ヒストリー

現代に受け継がれるモデルも! 二輪史に名を残す革新的エンジン5選【エンジンで振り返る日本車の歴史その3】

1984年 カワサキGPZ900R

1984年から発売が始まったGPZ900Rの最大の特徴は、既存のZ系と同じ並列4気筒という構成を継承しながら、空冷2バルブに替えて水冷4バルブを導入したこと。

1984年 GPZ900R(908cc、水冷4ストDOHC並列4気筒)
初代ニンジャのGPZ900Rは、足まわりを中心とした仕様変更を受けながら、2003年まで販売が続いたロングセラー車。A1~6の特徴は16インチのフロントタイヤと、AVDS付きのφ38mmフォーク。

ただし現代の視点で考えると、同車のエンジンで革新的だったのは、上面から見た際の吸気ポートのストレート化を実現するサイドカムチェーンと、振動緩和に貢献するバランサーである。

ギア駆動式のバランサーシャフトはクランク前部に設置。空冷Z系の吸排気バルブが直押し式だったのに対して、GPZ900RはY字型ロッカーアームを介して駆動。

デビュー当初は、外観が左右非対称になるサイドカムチェーンは2輪には不向き、並列4気筒にバランサーは不要、などと言われたものの、1990年代以降の他社製並列4気筒はカワサキの構成に追随。

サイドカムチェーンはエンジン左側に設置。この構造は、右側が使われることが多い広報写真を意識して……という説があるけれど、真偽のほどは不明。現代の高性能並列4気筒エンジンのカムチェーンは、ほとんどが右側に配置。

なお初代ニンジャとなったGPZ900Rは、基本設計を大きく変更することなく、2003年まで生産が続いたが、一方でカワサキはGPZ1000RXやZX-10、ZZR1100などに、GPZ900Rのチューニング仕様と言うべきエンジンを搭載。その最終型となったのは、2009~2016年に販売されたZRX1200ダエグだ。

2016年 ZRX1200 DAEG Final Edition(1146cc、水冷4ストDOHC並列4気筒)
ZRXシリーズのモチーフは、1980年代前半に販売されたエディ・ローソン/スーパーバイクレプリカ。ただし、デビューからの数年間は丸型ヘッドライトのネイキッド仕様、2000年代前半はハーフカウル仕様が併売された。

1985年 ヤマハFZ750

第4世代のヤマハ製並列4気筒車となる1985年型FZ750で、登場時に最も注目を集めたのは吸気:3本/排気:2本のバルブを備える、DOHC5バルブヘッドだった。

1985年 FZ750(749cc、水冷4ストDOHC並列4気筒)
既存のXJ750が650ccをベースにしていたのに対して、レース参戦を意識したFZ750はすべてを専用設計。写真はシングルシートカバーを装備しているものの、この頃のナナハンスーパースポーツは、まだダブルシートやセンタースタンドを装備するのが一般的だった。

とはいえ、5バルブと同等以上に重要な要素は、シリンダーを大胆に前傾させたうえで、ガソリンタンク前部のスペースに大容量エアボックスを設置し、側面から見た際の吸気ポートのストレート化を図ったことである。

ダウンドラフト式のミクニBDS34キャブレターは、地面とほぼ水平になる角度でマウント。吸排気バルブは、当時の日本製ナナハンスポーツでは唯一となる直押し式。

もっとも45度のシリンダー前傾角はやりすぎだったようで、以後のFZR/YZFシリーズは徐々にシリンダーが起きていくのだが、エアボックスの配置とストレートポートは、以後に登場した日本製並列4気筒の多くが追随。

1980年代以降のヤマハは、XSやXJをベースとするミッドナイトスペシャルで、ゴールドの効果的な使い方を習得。FZ750ではその手法を転用する形で、シリンダーヘッドカバーやクランクケース左右カバーなどをゴールドでペイント。

ちょっと乱暴な表現になるけれど、1990年代以降に登場した並列4気筒エンジンは、FZ750とGPZ900Rのいいとこ取りをしたうえで発展を遂げて来た、と言えなくもないのだ。

1996年 スズキGSX-R750

今回紹介する他の4台と比較すれば、何となく地味な印象ではある。とはいえ、1996年に登場した第4世代のGSX-R750は、スズキの歴史を語るうでは欠かせない車両で、数多くの新技術が投入されていた。

1996年GSX-R750(749㏄、水冷4ストDOHC4気筒)
日本では大ヒットには至らなかったものの、1996年型以降のGSX-R750は、欧米では初代に勝るとも劣らない人気を獲得。1990年代後半~2000年代初頭のAMAスーパーバイクは、参戦車の半分以上がGSX-R750だった。

もっとも、登場時に大きな話題になったのは、シリーズ初のアルミツインスパーフレームと、世界GPを戦うRGV-Γ500のディメンションを取り入れた車体である。

1985年に発売した初代GSX-R750以来、長きに渡ってダブルクレードルタイプに執着してきたスズキだが、1996年型は当時のスーパースポーツの定番だったツインスパーフレームを採用。ただしGSX-R1100は、1998年までダブルクレードルタイプを維持していた。

とはいえ、アルミメッキシリンダーやナットレスコンロッド、独創的な3分割式クランクケースに加えて、他社が先鞭を付けたサイドカムチェーンやダウンドラフト吸気、ラムエアシステムなどを積極的に導入することで、スズキの並列4気筒は飛躍的に進化したのだ。

1995年型以前のGSX-R750用と比較するとすべてのサイズ、前後/左右/上下寸法が小さくなった1996年型用のエンジン。当初の気化器は負圧式キャブレターだったものの、1998年型からは電子制御式インジェクションを導入。

結果的にこのモデルで既存のGSX-R系と完全に決別したからこそ、以後のスズキはハヤブサやGSX-R1000で大成功を収めることができたのである。

2020年GSX-R1000R100周年記念カラー(999cc、水冷4ストDOHC並列4気筒)
レースレギュレーションの改正に伴い、2001年以降のGSX-Rの主役は1000ccモデルとなった。初代の最高出力が160psだったのに対して、2017年から発売が始まった現行モデルは197psを発揮。

レポート●中村友彦 写真●八重洲出版

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