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モーターサイクルショー2025のヤマハブースで「オフロードカスタマイズコンセプト」が展示されていたことから、国内デビューがうわさされていたオフロードモデル、WR125Rがついに姿を表した。本格的な車体構成とパワーを持て余さないエンジンは、さまざまなライダーを楽しませてくれそうだ。
オン/オフロードともにスポーツ走行経験豊富でツーリング好きでもあるフリーランスライターの田宮 徹が、発売前のメディア向け試乗会でのインプレッションをお届けする。
オフロード走行の基礎を学ぶのにピッタリ
肩透かしを食った感もあったが、これはこれで、楽しさいっぱいで“ちゃんとオフロードライディングできる”バイクだった!
セロー250の生産終了以降、ヤマハ国内新車ラインアップのオフロードカテゴリーは極めて寂しいことになっており、一般的な林道レベルのオフロードを走れる公道用モデルはテネレ700のみに。車重208kgの688ccマシンを土の上でソツなく操れるライダーは限られるので、現実的には無いに等しい状態だった。そんな背景もあり、2輪2足でトコトコと山道を進むマウンテントレールの楽しさを啓蒙し続けてきたセローシリーズの新型登場を望む声は多いが、ヤマハが2026年1月30日の国内発売をアナウンスしたのは、グローバルモデルでもある原付二種のWR125Rだった。


僕はオフロードも大好きで、歴代のセローまたは兄弟車のトリッカーを所有してきたこともあり、ヤマハ新型オフ車が“カモシカ”でないことを残念に感じていた。しかしWR125Rにモトクロスコースや林道を想定したダート、郊外の一般道や舗装林道でじっくり乗ってみて、「高速道路を利用できない」という原付二種特有の条件さえ問題なければ、オフロード遊びの入門用バイクとして、もしかしたらセローよりも優れているのではないかとさえ感じた。


発進直後にまず驚かされたのは、低回転域での強烈なトルク感があるわけではないにもかかわらず発揮される、1速での驚異的な粘り強さ。クラッチを完全につないだまま、アイドリング状態で人間が歩くよりも遅いスピードで走らせても、多くのシーンでエンストしない。さらに、そのままそっとスロットルを開ければ、ほとんどギクシャクすることなく立ち上がる。

エンストを怖がるあまり、急な上りのターンで思わずクラッチを切ってしまい、そのせいで駆動力が途切れて何もできずに転倒。これはオフ初心者に多い失敗例で、舗装された公道でも狭い峠道でたまに遭遇するアクシデントだが、WR125Rの場合、1速に入れてさえおけばクラッチ操作ナシで対処できるシーンがかなり多い。

そのエンジンは、124cc水冷単気筒なので、さすがにパワー&トルクはない。モトクロスコースで全開にしていても、柔らかい土質の上りストレートでは、3速だと途中で失速して2速にダウン……なんて走りになることがあった。

ただし、これをどう捉えるかは人それぞれ。僕は、「こんなにも全開にできる時間が多いなんて、なんて楽しいんだ!」と思った。滑りやすいオフロードでスロットルを開けるのは、とても難しい。多すぎるパワー&トルクは、恐怖心にすらつながる。だからオフ初心者には、250ccクラスだけどエンジンがマイルドなセローや、クローズドの場所なら4スト125ccクラスの競技用モデルなどでまず練習することが推奨されてきたのだ。WR125Rはこれらに代わる、エントリーモデルにちょうどいいエンジン性能だと思う。

もっとも、これが“最初のオフ車”に向いている理由は、エンジン性能によるものだけではなく、ベーシックな構成とはいえ、車体の設計や姿勢や動きに、オフロードスポーツの基礎が詰まっていることも大きい。例えばセローは、あくまでもマウンテントレールなので、コースをそれなりのペースで走らせると、スタンディングでもシッティングでもライポジになんとなく違和感があるし、車体姿勢も低すぎる。ホンダのCRF125Fや、2025年に生産終了となってしまったヤマハのTT-R125LWEは、オトナが乗るには車体が小さすぎるし、前後19/16インチ径ホイールだし、車体や前後サスもプアな感じがある。対してWR125Rは、しなやかでありながらジャンプを含むある程度の高い負荷に耐えられる設計が施されており、ライポジもオトナがスポーティに操縦したときにピタッと決まる。オフロード走行の基礎を学ぶのに、かなり適しているように感じられた。


ちなみに、ブレーキはフロントのみアンチロック機能付き。そのため、ブレーキをロックさせてリヤをスライドさせるような走りをモード変更ナシでいつでもできる。そもそもオフロードでは、前輪をロックさせないよう繊細にブレーキ操作するのが鉄則だが、林道でガツンとレバーを握ってみたところ、ABSの制御はオフロードでも信頼できる感触だった。


オンロードも気軽に走れてトータルバランスが高い
さて、オフロードの話ばかりしてしまったが、実はこのバイク、アスファルトの上もけっこう楽しい。意外とコーナリングも得意で、前輪21インチ径ながらただベタッと寝るのではなく、ライダーにほんの少し舵角を感じさせながら旋回。ハードブレーキングではフロントのABSが頼りになる。一般道の法定最高速度となる60km/h走行時のエンジン回転数は、6速で約5500回転。タコメーターのレッドゾーンは1万1000回転からで、十分に余裕がある。



もちろん、前述した1速での粘り強さは、アスファルトの上でも活きる。125ccクラスのエンジントルクなのに、極低速域でエンストさせてしまいそうな感じがなく、バイクの初心者にとっては心強く感じるはずだし、日常の足として気軽に操れる雰囲気がある。



ちなみにこのエンジンは、可変吸気バルブタイミング機構のVVAを搭載しており、十分な低回転域トルクと高回転域の伸びが両立されている。VVAが高回転側に切り替わるのは7000回転を過ぎたあたり。それより上の領域をキープできるようシフトチェンジすると、かなりキビキビ走れる。

開発ベースは国内未導入のWR155Rだが、エンジン性能は125と155で近いところにあり、オフロードでもオンロードでも、エンジンと車体のマッチングは良好。だからこそ、ちょっと攻めてみたくもなるし、まったり走っていて気になる点が少ない。オフ車フルサイズホイールを履く車体は、車重138kgでシート高875mm。125ccクラスとしては大きくて重いのに、走らせるとまるでそんな感じがないのは、トータルバランスの高さにも由来するのだろう。



ほんの10年前まで、僕らの認識は「オフロードのヤマハ」だった。WR125Rが、その復権に向けた最初の1台となることに期待!

ヤマハ WR125R主要諸元
■エンジン 水冷4ストローク単気筒OHC4バルブ ボア・ストローク52×58.7mm 排気量124cc 圧縮比11.2 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力11kW(15ps)/10000rpm 最大トルク11Nm(1.1kgm)/6500rpm 燃費44.8km/L(WMTCモード値)
■変速機 6段リターン 変速比1速2.833 2速1.875 3速1.363 4速1.142 5速0.956 6速0.840 一次減速比3.041 二次減速比4.214
■寸法・重量 全長2160 全幅840 全高1195 軸距1430 シート高875(各mm) キャスター28°20′ トレール117mm タイヤF2.75-21 45P R4.10-18 59P 車両重量138kg
■容量 燃料タンク8.1L エンジンオイル1.1L
■車体色 ディープパープリッシュブルーソリッド E、ヤマハブラック
■価格 53万9000円


report:田宮 徹 photo:柴田直行
ヤマハ発動機
TEL:0120‐090-819(カスタマーコミュニケーションセンター)
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/




































