前回は最新技術で復活した新型カタナのコンセプトやスタイリングについて触れたが、今回は新型カタナを支えるそのエンジンに焦点を合わせた紹介を行っていく。
名機ともいわれる「K5」エンジンをリファインした新型のエンジンは、どのような次元へと達しているのか。その詳しい中身をみていこう。
report●山下 剛 photo●スズキ
価格●151万2000円(税込)

●新型カタナの正面。カタナらしさを表現する緩やかに湾曲するラインの美しさがしっかりと表現されている。初代カタナでアッパーカウル下部に設けられた整流板の部分に、ポジションライトを仕込んだアイデアも秀逸だ
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Engine&Performance
新型カタナのエンジンのルーツは05年式GSX-R1000(K5)の998.6㏄水冷並列4気筒DOHC4バルブエンジンだ。これはGSX-R750のエンジンをロングストローク化した経緯から、歴代GSX-R1000のエンジンの中でもストロークが長い。ボア×ストロークは73.4㎜×59.0㎜。そのため本質的に低中回転域の扱いやすさに優れる特性を持つ。

●998.6㏄水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブエンジンは、GSX-S1000に搭載されるものと同型式。ベースとなったのはGSX-R1000 K5のエンジンで、内径×行程は73.4㎜×59.0㎜。ロングストロークで扱いやすい低中速トルクが特徴のエンジンを、ストリートでの需要に合わせた出力特性にチューンしたものだ
このエンジンをGSX-S1000へ搭載するにあたっては、圧縮比の最適化などのチューニングを施し、一般公道での扱いやすさがさらに高められた。そして新型カタナへの搭載にあたっては燃調の小変更程度でほぼそのまま継承されている。つまりエンジンの特徴についてはGSX-S1000にならうわけだが、あらためて細部を見ていこう。
そのスポーティさ、扱いやすさはベース車の美点を受け継ぐ
ピストンは再解析を行い、剛性を損なうことなく軽量化を達成。これによりピストンとピストンリングは、GSX-R1000K7(ボア×ストロークはK5と同じ改良型)のそれよりも3%軽くなっている。また、シリンダーにはスズキ独自のSCEMメッキシリンダーを採用し、フリクション低減に加えて放熱性、耐摩耗性、気密性を向上させた。
シリンダーヘッドでは、カムプロフィールを見直してバルブタイミングを変更。一般道での出力特性に最適化した。スパークプラグにはイリジウムを採用し、始動性の良さ、アイドリングの安定、スロットルレスポンスの俊敏さを実現している。

●オイルクーラーは水冷式を採用。空冷式と比較して小型なので排気システムのためのスペースを作り出すことができ、外観デザインの自由度の大きさにも貢献している
フューエルインジェクションは、44㎜径のスロットルボアを採用。これは現行型GSX-R1000と同寸だ。燃焼効率を高め出力特性をスムーズにするサーボモーター駆動のサブスロットルバルブ、燃料を微粒化して燃費効率に貢献する10ホールインジェクターを備えるほか、O2フィードバックシステムと吸気圧センサーを装備したフューエルインジェクションシステムにより排出ガス中の有害物質を低減する。

●スロットルボア径44㎜のスズキデュアルスロットルバルブ(SDTV)を採用。サブスロットルバルブはサーボモーター駆動で、高効率燃焼とスムーズな出力特性を発揮する
排気系は4-2-1の集合方式を採用。1-4と2-3のヘッダーパイプ間にイコライザーパイプを設置して排気パルスを発生、低中速の出力を向上させた。エキゾーストパイプにはサーボ制御のバタフライバルブを内蔵してエンジン回転数、スロットル開度、ギヤポジションから算出された最適なバルブ開度を維持。排気圧力波を制御し、低回転域における燃焼を促進させる。

●エキゾーストパイプに内蔵されたスズキエキゾーストチューニング(SET)。管内に設けられたバタフライバルブの開閉により排気圧力波を制御し、低回転域における燃焼効率を高める
定評あるK5エンジンをリファインした新型のエンジンは、欧州の最新規制「ユーロ4」をクリア。環境性能も満たしている。スズキ独自のローRPMアシストも備え、特に発進と停止が多い市街地走行での扱いやすさをさらに向上させた。まさしく熟成の域に達し、旨味すら感じさせてくれるエンジンなのである。

●アッパーカウルからタンクにかけての直線的な曲線が描くラインと面は、まさしくカタナ。補機類が大型化した現代のバイクは必然的に背が高くなる傾向があるが、シャープな面構成がそれを感じさせず、往年のスタイルを再現している
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