ヒストリー

【’80sカワサキZの魅力】そしてライムグリーンは伝説となった(後編)

●F1用のリヤサスも使用した’81年型KR1000までに見られる右1本サスはパフォーマンスのアイデアだ。ショックユニットに4輪F1用を使えば信頼性があり、チェーンラインにサスが干渉しないのでタイヤ交換がしやすいなどが採用の理由だった。フランスのATZ製エアサスなども使われた。

●シデム社はフランスにカワサキインポーターでZ1発売後、すぐに耐久レースに参戦。独自フレームのマシンも製作し、’70年代は同国のジャポート(ホンダ)、ソノート(ヤマハ)などと共にレースの主役だった。シデムはパフォーマンスに運営や開発を依頼していた


 

※本記事は別冊Motorcyclist2009年12月号に掲載されていたものを再編集しています。

→前編はこちらから

 

先進的実践的なKR1000

Z1が発売されると、ヨーロッパの各国インポーターは、ビッグバイクのマーケットに大きな影響力を持つヨ−ロッパ選手権耐久レース参戦に向けて動き出した。
’73年ボルドールにはフランスのインポーターであるシデムから参戦したZ1が2、4、5、7位に入った。
これらのZ1には、カワサキ本社がヨシムラにチューンを依頼したエンジンが搭載されていた。
’74年にはジョルジュ・ゴディエ(フランス)とアラン・ジュヌー(スイス)のコンビ(後にコンプリートマシンでその名はつとに有名となった)がエグリのフレームにZ1エンジンを搭載したマシンで出場し、バルセロナとボルドール24時間で優勝。
また、ほとんどのレースでZ1は上位を独占した。

●チューニングメーカーであるパフォーマンス社のセルジュ・ロセ(写真右)は、シデムカワサキやKR1000耐久チームの名将だ。その後はエルフのGP500プロジェクトを動かした。マネージメント力に優れ、カラーコーディネートやスポンサー獲得は見事だった

’75年、シデムはピエール・ダンコック設計の独創的なトラスフレーム/モノショックのマシンを製作。これをゴディエ/ジュヌーが駆り、2年連続耐久チャンピオンを獲得した。
ところが’76年、CB750Fourの戦闘力不足を打開するためホンダはDOHC4バルブのファクトリーマシンRCBを投入してきた。
そしてRCBは初年度から圧倒的な強さを見せ、タイトルを奪取。’77、’78年の耐久では全勝して3連覇してしまう。
だが’79年から耐久レースは市販車エンジンを使うTT-F1規定になったため、プロトタイプ許可のレースを除き発展型のCB900改での参戦となった。

シデムをバックアップしていたパフォーマンスのセルジュ・ロセは、来日して本社にファクトリーパーツ開発を要求した。
’80年から耐久レースは世界選手権に昇格するため、何としても勝ちたい。’79年、パフォーマンスは新型マシンを開発し2勝していたこともあり、本社も動き出した。
8耐に本社製フレームの耐久レーサー、KR1000を走らせたのだ。

’80年、フランスと日本のマシンを1本化した本格的な耐久レーサーKR1000は、世界デビューを果たす。マシンにはロセのアイデアが生かされた。
粗悪ガソリンによるデトネーション対策の2プラグ、バッテリーレスのフラマグCDI(最初は2サイクルKX80用改)、右側だけのリヤモノショックなどもそうだ。
2プラグは当初は14㎜径に4輪F1用10㎜径を追加していたが、後に生産ラインから半完成ヘッドを抜き取り、最初から12㎜径×2とした専用ヘッドになる。
世界選手権に組み込まれた鈴鹿8耐ではGPライダー、グレッグ・ハンスフォードとAMAのローソンが組み、ヨシムラスズキGS1000Rと終盤までトップ争いを展開し2位となった。

’81、’82年はKR1000の黄金時代だった。

●’82年型KR1000はリヤにユニトラックサスを装備し、フロントには機械式アンチノーズダイブ機構を持つ。前キャリパーは削り出し4ポット。スイングアームはH型断面のマグで、リンク取り付け位置を4ヵ所選べる。前後18インチのほか、前16インチを選択可能だった

KR1000(Jエンジン)は’82年型でリヤにユニトラックを採用し、最終型の’83年型ではアルミフレームへと進化していった。
’81年はレイモン・ロッシュ/ジャン・ラフォンが、’82年はジャン・クロード・シュマラン/ジャック・コルヌーが世界チャンピオンになった。
また、メーカータイトルは3連覇(’81〜’83年)。’83年からはカワサキがGPを撤退していたから、ファンにはそのライムグリーンが一際輝いて見えた。
そして1000㏄空冷モンスターの時代は’83年で終わり、名車KR1000も静かに姿を消した。

●’82年ボルドール24時間のスタート。ポールポジションはスズキフランスのGS1000R 。2番手もGS1000R。3番手に’81年チャンピオンのJ・ラフォン(KR1000)。続いてエルフe(C・ルリアール)、KR1000(J・コルヌー)、RS1000が2台。1000ccでの耐久レース黄金時代だった

●名コンビ、ゴディエ/ジュヌーのエグリフレームZ1耐久マシン。彼らはZ1以前にCB750Fourエンジンをエグリフレームに搭載して好成績を収めていた。当時Z1エンジンを搭載した耐久マシンは数多く、’74年ボルドールでは1〜4、8、10位とまさに王者だった

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