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ホンダの「ウルトラオイル」と言えば、古くからホンダ車オーナーの定番として親しまれてきた。2021年、ウルトラオイルのモデルチェンジにあわせ、古いオイル缶やノベルティグッズを見る機会に恵まれたので、その歴史を振り返ってみよう。
ホンダ純正オイル「ウルトラオイル」の歴史はいつから始まった?
ウルトラオイルの歴史は非常に古く、発売時期は1950年代後半にまでさかのぼる。それ以前のエンジンオイルは、石油メーカー製オイルを推奨する旨が取扱い説明書等に記載されていたが、初代スーパーカブC100の取扱説明書には「ホンダ ウルトラ オイル」が推奨オイルとして記載された。
また、1960年代初頭のパーツリストにはオイル缶の写真と共に部品番号が記載されているが、その部品番号は「C719115」から始まっているので、1958年発売250ccOHC2気筒車のドリームC71の発売時期と合わせ、1958〜1959年がウルトラオイルの誕生と言えるだろう。
驚く事に既にこの時代で10W/30のマルチグレードが設定されていた。
以下はパーツリストより(部品番号は1L缶のもの)
C719115 ホンダウルトラオイル -S 10W/30 は季節、気温によって使用番数を変えずに使えます。
C719116D SAE # 10W は0°C以下の気温の時に使用します。
C719117D SAE # 20W は0°Cから15°Cの気温の時に使用します。
C719118D SAE # 30 は15°C以上の気温の時に使用します。
上記パーツリストによれば10W/30の価格は1L缶で2割弱高価な事からも、普及品はシングルグレードだった事が想像される。
ウルトラオイルは時代とともに進化していく
その後1960年代後半になると、オイル性能の向上やマルチグレードが一般的になり、10W-30の「ウルトラS」に加え10W-40の「ウルトラ スーパー S」も追加されていった。
同時に純正オイルの信頼と知名度は盤石なものとなり、全国津々浦々のホンダ販売店に、業務用のドラム缶や20Lペール缶が常備されるようになった。
1969年にはCB750が発売され、ロードスポーツ車に200km/h時代が到来するが、その取扱説明書にも、「ウルトラS」と「ウルトラ スーパー S」が推奨されていた。
1980年代に入ると「ウルトラS」の名称が「ウルトラU」に変更され10W-30のスペックがホンダの定番商品として名称変更を受けた。
ホンダは現在に至るまでオイルメーカーと綿密に連携した純正オイル開発を行っているという。1960年代の10W-30から近年のウルトラUまでスペック数値だけを見れば同じではあるが、中身は時代とともに大幅に進化しており、ホンダエンジンの信頼性と名声を支え続けているのである。
80年代バイクブーム渦中には高性能車向け「ウルトラGP」が登場
1980年代に入りスポーツ車の高性能化が一気に進むと、それまでのウルトラUに加えて更に高性能オイルの必要性が生まれていった。
そこで登場したのが、高耐久性を謳った「ウルトラSS」や、文字通り高性能車の為のオイル「ウルトラGP」などである。
特に「ウルトラGP」は空前のレーサーレプリカブームに登場した高性能エンジンのために生まれたオイル。
高回転・高出力を「固い」オイル粘度やモリブデンなどの「新しい添加剤」を配合する事で、それまでの「ウルトラU」中心だった純正オイル市場にバリエーション化と高ブランドによる売り上げ増をもたらす事に成功した。
因みに、近年でも熟年ライダーの多くは、当時体に染みついた「高粘度オイル=高性能オイル」の好みが強いが、近年のエンジン開発ではベースオイルや添加剤の進化により「低粘度=低フリクション化」が主流なので、「高粘度オイル=高性能オイル」という方程式は過去の物になってしまった。
レーサーレプリカブーム以降「新時代のウルトラオイルとは」1
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