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初代デビューから15年、PCXは5代目に
ホンダ PCXといえば、125ccクラス(原付二種)のスクーターで売れに売れているモデルだ。通勤やデリバリー用途など、都市部においてはPCXを見ない日は無い。
稼ぎ頭のモデルだけあって、モデルチェンジのサイクルも早い。2010年に初代がデビューし、2025年モデルでは5代目へ進化。2025年2月6日に発売となった。
ホンダ公式の発表では最新型=5代目は「外観を一新」という扱いだが、PCXというモデルに予備知識の無い方もいるかと思うので、ザッとその特徴を紹介しよう。ちなみに筆者は初代の後期型から3代目へと乗り継ぎ(現在も愛用中)、2代目と4代目の試乗取材も経験している。以下はメーカーの説明だけでなく、その実感も含まれている。
- スムーズなエンジン。そもそも燃費良しなのに加え、アイドリングストップ付き
- ゆとりある乗車スペース。タンデムも余裕
- 安定感ある走り。そのうえで125ccらしい機動力は確保
- 使い勝手のいい収納スペース
PCXは初代で「パーソナル・コンフォート・サルーン」というコンセプトを掲げて登場したが、モデルチェンジでキャラが変わっちゃうバイクもあるのに、PCXは全くブレない。しかもコンセプトを継承するだけでなく、そのたびに「パーソナル・コンフォート・サルーン度」が全方位進化してくる。
なお「サルーン」という言葉はいくつか意味があるが、自動車の高級セダンをそう呼ぶこともある。PCXのコンセプトを日本語で表すなら「1人ないしは2人で乗る、高級セダンの2輪版」だろうか。
当記事は新旧比較や歴代モデルの解説が主題ではなく、最新型PCXがどんなバイクかを紹介することがメイン。というわけでここからが試乗レポートだが、走りのスポーティ度をチェックするような趣味バイク目線ではなく、日常使用を軸とした観点で述べていきたい。

ホンダ PCXは車体が命!?
走り出して真っ先に感じるのは、快適性と安定感だ。路面の凹凸はゆったりいなし(でも、柔らかすぎてポヨンポヨンするのとは違う)、小排気量スクーターとは思えない直進性を見せる。
PCXは3代目でダブルクレードル構造のフレームを採用し、4代目でそれを発展させたが、車体の剛性感がとにかく小排気量スクーターとは思えないのだ。
かといってハンドリングがダルいというわけではなく、交差点のように低速で鋭角的に曲がる場面から田舎の山道まで、安定感を保ったうえでスムーズに曲がる。混雑した市街地をススッと走るのも問題なしだが、ギュンギュンすり抜けしたい派の取材メンバーからは「安定感は抜群だけど、半面、車体サイズがちょっと大きく感じる。曲がり方も大らかかな」という声もあった。
ブレーキをかければ車体全体はジワッと沈み込んでいく。優しく抱き抱えられているかのようだ。ただ前ブレーキだけをかけてもつんのめる感は少ないので、フロントフォークが相当しっかりしているのかもしれない。
この安定感に加え、ゆとりある乗車姿勢がとれるのでとても安楽極まりない。短時間の街乗りだけでなく、1日走りっぱなしみたいなツーリングでも腰の負担は少ないはず。PCXのユーザーは街乗りメインが多数派だと思うけど、ツーリングを楽しんでいる人もいる。筆者も初代、3代目ともにツーリングに使ったことがあるが、長時間走行も十分快適だった。それを上回る最新型は「間違いなく」OKだ。


ホンダ PCXのエンジンフィーリング、動力性能
OHC4バルブのエンジンは最高出力12.5psで国産125ccスクーターの中ではトップクラス。車重も装備重量133kgとトップクラスなのだが、その車体を難なく引っ張る。エンジン性能もさることながら、その十分な加速力はトランスミッションによるところも多そうだ。というのも、CVTにありがちなスロットルを開けてからリヤタイヤが動き出すまでの「溜め」がほとんどなく、スロットル操作に対しダイレクトに反応するのだ。
そして、加速さえ終わって回転数が落ち着けばゆったりとした走りに切り替わる。一般道上限の60km/hなんか余裕、環境さえ許せば80km/hくらいでも巡航できそうな雰囲気がある。スロットルを大きく開けると「ガオーン」と勇ましいサウンドになる瞬間はあるが、全体として振動は少なく滑らかな回転感。これもまたPCXの快適性や高級感をもたらす一要素だ。
トラクションコントロールも付いている。最新の大型バイクに乗っている人は「スクーターにトラコンなんて要らないでしょ」なんて馬鹿にするが、PCXのような小排気量スクーターは通勤など雨でも毎日乗るような使い方をされるし、マンホールだって山道より市街地の方が多い。むしろ、日々の移動における安全装置としてとても有用だと思う。ABSも。

ホンダ PCXの収納スペース、足つき性
シート下収納は30Lあり、ヘルメット1個入れてもかなりの余裕がある。いわゆる「半キャップ」なら2個入るかもしれないが……。ちなみにスペースは初代〜2代目:25L、3代目:28L、4代目〜5代目:30Lと着々と容量を拡大している。どこまで広がるんだろう。さすがにこれ以上は無理?
ハンドルの左下にはフロントインナーボックスがあり、500mlのペットボトルもしまうことができるほか、USB Type-Cソケットも内蔵されている。フロントインナーボックスはロックができないので、バイクから離れる際に貴重品を入れっぱなしにしないよう。


足つきは身長170cm・体重59kgの体格で、つま先から1/3程度が接地。シート高は764mmと低めの数値だが、シートの座面は左右にも広いので股下が大きく開かれるため、そこまで足つきは良くない。とはいえ車体が軽いので、多少傾いてもそこまで不安はない。

ホンダ5代目PCXは歴代同様、その時代で「買って間違いなしの万能性」
気になった点もある。フロントブレーキが良く効いてきれるのはありがたいのだが、スクーターにあるまじき鋭敏さだった。ちょっとの入力でガツーンと効く、スポーツバイクみたいなフィーリング。慣れるまでちょっと時間を要した。試乗車がド新車だったためだろうか。
また、スロットル全開で発進すると、一瞬エンジンが息継ぎする領域がある。滑らかなエンジンだけに、妙に気になってしまう。ただ、車速が乗った状態で全開にしてもそれが起こらない。加速騒音の対策だろうか。
と、各分野ごとに印象をお伝えしてきたが、総合すると「125ccスクーターの購入を検討していてどれにするか悩んでいたら、PCXを買っておけば間違いない」というのが筆者の結論だ。とにかく、全ステータス値が高レベルなのですよ。
従来型ユーザーの一人としての感想は、新型で走り出して30秒で乗り換えたくなった。「最新のPCXが最良のPCX」なのは、ずっと変わらない。
ホンダ新型PCXのデザインについて
おしまいにデザインについて。これは完全に好みの話となるので、触れるのを最後にした。
筆者は最初にカタログ写真を見たとき、従来型=4代目と変わり映えしないと言うか、新鮮さを感じなかった。が、実車を見ると一転した。写真ではわかりづらかったフロントカウルの立体感が昨今のウイングレット付きスーパースポーツのようで、かなりカッコいいのだ。ヘッドライト周りもどこかスーパースポーツ風味がある。
記事を読んで最新型PCXに興味は出たが、デザインがどうしても……という方は従来型=4代目はどうだろうか。基本的には車体・エンジンとも最新型と共通で、装備面も概ね変わらない。低走行の中古車だけでなく、新車の市中在庫もあるかもしれない。


ホンダ PCX主要諸元(2025年モデル)
【エンジン・性能】
種類:水冷4ストローク単気筒OHC4バルブ ボア×ストローク:53.5mm×55.5mm 総排気量:124cc 最高出力:9.2kW(12.5ps)/8750rpm 最大トルク:12Nm(1.2kgm)/6500rpm 燃料タンク容量:8.1L 変速機:無段変速式
【寸法・重量】
全長:1935 全幅:740 全高:1125 ホイールベース:1315 シート高:764(各mm) 車両重量:133kg タイヤサイズ:F110/70-14 R130/70-13
【車体色】
マットスターリーブルーメタリック、パールジュピターグレー、パールスノーフレークホワイト、パールマゼラニックブラック
【価格】
37万9500円




レポート●上野茂岐 写真●飯田康博/ホンダ
ホンダ新型=5代目PCXの装備・特徴を写真とともに解説2025年5月1日訂正:前後連動ブレーキを装備していると記述していましたが、誤りでした。お詫びとともに訂正いたします。
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