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「500mlのお水を何分で沸騰させられるか」8機種でタイムアタック!!
キャンプを始めると、誰もがはまってしまう「道具選びの沼」。
そんな中でも最初に陥りやすいのがバーナー沼。キャンプにおいての基本である湯沸かしや調理に使う絶対必需アイテムだからだ。
今の時流としてはガスバーナー がメインになりつつあるが、使用するガスにもOD缶(アウトドア缶)とCB缶(カセットガスボンベ缶)の2種類が存在し、バーナーの形状もさまざま。 また、かつてはガソリンバーナーの愛好家も多かったし、今でもアルコールバーナーを愛用している人は多い。
もっとマニアックな物 になると灯油(ケロシン)、ベンジンを燃料として使うバーナーなどもある。そういった昔のバーナーの中には名機と呼ばれる逸品が存在し、 それらは道具としての機能はもちろんのこと、着火までの作業工程や稼動中の燃焼音までもが使う者を魅了した。
単にお湯を沸かすと いう行為が、名機と呼ばれるバーナーを使うとわくわくし、炎に癒やしをもらえ、暗闇では頼もしささえ覚えるのだ。 この記事ではそんな多様性にあふれるバーナーの中から、最新モデルから往年の名機、100円ショップで購入できるアイテムまでをピックアップして500mlの水が何分で沸くかテストした。
今回のテストは、500ml容量のペットボトルに入った水をクッカーに移して、それが何分で沸くかを計測するという単純なもの。
これはカップ麺1杯分(約350ml)+コーヒー1杯分(約150ml)に相当する量(本当 は600mlぐらい)と考えられるので、キャンプにおける基準としてはちょうど良い。テスト時の天気は曇りで外気温約26度。湿度は測っていないが、おそらく60%ほどと予測された。今回テストした機種は以下の8機種だ。
・SOTO レギュレーターストーブ ST-310
・SOTO レギュレーターストーブ FUSION ST-330
・SOTO マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター SOD-310
・PRIMUS エクスカイザーEX-ULT-1
・SOTO MUKAストーブ SOD-371
・OPTIMUS 8R
・EVERNEW チタンアルコールストーブ
・DAISO ちょこっとストーブ
湯沸かし最速は2分12秒、最下位は28分41秒
500mlの水(加熱前水温約30度)を沸騰させるまでに掛かった時間を計測したところ、最速は2分12秒の「PRIMUS エクスカイザーEX-ULT-1」だった。続いて「SOTO マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター SOD-310」「SOTO レギュレーターストーブ FUSION ST-330」など、定番のガスストーブで2分台の記録が続いた。
湯沸かしに掛かった時間が短かった順にランキング形式で見てみよう。
1位【2分12秒】PRIMUS エクスカイザーEX-ULT-1(OD缶ガス)
2位【2分18秒】SOTO マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター SOD-310(OD缶ガス)
3位【2分27秒】SOTO レギュレーターストーブ FUSION ST-330(CB缶ガス)
4位【2分39秒】SOTO レギュレーターストーブ ST-310(CB缶ガス)
5位【3分25秒】SOTO MUKAストーブ SOD-371(ガソリン)
6位【6分45秒】OPTIMUS 8R(ガソリン)
7位【7分35秒】EVERNEW チタンアルコールストーブ(アルコール)
8位【28分41秒】DAISO ちょこっとストーブ(固形燃料)
こうしてみると、湯沸かしにはガスを燃料としたガスバーナーが向いていることが分かる。ガスバーナーの中でもCB缶(カセットガスボンベ缶)よりOD缶(アウトドア缶)のほうが、より早く湯を沸かすことができる傾向だ。
次の章からは、使用する燃料の種別ごとに、それぞれのバーナーの特徴を細かく見ていこう。
【2分39秒】SOTO レギュレーターストーブ ST-310「大人気の定番」(CB缶)
ソロからファミリーキャンパーまで、さまざまなユーザーたちの間で超人気、品薄状態が続いているバーナーがこのST-310だ。筆者自身も10年以上愛用しており、通算で100泊以上のキャンプに使っている。低温時でもガスの気化率を上げるマイクロレギュレーター機構を装備しているので、低温時でもしっかりした炎が出せるのが魅力。また、一体型の本体とゴトクは非常に頑丈で、10インチのダッチオーブンを上に乗せて調理しても問題なし。初心者がバーナーで迷ったらコレを選べばまず間違いなしの名機。
ST-310のバーナーヘッドは大きめになっている分、クッカーの底の広範囲に渡って炎が回る感じ。4本のゴトクもしっかりした作りになっており、上に乗せたクッカーの安定度は高い。
価格:6380円
発熱量:2500kcal 本体サイズ:166×142×110mm
収納サイズ:140×70×110mm
重量:330g
【2分27秒】SOTO レギュレーターストーブ FUSION ST-330「分離型で使いやすい」(CB缶)
バーナーと調節レバーがホースで繋がれた分離型モデルがこのST-330。ボンベ側に調節レバーと点火スイッチがあるので、調理中でも操作が楽なのが一番のメリット。ゴトクはやや細めだが、しっかりしているので大きな鍋を乗せても安心。ボンベと燃焼部が離れているので、ボンベが加熱されないのも大きな魅力。ST-310同様レギュレーター機構 により低温にも強く、囲われたバ ーナーヘッドにより耐風性能も高い。500mlの湯を沸かすのに掛かった時間は2分27秒とST-310より11秒も早かった。
ST-330はT-310よりもバーナーヘッドは小さいものの、ヘッドの縁がバーナー中心部を囲むような作りになっており、防風性は高い。T-310との11秒の差は、こ の形状の違いによるものと予想される。
価格:9900円
発熱量:2200kcal 本体サイズ:350×120×90mm
収納サイズ:150×75×90mm
重量:250g
【2分18秒】SOTO マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター SOD-310「軽量コンパクトでパワフル」(OD缶)
低温に強いSOTOのマイクロレギュレーター機構を搭載した超小型、軽量のOD缶バーナー。面白いのはバーナーヘッドとゴトクが収納時に分離できる点で、片手にすっぽり収まるほどコンパクトにしまえる。重量もヘッド部約60g、3本ゴトク7gと合計67gの驚異的な軽さ。
にもかかわらず2800kcal/hという高火力を持ち、500mlの湯を沸かすのに掛かった時間はは2分18秒と、CB缶バーナーの2種を大きく突き放す結果を出した。オプションで4本ゴトクにカスタム可能な点など、ギミック感があるのもたまらない。
バーナーヘッドは直径47mmと小さめで、標準装備の3本ゴトクは外径100mmだが、オプションで購入できる4本ゴトク(外形144mm)を使えば安定感が格段に向上する。
価格:8140円
発熱量:2800kcal 本体サイズ:90×117×100mm
収納サイズ:94×10×35mm(※ゴトクのみ収納時) 重量:67g
【2分12秒】PRIMUS エクスカイザーEX-ULT-1「世界初のチタン製バーナー」(OD缶)
筆者が持つバーナーの中から選んだOD缶バーナーの名機がこれ。1994年に世界初のチタン製バーナーとして生まれ、多くの登山家を魅了した。
バーナーを囲むフラットなチタンプレートを起こしてX字にするワンタッチ方式や、木製グリップなど、今見ても色褪せない機能美に溢れたデザインが魅力。
重量も95gと当時としては驚異的な軽さ。専用樹脂ケースにすっぽり収まり収納性も抜群。そして驚いたことに2分12秒というタイムは今回計測した8機種の中で最速だった。
ゴトク部分はバーナー部をまたぐような形で展開する。チタン製で軽量かつ熱伝導特性が高く、プレートなので畳むとコンパクトになる。風防の機能も併せ持たせているようだ。
価格:廃盤商品
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2■櫻井伸樹(さくらい のぶき)
フリーの編集&ライター。10代よりキャンプツーリングに目覚め、その後ツーリング雑誌「アウトライダー」の編集部員に。取材で日本全国および、カナダ、オーストラリア、ヨーロッパ、モンゴルなど海外ツーリングも多数経験。4年ほど前からアウトドアメーカー「テンマクデザイン」のキャンプ用品プロデューサーとしても活躍中。