

5:4本のボルトをすべて締め付けたところ。
見た目の印象では、これで走るのはかなり危うい気がしなくもない。
乗り手の作業レベルを管理できないこともあり、特にPL法を生んだ国アメリカではリスキーな機構だったと想像する。

6:継ぎ足し用のチェーンは標準で付属していた。
ジョイントを2セット使い、元のチェーンを延長して大型スプロケットに対応するわけだ。なお、一般的にはジョイントを2カ所以上使ってチェーンをつなぐのは避けたほうがよいとされている。

7:チェーンを再度掛ける前に、アクスルナットとチェーンプラーを緩め後輪を前方に出しておく。
スプロケットとチェーンの状態次第では、前に出さずとも接続できるだろうが、少しでも張り気味だとジョイントを挿入するのが困難になるからだ。

8:クリップを取り付けてチェーンを接続。
こうして追ってゆくと、出先で行うには実に煩雑な作業である。
しかも、チェーンのクリップのような小さな部品を、ガレ場や草地のような場所で飛ばしてしまうと困った事態になるのは必至だ。

9:チェーンの張りの調整もする。
前後スプロケットの位置関係と、チェーンの状態による張りの変化は割合にシビアなので、大型スプロケットを取り付け、そのまま延長したチェーンを掛けるだけでは適正な張りにならない。

10:最後にアクスルナットを締め、チェーンの張りを再度確認し問題がなければ作業は完了(締めると張り気味になることが多い)。
今回は市販の工具を使っての作業だが、もちろん純正の車載工具で作業ができるよう設定されている。
11:掛け替えが完了した状態。
ここまでの作業で、慣れていても15~20分くらいはかかってしまいそうだ。
’67年に誕生した、停車さえしていれば瞬時に切り替えができるレバー切り替え式の副変速機が、いかに画期的な機構だったかの証明でもある。
他社のダブルスプロケットは?
ホンダのトレール50/同55の成功を受け、 各社から似たようなトレールモデルが発売された’60年代、一部にホンダ製モデルと同様のダブルスプロケットを装備したものがあった。

写真はカワサキのC2TR(120 C2SSの輸出版)のそれで、大小2枚のスプロケットを備えた見た目は似通っているが、手法はホンダとやや異なる。
チェーンを一度切断して掛け替える工程は同様ながら、ボルトの締め込みのみで大型スプロケットの位置を変える構造になっており、ホンダ方式に比べて作業が簡単になっている。ただしチェーンの張り再調整は同じく必須だろう。

写真の、大小スプロケットの間にスプリングが見える。チェーンを外した状態で外側のボルトを締め込み(この際スプリングが圧縮される)、大型スプロケットを外側に寄せて通常走行用に密着させ、そこに延長したチェーンを掛ける仕組みだ。
スプロケット1枚分、チェーンラインがずれることになるが、低速走行のみだから問題はないという理屈だったのだろう。
現代ではもはやお目にかかることがほとんどないダブルスプロケットを搭載したモデル。
貴重なモデルゆえぜひ大事にしてほしい車両だ。
2