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ドゥカティやBMWが採用した「レーダー搭載・自動追従クルーズコントロール」って何だ?

バイクにも普及し始めたACC=追従クルーズコントロール

昨今、二輪の世界では運転支援技術が盛り上がりつつあります。
ドゥカティやBMWが「ACC」という先行車に追従していく機能を採用しています(ドゥカティはアダプティブ・クルーズ・コントロールの略、BMWはアクティブ・クルーズ・コントロールの略と呼称に違いはありますが)。
また、日本メーカーではカワサキがACC搭載モデルを2021年モデルで発売すると公表しています。

先行車に追従していくということは、車間距離を速度に合わせて調整していくわけですが、つまり加減速調整は車両側が自動で行ないます。
先行車との距離を測る最重要センサーとなっているのが「ミリ波レーダー」です。

2021年モデルとして登場したドゥカティのV4エンジン搭載アドベンチャー・ムルティストラーダV4(ACCは上級仕様の「S」に標準装備、スタンダードではオプションとなる)。
ドゥカティ・ムルティストラーダV4Sのフロントに装備されたレーダー。
ACCが搭載されたほか、デザインの刷新や10.25インチ大型液晶メーターを採用するなどブラッシュアップを受けた2021年モデルのBMW「R1250RT」。
2021年モデルBMW R1250RTのメーターパネル。緑色の四輪車マークがACC作動のアイコン。維持できる車速は30〜160km/h。
BMW R1250RTのACCは左グリップのボタンにより、ワンタッチで車間距離レベルを変更できる(ACC作動アイコンも設定車間距離レベルで変化する)。
カワサキは2021年モデルでボッシュ製システムを用いた「ACC」搭載車を発売すると公表。衝突予知警報、死角検知の機能も備えるとされ、公開されたCGを見る限り前後にレーダーが搭載されるようだ。

ミリ波レーダーの仕組みとは?

ミリ波レーダーというのはエンジニアリング的にいうと30〜300GHzの周波数帯の電波(レーダー)を使い、対象物に電波を当ててその反射波が帰ってくるまでの時間を計測して距離を測定する装置です。
あくまで距離を計測するだけなので、対象物の形状などは基本的にはわかりません。

このように周波数帯は幅広いのですが、自動車関連で使われているミリ波レーダーの周波数帯は24GHz、77GHz、79GHzの3つがメインとなっています。
対象物の測定能力も短・中・遠の3種類に分けることができます。概ね、それぞれ短距離:30m、中距離:100m、遠距離:250mくらいまでの対象物を計測できるイメージです。

ミリ波レーダーというのはセンシング能力が天候に左右されづらく、また遠くまで検知できる能力の高さが魅力です。
そのため短距離しか検知できないものは準ミリ波レーダーといった分類がなされることもあります。実際に自動車(四輪車)に使われているものとしては、24GHzが準ミリ波レーダーの周波数帯として使われることが多くなっています。

ちなみに、77GHzと79GHzの違いとしては、後者のほうが周波数帯域を広く使えるため、分解能が上がることで、具体的には広角検知が可能になったり、人とクルマの識別が可能になったりするのです。

2021年モデルBMW R1250RTに搭載されるボッシュ製レーダー。

四輪用ACCではカメラ併用が増えている

ただし、四輪車の場合は前方の検知センサーとしてミリ波レーダーとカメラを併用することが多く、ミリ波レーダーは対象物までの距離測定に専念して、対象物の識別はカメラの画像処理で行なうのが主流になっているのが現状です。
当然ですが、この前方検知能力はACC以外にもドライバーのよそ見などでブレーキのかけるタイミングが遅れたときに、車両がブレーキをかけるAEB(衝突被害軽減ブレーキ)のトリガーとなる計測にも使われています。

そして、四輪の運転支援システムでは77GHzのミリ波レーダーを前方検知用として使い、24GHzの準ミリ波レーダーを左右車線の後側方から接近する車両の検知に用いることが多くなっています。
この後側方からの接近車両を検知する機能については死角をカバーすることから「ブラインドスポットモニター」といったネーミングで呼ばれることが増えています。

このように四輪の先進運転支援システムではミリ波レーダーを使い分けて、前方と後側方の対象物までの距離を測っていることが多いのです。もちろん、ご存知のようにカメラだけで計測していることもありますが……。

ドゥカティ・ムルティストラーダV4は後ろの接近車両も検知できる

一方、ドゥカティ・ムルティストラーダV4の採用している先進運転支援システムの機能を見てみると、冒頭で記したように高速道路などで先行車に追従するACC機能のほか、ブラインド・スポット・ディテクション(BSD)と呼ばれる四輪同様に死角に対象物がいるときに検知してライダーに知らせる機能も備えています。
つまり、後方用ミリ波レーダーも備わっているのです。

ここで四輪と異なるのは、ムルティストラーダV4の場合は後方用として中距離ミリ波レーダーを1個で使っていることです。
四輪の場合は短距離タイプの準ミリ波レーダーをバンパー左右に配置して、死角に車両が接近したときのみ反応するようにしていることが多いのですが、二輪では物理的にそうしたセンサー配置は難しいのも事実。

ドゥカティの採用したシステムではひとつのミリ波レーダーにより広角で遠方まで検知できるようになっています。取り付け自由度など四輪とは事情が異なるためでもありますが、システムとしてはそんじょそこらの四輪用システムより上等なセンサーを使っているという見方もできそうです。

ちなみに、ドゥカティやBMW、カワサキは、世界的なメガサプライヤー(巨大部品メーカー)であるボッシュ製のシステムを採用していることが公になっていますが、ボッシュによると、このシステムを使うと、前方障害物の接近を知らせる衝突予知警報も可能になるとのこと。
二輪の場合はライダーが意識せずに車体側が急ブレーキをかけたときには転倒などの危険性もありますから、四輪のようなAEBではなく、インジケーター点灯や警告音による「警報」にとどまるというのがポイントです。

テールランプ下に搭載されるドゥカティ・ムルティストラーダV4Sの後部レーダー。
ドゥカティ・ムルティストラーダV4は後方車両近接を感知し、ミラーに設けられたライトで注意を促す。

二輪用ACCはATとの組み合わせに期待したい

ところで、ミリ波レーダーを使ったACCというのは四輪車では1995年に最初の搭載例(三菱ディアマンテ)があり、いまや軽自動車にも搭載されているほど歴史もあり、普及している技術。そのメリットのひとつに渋滞時の速度・車間調整を車両に任せることができるという点があります。

ACCは今や軽自動車にも普及。ホンダN-BOXでは2020年12月のマイナーチェンジで搭載され、運転支援システム「ホンダセンシング」一環の機能となっている。
ホンダN-BOXのACCは先行車に近付いたらシステムが先行車との距離や速度差を測定し、自動的に加減速。割り込んできた車両があった場合も対応し、適切な車間を維持しながら追従走行する。

二輪の場合、渋滞時にはすり抜けをしてしまう人もいるのでそうした機能は不要かもしれませんが、すり抜けが難しいような幅の広いツアラー系モデルであれば、渋滞にも対応するACCというのはユーザーメリットが大きいのではないでしょうか。

二輪の場合、極低速では車体にすべてを任せるというのはかなり難しいのですが、二輪メーカー各社が研究している自立サポート機能、いわゆる「倒れないバイク」技術と併用すれば渋滞時のACC利用も可能になるかもしれません。
もっとも、渋滞時のACC利用を可能にするためには発進や変速も車体が制御できるATであることも条件となってきます。

ミリ波レーダーなどの搭載コストが吸収できる大型モデルでATというと、ホンダのDCT車が思い浮かびますが、残念ながら現時点ではホンダの二輪がACCを採用するというウワサはありません。
最近のホンダは二輪・四輪ともにハイブリッド技術に「e:HEV」というネーミングを共用するなどしていますから、四輪でおなじみの先進運転支援システム「ホンダセンシング」を搭載した大型二輪の登場はあるのでしょうか。

なお、ドゥカティ・ムルティストラーダV4のACCがカバーする速度域は30〜160km/hで、停止まではカバーしないもののかなり幅広くなっています。
ACCは自動運動ではなく、あくまで「運転支援システム」ですからシフトチェンジはライダーの担当となりますが、アップ/ダウンともに対応したクイックシフトがついているので、ほとんどのライダーがストレスは感じないことでしょう。

ドゥカティ・ムルティストラーダV4SでACCを作動させて走行している様子。メーターに表示される緑色の四輪車マークが作動アイコンで、車速は30〜160km/hの間で設定できる。

レポート●山本晋也 写真●山内潤也/ドゥカティ/BMW/カワサキ/ホンダ
編集●上野茂岐

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