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「雨の日や夜間には白バイが出動しない」という話、よく耳にするのではないでしょうか。結論から言うと、これは基本的に本当です。多くの都道府県警察で、白バイ(交通取締り用二輪車)は雨天時や夜間の活動が大幅に制限されています。ただし「絶対に出ない」というわけではなく、状況によっては出動することもあります。元隊員としての経験から、その理由と例外について詳しくご紹介します。
なぜ白バイは日中・晴れの日中心の活動なのか?
まず前提として、白バイの主な任務はスピード違反や信号無視といった、目視による交通違反の取締りです。こうした違反は、通勤・通学や商用車の往来が多い日中の時間帯に発生しやすいため、そもそも取締りの効果を上げやすいのが日中だという事情があります。
また日中は視界が良く、対象車両のナンバーや違反の瞬間を確実に確認できるため、取締りの精度そのものが上がります。夜間はヘッドライトだけが頼りとなり、距離感やバランス感覚の把握も日中より格段に難しくなるため、単独で高速走行や追尾を行う白バイには不向きな面があります。
もう一つの理由が、二輪車ゆえの転倒リスクの高さです。雨で路面が濡れると制動距離が伸びるだけでなく、マンホールの上や白線、轍(わだち)にたまった水などでスリップする危険が一気に高まります。晴れた日中であれば、こうした路面のリスクを大きく減らした状態で業務にあたることができます。しかし現場にいた身として強調したいのは、実はもっと単純で切実な理由があるということです。それは「そもそも雨では切符が作成できない」という問題です。

雨の日の問題1:切符が作成できません
雨の中でボールペンを使って交通違反の切符(書類)を作成するのは、想像以上に難しい作業です。まずボールペン自体のインクが雨で出なくなってしまいます。仮にインクが出たとしても、切符自体が薄い紙で出来ており、しかも5枚ほどの短冊が複写式になっているため、濡れると破れたり複写がにじんだりしてしまうのです。

さらに、違反された方の運転免許証を確認する作業も伴います。運転免許証を雨に濡らさないようにも気を配らなくてはなりません。安全面のリスクもさることながら、そもそも本来の業務そのものが物理的に成立しないというのが、雨天出動を避ける最大の理由なのです。
とはいえ、朝は晴れていても取締り中に天候が急変し、雨に見舞われることは当然あります。その最中に違反対応をしていると大変で、いかに書類や免許証を濡らさずに済ませるか、その場で工夫を迫られることになります。
雨の日の問題2:パトカーへの乗り換え
「白バイ隊員は雨の日どうしているの?」とよく聞かれますが、答えは単純です。基本的には雨の日はパトカーや覆面パトカーに乗り換えて仕事をします。また、白バイ隊員といえど警察官である以上、担当する事件を抱えていることもあります(事故捜査を行う交通警察官や刑事に比べれば件数は圧倒的に少ないのですが)。そのため雨の日は、事件捜査や書類作成といったデスクワークに回ることも多くあります。

雨の日でも、例外があります:イベント対応
イベント警備や交通整理では、雨天でも白バイが出動することが多くあります。その場合は雨合羽を着用して現場に向かいます。
厄介なのは、降るか降らないか微妙な天気の日です。これは一般のライダーの方々と同じで、スマートフォンと睨めっこしながら天気予報や雨雲の動きを確認し、カッパを着るか着ないか判断することになります。当然、その判断を誤って大雨やゲリラ豪雨に見舞われることもあります。
白バイ隊員は体に無線機、拳銃、警察手帳、携帯端末など、壊してはいけない装備品を数多く身につけています。当然、汚損や破損があれば大変ですので濡らさないよう常に神経を遣います。支給されるカッパも機能的にはごく普通のもので、ブーツも近年はゴアテックス素材のものに変わってきましたが、数年前までは防水性がほとんど期待できない薄い革製のものでした。
そんなわけで、白バイ勤務では雨は本当に避けたい一心でした。
怪しい空模様での最大の問題は、「上司の顔色」だったりも……
現役時代の若い頃は、実はこれが一番のストレスでした。階級が上の方々による、考え方や判断の食い違いです。
白バイ隊員として経験の浅い者は、基本的に早く出勤します。事務所の掃除やお茶出し、装備品の準備などを行うため、自分たちの支度もそれより早く済ませなければなりません。雨が降りそう、あるいはすでに降っている朝は本当に悩ましいものでした。白バイで出動するかパトカーで出動するかで、装備品も制服も異なるからです(ブーツやヘルメットは四輪車用に変わります)。
「今日は雨予報だから」とパトカー用の支度をしていると、事務所に入ってきた上職の方に「白バイで出ないの? やる気ねーな」「お前ら白バイだろ」と強めに言われます。慌てて白バイ用に着替え直していると、今度は別の上職の方から「お前ら白バイ隊員なのに天気予報も見ないのか? 空気読めよ」と、今度は逆のことを本気で言われます。内心、どうすればいいのか分からなくなってしまいます。
これが一度や二度なら笑い話で済むのですが、雨が降りそうな日や微妙な霧雨の日などは、毎回のように上職の顔色をうかがいながら支度をするのが正直苦痛でした。今振り返れば大したことのない話ですが、当時は真剣に悩んでいたものです。

【まとめ】
「雨の日・夜間は白バイが出ない」という話は都市伝説ではなく、取締りの効果や視界確保、転倒リスクといった安全上の理由に加え、「雨では切符作成という本来業務そのものが成立しない」という現実的な事情に基づいた、合理的な運用だと言えます。ただし絶対的なルールというより「原則」であり、イベント対応など緊急時や部隊の方針によっては例外もあるというのが、元隊員から見た実情です。
文●睦良田 俊彦
睦良田 俊彦(むらた・としひこ)
1986年北海道生まれ 趣味:クルマ、バイク
歯科技工士を経て警察官となり、約15年間勤務(白バイ隊員歴約10年)。警察学校卒業後は約3年半の交番勤務を経て交通部門へ。白バイ警察官として第一線で交通取締りをメインに活動し、ライダーのための安全講習、交通安全啓発イベント、マラソン大会先導、大統領車列先導など、様々な経験を重ねてきた。県警主催白バイ大会での優勝経験もあり、白バイ新隊員の育成などにも携わった後、巡査部長の階級で依願退職。現在は退職後の夢でもあったライディングレッスンなど、ライダーのためになる活動が出来る場を作るべくYouTuberとして、バイクの面白ネタ等を発信する「臨時駐車場チャンネル」ほか、新たにバイクライディング技術等に特化した「元白バイおやじチャンネル」も開設して活動中。バイクイベント等に積極的に参加し、出身の北海道で開催のライディングレッスンで講師も務めている。




























