試乗インプレッション

「150ccのバイクで120km/h走行」はイケるのか? ホンダ ADV150で超高速走行にチャレンジ!

2020年7月に警察庁より発表された、高速道路の最高速度120km/hへの引き上げ。
しかし、近年人気を集めている150ccクラスでは、さすがに高速道路での120km/h走行は難しいのではないだろうか?

そんなギモンを解消すべく、実際にホンダ・ADV150にて調査を行ってみたのだが……。
やっぱりというかなんというか、残念ながら120km/h走行することはできなかったのである。

今回は実際に調査した際のレポートをお送りしよう。

高速道路5区間で最高速度引き上げを実施

最高速度120km/hを表示する高速道路上の速度標識。

高速道路の一部区間の最高速度が120km/hへ引き上げられる見通しとなった、という報道が行われたのは2020年7月のこと。このニュースについては各社が報じていたためご存知の人も多いだろう。

最高速度が引き上げられる見通しとなっているのは、

・新東名高速道路:御殿場IC〜浜松いなさJCT間(約145km)
・東北自動車道:花巻南IC〜盛岡南IC間(約27km)
・東北自動車道:浦和IC〜佐野スマートIC間(約53km)
・常磐自動車道:柏IC〜水戸IC間(約71km)
・東関東自動車道:千葉北IC〜成田JCT(約26km)

の5区間。
最高速度の試行区間で死傷事故に大きな違いが見られなかったことから、120km/hでの走行に対応している一部区間にて最高速度の引き上げが行われることになったという。

もともと規制速度と実勢速度の乖離が大きかった区間でもあるので歓迎する人も多いだろう。
とはいえ速度が上がれば事故の際のリスクが増すことも確かなので、速度が引き上げられても安全運転を意識しながら利用したいものである。

150ccのバイクで120km/hの流れに乗れるのか?

今回の調査車両であるホンダ・ADV150。

で、ここからが本題。

近年高速道路も走行可能な150ccのバイクが各メーカーからリリースされており、街中でも見かけることが多くなっているが、疑問なのがこの手の小排気量バイクで当該区間の120km/h走行は可能なのか、という点。
というより、そもそも最高速度が120km/hに達しているのか? むしろそっちのほうが気になってしまう。

なれば、実際に当該区間を走行して検証してみるほかあるまい。
というわけで今回は、150ccスクーターのホンダ・ADV150にて新東名高速道路の120km/h区間を走行。実際に120km/h出るのかを調査してみることにしたのである。

ADV150は高速域でも超快適!

いざ、実走調査開始!!

テストのスタート地点は、新東名高速道路の浜松浜北IC。
ここから東京方面へ向かい、その間にある120km/h試行区間にてテストを行うことにした。

さっそく料金所のゲートをくぐって本線へ進入し、流れに乗るべくスロットルを開けて速度を上げていく。

以前紹介したADV150の試乗記事でも触れているが、同車は低中速域からの加速と高速域での速度の伸びは非常に良好という印象。

実際にインターチェンジから高速道路の本線に合流する際、加速性能に不足は感じられなかったので、合流する車線の走行車両位置など、周囲をきちんと確認すれば不安に思うことはまずだろう。

特に驚いたのは、高速域におけるエンジン振動の少なさだ。

低中速域での加速では若干エンジンの振動が気になるのだが、70km/hを超えたあたりからほぼ振動を感じなくなるのだ。

ADV150はベースとなったPCX150にも採用されているエンジン「eSP」を搭載している。同エンジンは燃費性能のみならず、耐久性や静粛性にも優れたものとなっているが、その特性が遺憾なく発揮されているといっていいのだろう。
さすがはホンダのグローバルエンジンといったところだろうか。

エンジンの振動は本当になくてビックリするレベル。しかしトンネル内で反響するエンジン音は、かな〜り悲鳴に近いというかなんというか……。ゴメンよ、ADV君。

この静粛性は100km/h前後でも変わらないので「コレなら120km/hも行けるんじゃないか?」と思うのだが、トンネルなどで反響してくるのは「キィイイイイン!」というか「ウヒョオオオオオ!」というか、どう解釈しても限界ギリギリといわんばかりのエンジン音……!
もはやADV150が「これ以上無理だっつーの!!」と叫んでいるように思えてならない。

だがしかし、今回の目的が120km/hでの走行が可能かどうかのチェックなので、スマンがADV150君にはもう少し頑張ってもらわねばならんのだよ。

最高速度120km/h……に届かない!!

最高速度引き上げに対応するためと思われる3車線化工事が複数カ所で行われている新東名高速道路。

テスト走行を行ったときは本線上で最高速度引き上げのためと思われる工事が行われていたが、ようやく規制が解除されて制限速度120km/h区間が開始したのが、島田金谷ICを過ぎてしばらく走行したあたりのこと。

さっそく周囲の安全を確認し、ここぞとばかりにスロットルオン!!

ADV150は100km/hキープの状態からでもするすると加速していき、あっという間に速度は110km/hを超えていく。

110km/hくらいまでは意外とあっさり加速して行くADV150。

「おお、これならば120km/h走行は達成できそうだ!」

そう思い、スロットルに込める力を増していく……のだが、ADV150は115km/hを超えると、突然として加速をやめてしまったのである。

瞬間的に116km/hが表示されるものの、どうやっても115km/h前後までしか出ない……!

すでにスロットルは全開まで回しているし、空力を高めるために極力体を伏せているにも関わらず、だ。

その後も周囲の状況を確認しながら何度かチャレンジを行ってみたが結果は変わらず、そうこうしているうちに120km/hの試行区間が終わり調査終了となってしまったのである。

うーむ……状況から考えるに、どうやら速度か回転数かのリミッターが働いてしまっているようだ。

結論:速度は120km/h……近くまでなら出る!

調査の結果、ADV150での120km/h巡航はリミッターが働くため(※1)不可能ということが判明した。

※1:別調査にて最高速テストを行った際には118km/hまで出たという報告があったので、おそらく回転数のリミッターと思われる。

しかし、110km/h前後でもボディ剛性に不足を感じないし、一般道では固めに感じるサスペンションも、高速域ではいい塩梅に動いてくれるので不安感がない。ADV150ならば、100km/h前後の速度域でも安全な高速走行ができそうだ。

そのことがわかっただけでも、今回の調査を行った意義はあるといえるだろう。

余談ではあるが、最高速チャレンジを行ったにもかかわらず、燃費は40.2km/Lという比較的好燃費を達成したのはさすがというべきだろう。

150ccのバイクで120km/h走行に挑戦するという、ある意味無謀ともいえる今回の調査。
とはいえ、最高速度が120km/hになったからといって、もちろんその速度で走らなければいけないわけではない。

小排気量のバイクで高速道路を走行する場合は、自身と車体に最適で、かつ周囲の車両の迷惑にならない速度で走行するのが最善だろう。

最高速度120km/h時代になっても無理をせず、安心安全な走行を心がけていきたいものである。

ホンダ ADV150諸元

[エンジン・性能]
種類:水冷4ストロークOHC単気筒 ボア・ストローク:57.3mm×57.9mm 総排気量:149cc 最高出力:11kW<15PS>/8500rpm 最大トルク:14Nm<1.4kgm>/6500rpm 変速機:無段変速式
[寸法・重量]
全長:1960 全幅:760 全高:1150 ホイールベース:1325 シート高:795(各mm) タイヤサイズ:F110/80-14 R130/70-13 車両重量:134kg 燃料タンク容量:8L

車両本体価格:45万1000円(税込)

レポート&写真●モーサイ編集部・日暮

  1. CBR250RRに乗る女子高生ライダーが『CBR400R』に乗った感想「最高です。欲しくなりました」

  2. ベテランライダーが『CBR650R E-Clutch』に乗って感じた楽しさ

  3. 寒い時期はバイクに乗らない人へ!愛車を冬眠させるなら「4つの〇〇+α」をやっておけばずっと長持ち!

  4. 還暦からセカンドライフをスタートさせた『Rebel (レブル)1100 <DCT>』のオーナー

  5. 技術者たちが語る「Honda E-Clutch」。新しい技術に秘められた苦労と想いとは?

  6. CL500はストリートが楽しいバイク。ビギナーからベテランまでを満足させる万能マシンだ!

  7. 原付だから多くの人に愛された。『スーパーカブ50』の歴史を辿ってみる。

  8. CL250はセカンドバイクじゃない。この250ccは『メインの1台』になり得るバイクだ!

  9. Rebel 1100〈DCT〉は旧車を乗り継いできたベテランをも満足させてしまうバイクだった

  10. 定年後のバイクライフをクロスカブ110で楽しむベテランライダー

  11. CL250とCL500はどっちがいい? CL500で800km走ってわかったこと【ホンダの道は1日にしてならず/Honda CL500 試乗インプレ・レビュー 前編】

  12. 【王道】今の時代は『スーパーカブ 110』こそがシリーズのスタンダードにしてオールマイティー!

  13. 新車と中古車、買うならどっち? バイクを『新車で買うこと』の知られざるメリットとは?

  14. ビッグネイキッドCB1300SFを20代ライダーが初体験

  15. どっちが好き? 空冷シングル『GB350』と『GB350S』の走りはどう違う?

  16. “スーパーカブ”シリーズって何機種あるの? 乗り味も違ったりするの!?

  17. 40代/50代からの大型バイク『デビュー&リターン』の最適解。 趣味にも『足るを知る』大人におすすめしたいのは……

  18. ダックス125が『原付二種バイクのメリット』の塊! いちばん安い2500円のプランで試してみて欲しいこと【次はどれ乗る?レンタルバイク相性診断/Dax125(2022)】

  19. GB350すごすぎっ!? 9000台以上も売れてるって!?

  20. “HAWK 11(ホーク 11)と『芦ノ湖スカイライン』を駆け抜ける

おすすめ記事

仏【IXON】の2024年新型ライディングジャケット5種をまとめて一気紹介!カジュアルな春夏用エアスルー「M-NEFTA AIR A」など VT250 「スーパースポーツVT250FからフレンドリーなVTRへ」20年振りに乗って考えた、ホンダVT系の変わりゆく位置づけ 三輪スポーツバイク、ナイケンGTをモデルチェンジしミラノショーに出展

カテゴリー記事一覧

  1. GB350C ホンダ 足つき ライディングポジション