■写真はイメージ。実際の白バイ車両とは異なります
日常的に街中を走っている姿を見かける白バイ隊員。取り締まりや事故対応の姿もよく目にしますが、休憩時間や待機中に何をしているのかはあまり知られていません。「休憩中にコンビニで見かけた」「分駐所の前でバイクを磨いていた」という目撃談もあったりするでしょうが、実際の過ごし方はどうなっているのでしょうか。
この記事では交通機動隊員の勤務の流れと、休憩時間や待機時間の過ごし方を紹介します。なお、勤務体制や細かなルールは都道府県警や部隊によって異なりますが、筆者が現役時代に実際に見た、経験した内容を交えて解説します。
交通機動隊員の勤務形態
交通機動隊員は日中の勤務を中心にしつつ、時には夜間の取り締まりや当直勤務が組み込まれていることが多いです。県により勤務体系は異なるので詳細は割愛しますが、1日の流れは、おおむね次のような感じです。
基本の勤務時間は8時45分から17時半ですが、雑用の多い若手は午前6~7時に出勤、勤務状況によっては午前4時、5時に出るなどということもあります。一方ベテランは、出勤時間の10~30分前というのが通常です。
出勤後はまず朝礼などを行い、その日の重点事項や担当エリアの確認をします。続いて車両の始業点検を済ませ、パトロールや取り締まりに出動します。途中で休憩を挟みながら勤務を続けますが、この際休憩で帰隊することもあれば、帰隊が難しい場合は警察署や交番で休憩という場合もあります。

そして帰隊後は、車両の整備や書類作成を行って勤務終了となります。帰隊後の主な業務は、その日に取り締まった違反などの書類作成です。しかし、これは数十分で終わる案件もあれば、1件の違反処理で数日、数週間を要するものもあります。早く上がるときは1時間ほどで済みますし、遅い場合は深夜の22、23時などということもあります。
休憩時間の過ごし方~食事は手早く済ませるのが基本~
休憩時間の中心はやはり食事です。ただし、いつ出動がかかるかわからないため、ゆっくり食べられるとは限りません。分駐所で弁当を食べるケースが多く、食事のスピードが早くなる隊員が多いという話もよく聞かれます。基本は1時間の休憩を取れますが、慌ただしく10分で済ませる人もいます。

そもそも警察官自体が、食事のスピードは基本早いと言われています。なぜなら、突然の事件事故に臨場しなければならない可能性があるので、食事などは素早く行わなければならないという気持ちになるのです。
外での休憩中に、コンビニなどで飲み物や食事を買うこともあります。以前は制服姿での買い物に苦情が寄せられることもありましたが、近年は業務の合間の必要な休憩として、理解が広がりつつあります。

また、コンビニ強盗等の抑止力に繋がるという観点から、コンビニオーナー側からパトロール途中に立ち寄ってほしいなどの要望もあったりします。
身体を休めることも仕事のうちだけれど……
白バイは車重が300kg前後もあり、1日中乗っていると想像以上に体力を消耗します。夏は路面からの照り返しとエンジンの熱、冬は冷たい風にさらされ続けるため、休憩中にしっかりと体温調節や水分補給をすることは、事故防止のためにも欠かせません。
ただし、休憩時間であっても重大な事故や事件が発生すれば、出動がかかることがあります。そのため、多くの隊員は、無線の内容に耳を傾けながら休憩を取っています。完全に気を抜ける時間は、それほど多くないのです。
ちなみに、現在は喫煙者に厳しい世の中ですが、基本的に庁舎はもちろんクルマの中なども禁煙です。その点で当直勤務をする喫煙者になどは地獄でしょうが、愛煙家の方々はそれぞれ工夫して喫煙しているようです。
当直・待機時間の過ごし方~即応できる状態で待機~
当直勤務をベースとしていない日勤の部署であれば、月に1~3回程度の当直となります(時期によって異なりますが)。夜間や休日の当番勤務では、呼び出しに備えて分駐所などで待機します。待機中は、すぐに出動できる状態を保つことが大前提で、装備品をすぐに身に付けられるように準備し、バイクもいつでも出せる状態にしておきます。
ちなみに長時間の当番勤務では、交代で仮眠を取ることがあります(仮眠時間は4時間くらいですが、あってないようなものでした)。ただし事件事故の通報が入れば、仮眠中でも出動しなければならず、まとまった睡眠が取れない日も多くあります。
そして、待機時間の大きな割合を占めるのが書類仕事です。交通違反の処理書類、事故の報告書、取り締まりの実績集計などは、現場の仕事の数だけ、もしくはそれ以上に書類の作成が発生します。「白バイ隊員に限らず、警察官は現場での活動より書類を書いている時間の方が長いのでは」と冗談交じりに言われることもあるほどです。

バイクの手入れは欠かせない日課
白バイ隊員にとって休憩や待機の時間に欠かせないのが、車両の手入れです。隊員が命を預ける道具でもあるため当然のことですが、毎日の日常点検としてタイヤの空気圧、ブレーキ、灯火類、チェーンなどのチェックを入念に行います。
そして、白バイの車体がいつもきれいに保たれているのは、隊員たちがこまめに洗車や拭き上げをしているからです。白い車体は汚れが目立ちやすいため雨の日の後などは特に念入りに手入れをします。愛着を持って、自分の担当車両を磨く隊員も多いと思います。

ちなみに、1台の白バイとは2~3年は付き合うことになりますが、移動の際は次の隊員へ引き継がれます。1台の白バイの総走行距離はどれくらいかというのが気になる方もいると思いますが、予算(国費か県費か)、導入方法、状況等により変動するので状況はさまざまです。ただし、筆者の在籍時に約10万km使用されている白バイを見たことはあります。
待機時間は勉強の時間でもある
交通機動隊員は、交通取り締まりを行うため法令の勉強を行います。単純そうに見える交通取り締まりですが、各種道路交通法を知らなければなりません。勤務の合間や待機時間を利用して勉強することも多くあります。特に白バイ隊員は現場で一人で活動する場面が多いため、相応に対応出来る知識を身に付けておくことが必須となります。
現場では違反内容を手書きしなくてはいけないので、違反名や罰条を覚える(現場で即座に使えるようにメモする)、それぞれの反則金や点数などもスラスラと説明出来るように覚えておかなくてはいけません。

装備品の手入れと準備、仲間とのコミュニケーションも重要
ヘルメット、グローブ、ブーツ、無線機、速度測定に関わる機器など、白バイ隊員が身に付ける装備は多岐にわたります。これらの点検や手入れも待機時間に行う大切な仕事です。特に無線機のバッテリー管理は現場での連絡に直結するため、念入りに行われます。
そして、休憩や待機の時間は隊員同士が情報交換をする貴重な場でもあります。「あの交差点は最近事故が多い」「この時間帯は通学路の見守りが必要」といった現場の情報を共有することで、より効果的なパトロールにつながります。先輩から後輩へ、運転技術や取締まりのコツが伝えられるのもこうした時間です。
部隊単位で行動することが多い交通機動隊では、隊員同士の信頼関係が非常に重要です。そのため、何気ない会話の時間もチームワークを育む大切な時間と言えるでしょう。
【まとめ】
交通機動隊員の休憩時間や待機時間は、単なる休み時間ではありません。食事や身体を休める時間を確保しつつも、無線に耳を傾けバイクや装備の手入れをし、書類を作成し現場に臨場する。その積み重ねがあるからこそ、いざというときに素早く安全に出動できるのです。
街で休憩中の白バイ隊員を見かけたら、それも次の出動に備えた大切な時間なのだと温かく見守ってあげてください。

文●睦良田 俊彦 写真・イラスト●モーサイ編集部
睦良田 俊彦(むらた・としひこ)
1986年北海道生まれ 趣味:クルマ、バイク
歯科技工士を経て警察官となり、約15年間勤務(白バイ隊員歴約10年)。警察学校卒業後は約3年半の交番勤務を経て交通部門へ。白バイ警察官として第一線で交通取締りをメインに活動し、ライダーのための安全講習、交通安全啓発イベント、マラソン大会先導、大統領車列先導など、様々な経験を重ねてきた。県警主催白バイ大会での優勝経験もあり、白バイ新隊員の育成などにも携わった後、巡査部長の階級で依願退職。現在は退職後の夢でもあったライディングレッスンなど、ライダーのためになる活動が出来る場を作るべくYouTuberとして、バイクの面白ネタ等を発信する「臨時駐車場チャンネル」ほか、新たにバイクライディング技術等に特化した「元白バイおやじチャンネル」も開設して活動中。バイクイベント等に積極的に参加し、出身の北海道で開催のライディングレッスンで講師も務めている。































