ヒストリー

Vツインじゃないハーレー大図鑑「ゴルフカートにスクーター、2ストスポーツも!」1950〜1960年代編

ハーレーダビッドソンには50ccやオフロード車もあった!

最近でこそ、オフロード走行も視野に入れたアドベンチャーモデル「パンアメリカ」や電動モデル「ライブワイヤー」など今までイメージとは違ったモデルを展開しているハーレダビットソンだが、「ハーレー」と言えば多くの人が大排気量Vツインエンジン搭載の威風堂々のビッグなクルーザーをイメージするだろう。

2021年モデルとして登場したハーレーダビッドソン初のアドベンチャーモデル「パンアメリカ1250」。日本では7月より発売開始で、価格は231万円〜。
「パンアメリカ1250」はV型2気筒ではあるものの、新開発の水冷エンジンを搭載するなど、チャレンジングなモデルだ。

だが、ハーレーダビッドソンの100年以上に渡る長い歴史の過程では、ミニバイクやスクーター、オフロード車も存在していたのだ。そうしたユニークな「ハーレーファミリー」たちを当記事では紹介したい。

ハーレーにVツインが登場したのは1909年から

ハーレーダビッドソン=Vツインが今や定石のようになっているが、かつては様々なエンジンレイアウトのマシンたちがハーレーダビッドソンのマークを付けて販売されていた。

さかのぼれば、1903年の創業当初は409ccの4ストローク単気筒エンジンでスタートし、今から112年前の1909年にVツインエンジン(810cc)が登場。
裏を返せば創業から数年間は単気筒エンジンのみを生産していたのであり、それ以降、第二次世界大戦を挟んで戦後復興の復興状況に合わせて、経済的なシングルモデルを生産していた。
また、それ以外にも水平対向エンジンや自社製の2ストロークエンジンまで手掛け、排気量では50ccや90ccのミニモデルまで存在していた。

他のモーターサイクルメーカーにしても、シンプルな構造のエンジンで創業している例は多い。
縦置きVツインで有名なモトグッツィは、戦前に水平単気筒エンジンでスタートしたし、「Lツイン」(90度Vツイン)でおなじみのドゥカティは、戦後50cc 4ストローク単気筒搭載の原動機付き自転車・クッチョロが始まりだったのだ。

ハーレーダビッドソンも例に漏れず、黎明期はもちろんのことVツインエンジン登場後も、市場の動向に合わせた様々なタイプのモデルを供給した。
そして、ハーレーは1960年にイタリア・アエルマッキの株式の50%を取得、多くのイタリアンハーレーを市場に投入してユーザーを増加させていったのである。

*当記事は2008年発行『GREATEST HARLEY1903-2008 ハーレーダビッドソン105周年とVツインの100年』(八重洲出版)の内容を編集・再構成したものです

ハーレーダビッドソン「B HUMMER」(1955年)

ハーレーダビッドソン「B HUMMER」(1955年)

1947年より、ハーレーは自社製の2ストロークモデルを開発。
ドイツのDKWを模した、125cc2ストローク単気筒エンジン搭載のS125というモデルを1947〜1952年まで生産し、価格の安さと手軽さで通勤や通学などにバイクを用いる人にも支持された。
1953年には165ccモデルも追加されている。写真のB HUMMER(ハマー)は特にスタイリッシュな外観のモデルだ。しかし、1960年にアエルマッキを傘下として以降は、徐々に自社製2ストモデルは姿を消していった。

B HUMMER主要諸元(1955年)

全長:── 全幅:── 全高:── ホイールベース:1308mm 最低地上高:── 車両重量:──
エンジン形式:2ストローク単気筒 排気量:124.87cc ボア×ストローク:52.39mm×57.94mm 圧縮比:6.6 最高出力:3ps 最大トルク:── 変速機3速
燃料タンク容量:7.1L ブレーキ(F/R):ドラム/ドラム タイヤサイズ(F/R):3.50-18/3.50-18


ハーレーダビッドソン「C SPRINT」(1961年)

ハーレーダビッドソン「C SPRINT」(1961年)

1961年、ハーレーダビッドソンはイタリアの名門アエルマッキと提携、アメリカ市場においてハーレーブランドで発売されることになった。
その第1号として手薄だった250ccクラスに投入されたのが、このモデル、C SPRINT(スプリント)だ。アエルマッキ・アラドーロなどの傑作エンジンとして世界的に有名な4ストロークOHV水平単気筒エンジンを搭載し、最高速130km/hをマーク。イタリアンデザインが特徴的なハーレーダビッドソンだ。

C SPRINT主要諸元(1961年)

全長:1994mm 全幅:724mm 全高:── ホイールベース:1321mm 最低地上高:127mm 車両重量:118kg
エンジン形式:4ストロークOHV単気筒 排気量:246.2cc ボア×ストローク:66mm×72mm 圧縮比:8.5: 最高出力:18ps/7500rpm 最大トルク:── 変速機:4速
燃料タンク容量:15L ブレーキ(F/R):ドラム/ドラム タイヤサイズ(F/R):3.00-17/3.00-17


ハーレーダビッドソン「AH TOPPER」(1962年)

ハーレーダビッドソン「AH TOPPER」(1962年)

ハーレーダビッドソンにはスクーターも存在した。
1960年に登場したTOPPER(トッパー)スクーターは、自社製の165cc 2ストロークエンジンはシリンダーが水平にレイアウトされ、Vベルトを使用した自動変速装置を採用。始動はキック式ではなく。ユニークなリコイルスターターを採用していた。
1965年まで生産され、州によっては免許不要でOKだった5ps仕様のモデルも造られた。

AH TOPPER主要諸元(1962年)

全長:── 全幅:── 全高:── ホイールベース:1308mm 最低地上高:── 車両重量:── エンジン形式:2ストローク単気筒 排気量:165cc ボア×ストローク:60.33mm×57.94mm 圧縮比:6.6 最高出力:9.5ps 最大トルク:──  変速機:オートマチック
燃料タンク容量:6.6L ブレーキ(F/R):ドラム/ドラム タイヤサイズ(F/R):4.00−12/4.00−12


ハーレーダビッドソン「BTH SCAT」(1963年)

ハーレーダビッドソン「BTH SCAT」(1963年)

1962年に登場した、2ストローク175cc単気筒エンジンを搭載したオフロードモデルがSCAT(スキャット)だ。
ハマー系モデルをベースに、アップマフラーやアップフェンダーを装備したオフロード仕様で、リアサスペンションにはカンチレバー方式を採用。このスキャットはアメリカで生産された最後の2ストロークモデルのひとつで、以降の小排気量ハーレーはアエルマッキ製となる。

BTH SCAT主要諸元(1963年)

全長:2057mm 全幅:── 全高:──  ホイールベース:1320mm 最低地上高:── 車両重量:94.6kg エンジン形式:2ストローク単気筒 排気量:175cc ボア×ストローク:60mm×62.5mm 圧縮比:── 最高出力:10ps 最大トルク:── 変速機: 3速
燃料タンク容量:7.3L ブレーキ(F/ R):ドラム/ドラム タイヤサイズ(F/ R):3.50-18/3.50-18


ハーレーダビッドソン「D-3 GOLF CAR」(1963年)

ハーレーダビッドソン「D-3 GOLF CAR」(1963年)

ハーレーダビッドソンではゴルフカーも生産販売していた。
1962年登場のハーレー・ゴルフカーD-3は、ハーレー傘下のトマホーク社が生産。チューブラーフレームにグラスファイバーボディの構成でパワーユニットには2ストローク250cc単気筒エンジン+ATミッションを採用。
電動モデルも発売されたほか、トレーラー仕様やキャンバストップ仕様も存在する。


ハーレーダビッドソン「M-50」(1965年)

ハーレーダビッドソン「M-50」(1965年)

ハーレーには50ccモデルも存在した。
アエルマッキ製で左グリップによる手動3速ミッションを備え、最高速は65Km/hを誇ったのがこのM-50。フレームはオープンタイプで、女性や初心者にも受け入れられた。
翌1966年には前後18インチタイヤを装備し、最高速85km/hのスポーツモデルM-50MSや、65cc版も登場。1971年まで生産は続けられた。

M-50主要諸元(1965年)

全長:1814mm 全幅:650 全高:── ホイールベース:1120mm 最低地上高:109mm 車両重量:51kg エンジン形式:2ストローク単気筒 排気量:49.6cc ボア×ストローク:38.8mm×42.0mm 圧縮比:10 最高出力:2.5ps 最大トルク:── 変速機: 3速
燃料タンク容量:6L ブレーキ(F/ R):ドラム/ドラム タイヤサイズ(F/ R):2.00-17/2.00-17


ハーレーダビッドソン「BOBCAT」(1966年)

ハーレーダビッドソン「BOBCAT」(1966年)

燃料タンクからリヤフェンダーを一体式とした、個性的なデザインで登場したBOBCAT(ボブキャット)。その一体型パーツの材質はABS樹脂製で、オフロードモデルをベースとしたカフェレーサー的存在だ。
デザイン担当はあのウィリー・G・ダビッドソン。
エンジンはスキャット系の自社製2ストローク単気筒175ccだが、生産は1966年の1年のみで、ミルウォーキー製エンジンの小排気量車としてはファイナルモデルとなった。

BOBCAT主要諸元(1966年)

全長:2007mm 全幅:775 全高:── ホイールベース:1321mm 最低地上高:── 車両重量:── エンジン形式:2ストローク単気筒 排気量:175cc ボア×ストローク:60.3mm×61.1mm 圧縮比:7.5 最高出力:── 最大トルク:── 変速機: 3速
燃料タンク容量:7L ブレーキ(F/ R):ドラム/ドラム タイヤサイズ(F/ R):3.50-18/3.50-18


ハーレーダビッドソンH SPRINT(1967年)

ハーレーダビッドソンH SPRINT(1967年)

1961年の登場以来、好評を博していた4スト単気筒250ccモデルのスプリントがマイナーチェンジした姿。エンジンはアルミヘッドとなり、ショートストローク化された。燃料タンクは1962年型ロードレーサーのタンクが用いられている。

H SPRINT主要諸元(1967年)

全長:── 全幅:── 全高:── ホイールベース:1354mm 最低地上高:── 車両重量:123.6kg エンジン形式:4ストロークOHV単気筒 排気量:248cc ボア×ストローク:72mm×62mm 圧縮比:8.5 最高出力:── 最大トルク:── 変速機: 4速
燃料タンク容量:19.7L ブレーキ(F/ R):ドラム/ドラム タイヤサイズ(F/ R):3.00-18/3.50-18


編集●阪本一史/上野茂岐 写真●八重洲出版/ハーレーダビッドソン

  1. どっちが好き? 空冷シングル『GB350』と『GB350S』の走りはどう違う?

  2. GB350すごすぎっ!? 9000台以上も売れてるって!?

  3. HAWK 11(ホーク 11)の『マフラー』をカスタムする

  4. 掲載台数は3万3000台を超え、右肩上がりで成長を続けている「BDSバイクセンサー」とは?

  5. 【待ちに待った瞬間】 HAWK 11(ホーク 11) 納車日の様子をお届け!

  6. “HAWK 11(ホーク 11)と『芦ノ湖スカイライン』を駆け抜ける

  7. “ワインディングが閉ざされる冬。 HAWK 11(ホーク 11)となら『街の朝駆け』も悪くない。

  8. “スーパーカブ”シリーズって何機種あるの? 乗り味も違ったりするの!?

  9. ダックス125が『原付二種バイクのメリット』の塊! いちばん安い2500円のプランで試してみて欲しいこと【次はどれ乗る?レンタルバイク相性診断/Dax125(2022)】

  10. レブル250ってどんなバイク? 燃費や足つき性、装備などを解説します!【ホンダバイク資料室/Rebel 250】

おすすめ記事

【東京モーターショー2019】見所は乗り物だけじゃない! 「美の象徴」コンパニオン特集!:その7 モンキー125用フロントバイザーがハリケーンから登場 レブル1100 【ホンダ レブル1100徹底解説】アフリカツイン譲りの1100cc2気筒エンジン搭載、21年春に110万円〜で発売

ピックアップ記事

PAGE TOP