は暑いんですよ)。

■もともとはハンドルってクロームめっきだったのではないでしょうか。なんでこんなに茶色いんです??? スイッチボックスは化石のよう。

■リヤ周りの緑青さんと赤サビさん。クモの巣や謎の虫……いろいろ出てきました。

■赤~いタンクキャップがどんな感じか、どこまでいっちゃってるか、ポリッシャーで軽く研いでみました。サビが深いようなので、本気で削ったら肉厚が薄くなってしまいそうです。

■インチ工具を使ってみたくて仕方がありません。デイトナツールバッグをローライダーの横に持ち込み、軽い作業から準備開始。

■削りミスをしても心理的ダメージが少なそうなタンデムステップのブラケット金具。緑青&サビに塗れたコイツから実験台にしてみます。9/16メガネの初陣です。

■こういう風化具合は個人的には見慣れない緑要素です。サンダーなどで削り取る方法と、「HOLTSサビ・チェンジャー」を塗って化学処理してから上塗り方式。どこかで試したい。

■ハイコーキのインパクトドライバーに真鍮のブラシを取り付け、地肌をなるべく傷めないよう処理をしてみましたが、表面の荒れは落とせないのでエスカレートしそう。
レポート&撮影●小見哲彦
プロフィール●小見哲彦
無類のバイク好きカメラマン。
大手通信社や新聞社の報道ライダーとしてバイク漬けになった後、写真総合会社にて修行、一流ファッションカメラマン、商品撮影エキスパートのアシスタントを経て独立。神奈川二科展、コダック・スタジオフォトコンテスト等に入選。大手企業の商品広告撮影をしつつも、国内/国外問わず大好きなバイクを撮るように。『モーターサイクリスト』誌ほか多数のバイク雑誌にて撮影。防衛関係の公的機関から、年間写真コンテストの審査員と広報担当人員への写真教育指導を2021年より依頼されている。
<取材協力>
○デイトナ
https://www.daytona.co.jp
○旧友 三平さん
○バイク・釣り・ラジコン仲間のエージ君
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