雑ネタ

豪雨でも熱心に働く日本人と、止むまで雨宿りするタイのバイク便から見る国民性の違い

集中豪雨が続くためバイクを動かすことができない

バンコクの中華街。常に大渋滞であるこの場所も、雨が降ると交通量が激減する

タイは近年のインターネットの発展、それから新型コロナウイルスによる消費行動の変化で、ネットを介した売買が日本のように増えている。
トラックや自家用車などを使う日本とは違い、バンコク都内は主にバイクで配送されることが多い。

ただ、タイには日本のように「バイク便」を専用ビジネスとしているケースは基本的に存在しない。
たとえばフードアプリの配達はバイト感覚で個人契約者が行うが、それ以前は各企業がメッセンジャーというポジションで従業員を雇い、書類や商品の配送をしていた。

しかし、こういったバイク便(ここでは便宜的にバイク配送者全般を呼ぶ)の人たちはのんきな人が多いようで、早く配達すれば喜ばれるということは一切頭にない。ちょっとしたことで大幅に遅れることが多いのだ。
タイの場合は、ただ雨が降っただけでバイク便の遅延が乱発する。

タイは年間を通して高温多湿だ。季節も大きく分けると2つだけといわれ、乾季と雨季しかない。乾季は例年11月から4月、雨季は5月から10月だ。
とはいえ、近年は季節の変わり目があいまいになってきている。15年くらい前までは、11月に入るときっちりと乾季になったものだ。

日本のような梅雨明け宣言などいらず、朝起きたら空気で乾季に入ったことがわかるほどだった。そして、乾季に入れば雨はまったく降らなかった。
ところが、現在は乾季でも雨が降るし、11月に入ってもすぐに乾季にはならない。

ゲリラ豪雨前の突風で倒壊した看板

雨季は日本人がイメージするものとは違うかもしれない。
雨の季節とはいえ、延々と降っているわけではない。雨季もある程度落ち着いてくると朝夕のいずれかに短時間、集中豪雨になるだけで、ほかの時間は降っていないのだ。
近頃はしとしと降り続ける雨も増えてきたけれど……。

タイの雨は日本と比べ、わかりやすい。非常に激しい雨が一気に降り、直前には前線が駆け抜けていくのだ。つまり、雨が降る前には強風が吹くのである。
だから、誰でもすぐに「あ、雨が来る!」とわかるのだ。ときには台風並みの突風が吹くときもあり、毎年、風で崩れる看板や建物の下敷きになって亡くなる人がいるほど。

特にバイクで運転していたら風が強くて危ないし、濡れ始めた路面は滑る。
なにより、雨が激しい場合は2メートル先も見えないくらいの豪雨になることもあるので、確かに動けなくなるのは理解できる。

一般ライダーやバイク便はみな陸橋やどこかの建物の軒下に避難し、雨が去るのを待つ。
だから、タイでは雨が降るとビジネスが大きく停滞するのである。

雨天時でも動くベトナムと雨宿りをするタイ

ベトナムにはハンドルと後部座席を覆うバイク用のレインコートがある。タイにはない

バンコクは水はけが悪いので、道路が冠水することもしばしばだ。タイは道路の品質自体が日本よりも良くない。
そのため、バンコクでさえ道に穴が開いていることは日常茶飯事。さらに落下物も多い。マンホールのふたもそれほど重そうではないので、冠水でズレていることも……。

そう考えると、ちょっとでも水が溜まるとそこを通ることすら困難になる。恐怖心が先に立つのだ。

しかも、バイク便のほとんどが自分のバイクを持ち込んでいる。タイは税金の関係で車やバイクが日本よりも高いので、なるべく壊したくないという思いもあるだろう。こうして雨が強ければ強いほど、タイの経済活動はスローになっていく。

似たような国であるベトナムは、タイ人と比べて神経質なのか、雨に濡れることを極端に嫌うような気がする。かといって、それを理由に立ち止まることはしない。
ベトナムはバイク用の長いレインコートまであるほどだし、田舎に行くとバイクに乗って走りながら傘をさす強者もいる。

タイは近年こそレインコートを着る人も増えてきたが、それでもバイク便の半数以上はいまだ橋の下などで雨宿りをしている。
年間の半分が雨季であり、雨季に入ったら毎日降るのだから備えておけばいいのに、そこまではしない。
ということは、もはやタイ人の国民的気質なのではないかと見る。

タイ社会全体が雨天時にはほとんどの物事が遅れる

最近のタイではレインコートを着ているライダーも出てきてはいるが、その数はまだ少ない

なにより、それを社会が許容しているのだから、なんら問題にならない。タイ人はわりと個人主義的なところがあって、ルールよりも個人個人の都合や主張が優先される。特に雨は誰にもどうしようもないので「仕方がない」ということになる。

また幼稚園から高校まで、タイでは親が送迎をすることが多い。
しかし、雨が降ると路面状況が悪化するので渋滞が始まり、生徒の大半が遅刻する。
そのため、タイでは遅刻で教師から怒られることがほとんどない。子どものころからそんな環境にいれば、雨で無理に動くよりは止むのを待つ方を選ぶのは必然だ。

日本の企業も今や海外進出することが当たり前になった。
中にはタイに出張したことがある、あるいはタイの支社や企業と連絡を取り合う会社員の方も少なくないだろう。

そんな方に憶えておいてほしいのは、タイでは「雨が降ったらほとんどのことが遅延する」ということだ。
もうこれは誰にもどうしようもないことなのである。

タイは雨が降るとバイク便だけでなく、なぜかネットスピードも低下することがよくある。
今はだいぶ改善されたが……とにかく、タイでは雨がすべてを遅らせるのだ。

でも、そういうのんびりした部分もまたタイのよさでもある。何卒、そのあたりを理解してもらえるとありがたい。タイ在住の人間の代表としてそう申し上げておきたい。

レポート&写真●高田胤臣 編集●モーサイ編集部・小泉

NOTE

■高田 胤臣(たかだ たねおみ)

1998年からタイで過ごしはじめ、2002年にタイへ移住。タイにある「華僑系慈善団体」でボランティア、現地採用会社員として就業。2011年からライターの活動をし『亜細亜熱帯怪談』(晶文社)をはじめ、書籍や電子書籍を多数発行。
noteではタイにまつわる出来事を綴っている。

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