ヒストリー

【’80sカワサキZの魅力】そしてライムグリーンは伝説となった(前編)

●’81年AMAスーパーバイク開幕戦デイトナ。ポールポジションは#34W・クーリー(ヨシムラGS1000S)。
続いて#19F・スペンサー(CB900F)、#21E・ローソン(KZ1000J)。#310W・ガードナー(モリワキZ1-R)はスポット参戦。3大メーカーの激突だった。
 

Racing Z 1973〜1983

Zでのレース活動は、ライバル、ホンダのCB750Fourの登場によって下地が出来た世界的なビッグバイクブームを決定付ける大きな力になった。
アメリカでのAMAスーパーバイク、そして鈴鹿8耐も含む世界/ヨーロッパ耐久というふたつの大きな流れの中で、登場するのは偉大な男たちばかりだ。
キーワードはヨシムラ/モリワキ、エディ・ローソン、ロブ・マジー、セルジェ・ロゼ、KR1000だ。

文●石橋知也

※本記事は別冊Motorcyclist2009年12月号に掲載されていたものを再編集しています。

 

ヨシムラとマジ―の神技 そしてエディ・ローソン

●’80年8耐2位の#11KR1000 。E・ローソン(右)からG・ハンスフォード(左)へ。このころKR1000にはテストライダーの政樹と兄の博人の徳野ブラザーズや清原明彦などが乗り、豪快な走りで外国人ライダーを脅かした。徳野政樹は’80年デイトナSBにも参戦し4位

’73年7月、アメリカ最大の二輪組織AMAは、初のプロダクションレースをラグナセカ(カリフォルニア)で開催した。
このレースこそ、スーパーバイクの原点だった。
そのトップカテゴリーでZ1は1、2位を占めた。外観はノーマル然としていたが、エンジンはすでにアメリカへ進出していたヨシムラのチューンだった。
また、Z1はデイトナやボンネビルで世界/AMAスピード記録を樹立し、そのパフォーマンスを示した(これもヨシムラチューン)。
そしてAMAの役員を父親に持つ、ラグナセカで2位になったスティーブ・マクラグリンは、ヨシムラなどの協力の下に、本格的なプロダクションレース開催に向けて動き出した。

’75年AMAロードレース開幕戦デイトナでは、ついにスーパーバイクが開催されZ1は1〜3位を占めた。
’76年には全戦で併催され、’77年にはポイント制度を導入した正式なシリーズ戦が組まれた。
ところがZ1/KZ1000はドゥカティ750SS、BMW R90S、モトグッチ・ルマン相手に苦戦。
フレームはSTD+補強、マフラーはSTD改(後付け集合管などは禁止)、キャブのSTD改(CRキャブは禁止)、排気量は1000ccまでというレギュレーションで、その中でZ1はパワーがあって直線は速いけれど、コーナーでシャシーのよいヨーロピアンにやられていたのだ(ウォブルの嵐だった)。
ヨシムラはスズキとの協力関係を結びGS750改944を投入した’77年ラグナセカで初優勝(S・マクラグリン)。
ヨシムラ初の契約ライダー、ウエス・クーリーは最終戦でやっとZ1(4本マフラー)のAMAスーパーバイクと自身の初優勝を遂げたのだ。その後ヨシムラはスズキとの関係を強くし、集合管が解禁になった’78年にはGS1000で、デイトナでデビューウィンを果たした(マクラグリン)。
クーリーはデイトナでZ1を走らせるものの、以後GSに乗り換えた。

’79年AMAはCRキャブを解禁。
USカワサキは独自のチームを発足させKZ1000MKⅡを走らせた。チューニングはモリワキが協力した。
第3戦シアーズポイント。USカワサキはスポットで注目の少年フレディ・スペンサーを起用した。
スペンサーは軽々とスーパーバイク初優勝し、続く最終戦も連勝してしまう。
ところがその後スペンサーはホンダと契約。そこでダートトラックから新人を発掘した。エディ・ローソンだ。
’80年KZ1000MKⅡを駆ったローソンは最終戦までヨシムラGS1000Sのクーリーとチャンピオン争いを展開。惜しくもランキング2位となった。

●1980年、モリワキはZエンジンのレーサー、モリワキモンスターでオンタリオとデイトナに参戦。E・ローソンも乗り、オンタリオで優勝。81年はアルミフレームを製作。このマシンに8耐でW・ガードナーが乗り、2分14秒76の驚異的なコースレコードを樹立した。

また、この年から排気量の上限が1025㏄までになり、KZ1000もZ1の腰上を使ってボアダウンする必要がなくなり、1015㏄でOKになった。

その年の暮れにチームにダートトラック出身のチューナー、ロブ・マジーが加わった。
マジーは、’81年を戦うKZ1000Jエンジンを大幅にモディファイした。カワサキ本社はマジーの要求に耐久/GPレースでのノウハウを生かしたパーツを送った。
そしてシーズン途中までには2プラグ、全行程爆発フラマグCDI、本社(ファクトリー)製70㎜径の鍛造ピストン、デルウエスト製チタンバルブ、本社製コンロッド、アルミライナーのメッキシリンダー(本社製)、ブルーマグナムのキャブ、38→42.7㎜径のコニカルヘッダーを持つマフラーなどを採用。
チューンはマジーが現地で行ったものも多く(チタンバルブなど)、データを取った本社も驚く高性能だった。

●81年デイトナのガレージ。手前は200マイルF-1用KR1000(2ストのTZ750などと混走)。リヤサスはすでにユニトラックだ。奥がKZ1000Jスーパーバイクで、そこにいるのがAMAで伝説を作ったR・マジー。

そしてこの年からスーパーバイクもライムグリーンに塗られた。そのファクトリーカラーのKZ1000Jでローソンはライバル、ホンダのスペンサー(CB900F)を下し、見事チャンピオンを獲得した。
特に第7戦ケント(シアトル郊外)は最終ラップの最終コーナーでスペンサーを抜き、アウトのグリーンを走りながらチェッカーを受けるというスリリングな展開で、ステディさに隠された鋭い本性を見せた。
’82年はKZ1000R(ローソンレプリカ)の外装も持っていたが、基本は’81年型J仕様にJET製チタンコンロッドなどで進化させたもので、市販レーサーのS1とはまったく別物だった。
スペンサーがGPへ行ったこともあって、ローソンは2連覇達成。
ライムグリーンのZは伝説となったのだった。

’83年ローソンはケニー・ロバーツに誘われGPへと旅立つが、’82年にUSカワサキに加入した後輩ウェイン・レイニーが750cc規定となった最初のシーズンを空冷GPz750で制し、カワサキAMAスーパーバイク3連覇の偉業を達成したのである。

 

→:後編はコチラ

【’80sカワサキZの魅力】そしてライムグリーンは伝説となった(後編)

  1. ダックス125でボディサーフィンを楽しむ。バイクがあれば遊びはもっと楽しくなる。

  2. Rebel 1100〈DCT〉は旧車を乗り継いできたベテランをも満足させてしまうバイクだった

  3. 定年後のバイクライフをクロスカブ110で楽しむベテランライダー

  4. CL250とCL500はどっちがいい? CL500で800km走ってわかったこと【ホンダの道は1日にしてならず/Honda CL500 試乗インプレ・レビュー 前編】

  5. 【王道】今の時代は『スーパーカブ 110』こそがシリーズのスタンダードにしてオールマイティー!

  6. 新車と中古車、買うならどっち? バイクを『新車で買うこと』の知られざるメリットとは?

  7. ビッグネイキッドCB1300SFを20代ライダーが初体験

  8. どっちが好き? 空冷シングル『GB350』と『GB350S』の走りはどう違う?

  9. “スーパーカブ”シリーズって何機種あるの? 乗り味も違ったりするの!?

  10. 最も乗りやすい大型スポーツバイク?『CB1000R』は生粋のSS乗りも納得のストリートファイター

  11. 40代/50代からの大型バイク『デビュー&リターン』の最適解。 趣味にも『足るを知る』大人におすすめしたいのは……

  12. ダックス125が『原付二種バイクのメリット』の塊! いちばん安い2500円のプランで試してみて欲しいこと【次はどれ乗る?レンタルバイク相性診断/Dax125(2022)】

  13. GB350すごすぎっ!? 9000台以上も売れてるって!?

  14. “HAWK 11(ホーク 11)と『芦ノ湖スカイライン』を駆け抜ける

アバター

モーサイ編集部

投稿者の記事一覧

1951年創刊のモーターサイクル専門誌。新車情報はもちろん、全国のツーリングライダーへ向けた旬な情報をお届けしています!

モーターサイクリストは毎月1日発売!

おすすめ記事

価格は約349万円!! ハーレーダビッドソン初の電動スポーツバイク「ライブワイヤー」の予約販売が開始 【クアッドロック】に新マウントが追加! リザーバータンクやクランプへの組み付けが新鮮だ 話題の電動バイクメーカー XEAMが放つNIUの上位モデル「NGT」が来春登場! 

カテゴリー記事一覧

  1. GB350C ホンダ 足つき ライディングポジション