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ヤマハ XSR700は「見た目だけでなく、乗り味も旧車風。そこが良い。」

XSR700 ヤマハ

ヤマハが「スポーツヘリテージ」というジャンルに置くXSRシリーズ。そのトップモデル、XSR900が2022年型で劇的な変化を遂げたのに対して、同年に仕様変更を行ったXSR700のキャラクターは不変だった。その事実をどう感じるかは人それぞれだが、往年の旧車に通じる大らかで穏やかなフィーリングを維持していることに、好感を抱く人は少なくないはずだ。


見た目以外で、XSR700とMT-07はどう違う?

2014年にヤマハが発売したMT-07。以降、同車に搭載されたCP2=クロスプレーン2気筒エンジンには、スポーツツアラーのトレーサー7(日本未導入)、ネオクラシック路線のXSR700、アドベンチャーツアラーのテネレ700、スーパースポーツのYZF-R7と5機種が存在する。これらの中で類似性を感じる、と言うか共通点が多いのはMT-07とXSR700で、かつての僕はこの2台に関しては、現代的か旧車風か、ルックスの好みで選んでいいんじゃないかと思っていた。

もっとも、ワイドなアップハンドルとウレタンが分厚くて座面がフラットなシートを採用するXSR700は、MT-07を基準にして考えると、車格がやや大柄である。現行モデルの全幅/全高/シート高は、XSR700が820/1130/835、MT-07が780/1115/805(各mm)。だから小柄なライダーはXSR700に抵抗を感じそうだが、乗車姿勢と車格に違いがあっても、MT-07とXSR700の乗り味に大差はないと僕は感じていたのだ。

でも近年は、そうではなくなっている。2022年型で仕様変更を受けても、当初のキャラクターを維持するXSR700に対して、外装や前後サスセッティングなどを一新した2021年型以降の3代目MT-07は、ストリートファイター指向が強くなっているのだ(2018年に登場した2代目の時点で、すでにその兆候はあった)。

と言っても、270度位相クランクのパラレルツインが味わわせてくれる爽快感と高揚感、いろいろな場面で実感できる軽快なハンドリングは、両車に共通なのだが、原点が路線変更し、派生機種は不変という展開は、こういったシリーズでは珍しいと思う。

ヤマハ XSR700の688cc並列2気筒エンジン。最高出力73ps/8750rpm 最大トルク6.8kgm/6500rpmの性能は、最新型MT-07と同値。

スポーツ方向に進んだMT-07に対し、おおらかな走りができるXSR700

ここから具体的な乗り味について。そもそもの話をするなら、2014年に登場した初代MT-07は、現代的なルックスからは想像しづらいけれど、(いい意味で)旧車的な資質を備えていたのだ。コーナー進入時のフロント周りの舵角の付き方は、ライダーを導いてくれるかのような優しいフィーリングだったし、コーナーの立ち上がりでアクセルを開ければ、低荷重低速域でもなかなかのトラクションが得られた。
だから日本の至るところに存在するチマチマした峠道、見通しや舗装状況が良好ではない場面でも、スポーツライディングが楽しめたのである。

そしてそういった特性は2017年にデビューした兄弟車、MT-07の基本設計を転用して生まれたXSR700も同様だった。
ところが、2021年に登場した3代目MT-07は、快走路で真価を発揮する、現代的でスポーティなキャラクターに変貌を遂げていたのだ。乗り手が適切な操作を行えば、従来型とは一線を画するシャープなコーナリングが満喫できるし、ハードブレーキング時の安定感や、旋回中に路面の凹凸を通過した際の収束も、従来型より明らかに良好。また。初代の時点で容易だったフロントアップが、さらに気軽に行えるようになったことも、3代目ならではの特徴だろう。

そんなMT-07の進化を、同業者の多くは高く評価したものの、初代に好感を抱いた身としては、そこはかとない疑問を感じなくはなかった。もっとも2022年に仕様変更を受けたXSR700を試乗した際は、それ以前と変わらない特性、つまり初代MT-07と同様のフィーリングに安堵を覚えたし、同条件で3代目MT-07と現行型XSR700を比較した僕の中では、3代目MT-07に対する疑問が消え、それどころか、XSR700とのキャラクターの差別化に感心することになったのである。

いずれにしても、現行型のMT-07とXSR700は似て非なる乗り味だから、ルックスだけで安易に選ぶと後悔する可能性がありそうだ。まあでも逆に考えれば、ストリートファイター然としたMT-07は現代的なスポーツ性、クラシックな雰囲気のXSR700は旧車を思わせる資質を備えているので、2021年型以降の2台は、ルックスと乗り味が合致したと言えなくもないのか……。

さて、車体の話が長く続いてしまったが、当記事の撮影で久々にXSR700を走らせた僕は、クロスプレーン2気筒の魅力を改めて実感。このエンジンの最大の特徴は、ライダーにとってノイズになる慣性トルクを低減する一方で、燃焼トルクが瑞々しく伝わってくることだ。その特性はコントロール性の向上、主に高回転域でのスロットルの開けやすさにつながる。ただし、不等間隔爆発が絶妙な鼓動感を発揮してくれるから、スロットル開度を一定に保ってのマッタリ巡航も相当に楽しい。

もっともそういった感触は、ほかの兄弟車でも得られるのだけれど、XSR700を走らせていると、マッタリ巡航での充実感が際立って感じられる。おそらくそれは、大らかで牧歌的なライディングポジションと、旧車的な資質を備えるシャシーのおかげだろう。

ヤマハ XSR700の装備・特徴を解説

アルミ製のハンドルは、中央部が25.4mm径のテーパータイプ。初代でハンドルクランプ上に設置していた丸型液晶メーターは、2022年型からはかなり前方に移設。
燃料タンクカバーは3分割式で、左右パネルはアルミ製。フロントフォークオフセット/スパンは、近年のロードスポーツの基準ではやや多め/狭めの40/190mm。
フロントブレーキは290mm径ディスク+アドヴィク製対向式4ピストン。純正タイヤは2022年型からミシュラン・ロード5となった。
シートはかなり肉厚で、座り心地はなかなか良好。表皮はオーソドックスなレザーとバックスキンタイプの2種を使い分け、両者の接面にはダブルステッチを採用。

XSR700とMT-07のライディングポジションを比較

XSR700
MT-07(2023年型)

写真では分かりにくいものの、MT-07のライディングポジション(撮影車は2023年型)を基準にすると、XSR700は着座位置が高くてヒザの曲がりが緩やか。
そしてハンドルグリップ位置は、XSR700のほうがライダーに近くて幅広なのだが、2024年型MT-07はハンドルが10mm高くなったので、現在の2台の差異は微妙に縮まったと言えなくもない。ライダーの身長は170cm。

レポート●中村友彦 写真●岡 拓 編集●上野茂岐

ヤマハ XSR700主要諸元

【エンジン・性能】
種類:水冷4サイクル並列2気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク:80.0mm×68.6mm 総排気量:688cc 最高出力:54kW<73ps>/8750rpm 最大トルク:67Nm<6.8kgm>/6500rpm 変速機:6段リターン

【寸法・重量】
全長:2075 全幅:820 全高:1130 ホイールベース:1405 シート高:835(各mm) タイヤサイズ:F120/70ZR17 R180/55ZR17 車両重量:188kg 燃料タンク容量:13L

【価格】
100万1000円

【車体色】
ブラックメタリックX、ラジカルホワイト

XSR700(ブラックメタリックX)
XSR700(ブラックメタリックX)
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https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/

 

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https://ysp-shop.com/

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