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衝突被害軽減ブレーキが反応するのは対クルマや歩行者だけ? バイクに対しても有効なのか?

標準装備化が進む「ぶつからないクルマ?」AEBSとは

「ぶつからないクルマ?」といったCMのキャッチコピーで知られるようになった四輪車の自動ブレーキ機能。「自動」といっても運転をクルマに任せておけるという意味ではありません。

障害物を検知している状態で、ドライバーが適切な対応をしていないとクルマが判断すると、急ブレーキを作動させる機能のことです。

あくまで運転ミスをカバーするための補助機能であり、本来は「衝突被害軽減ブレーキ」と記すべきで、またアルファベットでは「AEBS」(Advanced Emergency Braking Systemの略称)と略されます。

このAEBS、すでにクルマでは義務化が進んでいます。2021年11月以降に登場した新型車には義務化となっていますし、継続生産車でも2025年7月以降は標準装備していることが求められています。

衝突被害軽減ブレーキの作動イメージ。

■例えば、ホンダステップワゴンの場合には車両や歩行者の接近を感知してドライバーに音で警告を発する、軽いブレーキを作動する、強力なブレーキを作動するという3段階の介入で衝突回避、衝突被害軽減を試みます。

カメラやミリ波レーダー、空間センサー前方を検知する方法は複数種類

AEBSの基本的なメカニズムは、カメラやミリ波レーダーなどのセンサーで前方の状態を検知して、自車との速度差から衝突の危険性があると判断すると、ブレーキをかけるというもの。

カメラは物体の形状まで認識できるのが特徴ですが、暗いときや逆光などに弱いというウィークポイントがあります。逆にミリ波レーダーは濃霧などのコンディションには強いかわりに、物体の形状を細かく把握するのが苦手という特徴があります。

どちらか単独でもAEBSのセンサーとして活用できますが、カメラとミリ波レーダーを併用することで精度を上げるというアプローチもあります。自動運転時代に向けて、より精度の高いLiDAR(ライダー)と呼ばれる空間センサーの採用例も出てきています。

■例えば、ホンダステップワゴンの場合にはフロントセンサーカメラ、ミリ波レーダー、前方・後方のソナーセンサーの3種を使い分けて、障害物を検知しています。

■写真は自動車及び産業用の空間センサーを開発・販売するアメリカ企業のベロライン・ライダー社が公開する、LiDAR センサーによって捉えられた景色を3D 画像化したもの。LiDAR センサーは、レーザー光を照射し、物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を計測することで、物体の形状や距離、方向を測定しています。まるで人間の目で見る景色のように、先行車や街路樹の形まではっきりと認識できるのが特徴です。レクサス LSシリーズにも採用されています。

最近のAEBSはバイクも認識できる

では、AEBSはバイクを認識することはできるのでしょうか。

結論からいえば、認識できるように進化しています。

たしかに初期のAEBSは基本的には四輪車や建物などしか検知できないレベルでした。そこから歩行者を検知できるようになり、自転車やバイクといった二輪の乗り物についても検知できるようになってきています。

余談ですが、数年前のシステムでは歩行者は昼間しか検知できないものが多数派でしたが、最近では夜間の歩行者も認識できることは当たり前となっています。AEBSのセンシング能力は日進月歩で進化しているのです。

バイクというのは対象物が小さいわりに歩行者や自転車に比べて速度が速いという点で、非常に検知するのが難しいといいますが、最近のシステムではかなり高精度に認識できるようになっている印象です。

高速道路などで利用するACC(追従クルーズコントロール)という機能があります。これはAEBSと同じように前方をセンサーで検知して、先行車の速度に合わせて自車の速度と車間距離を自動的に調整するというものです。

仕事柄最新のクルマや開発中のクルマに乗ることの多い筆者の経験でいえば、かつてはバイクを検知できないケースもありましたが、最近のクルマではバイクに追従してクルーズコントロールを利用することもできるようになっています。とくにホンダの四輪車はバイクを認識する能力が高いような印象もあります。

もっとも、この手のセンサー類において「100%」や「絶対」という言葉は使えません。バイクを検知できることもあれば、できないということもあり得ます。もちろん、それは対象が四輪車でも歩行者でも同様です。

そもそも、AEBSやACCといった機能は運転支援システムであって、ドライバーのミスをカバーできることもある、といった位置づけです。完璧でないのは大前提といえます。

とはいえ、こうしたセンシングデバイスは着実に進化しているのも事実ですし、その情報を利用して車両側の制御も様々なことができるようになっています。

ホンダN-BOXのACCは先行車に近付くとシステムが先行車との距離や速度差を測定し、自動的に加減速。割り込んできた車両があった場合も対応し、適切な車間を維持しながら追従走行します。
初期には明るい昼間にしか歩行者を検知できなかったAEBS。ここ数年間に夜間の歩行者も検知できるようになりました。
2022年5月に発売されたホンダの新型ステップワゴンには、壁などの障害物の見落としによる衝突回避、被害軽減を支援する近距離衝突軽減ブレーキも前後に搭載されています。

自動運転技術の開発者はバイクの存在を十分に意識している

未来の実用化を目指す、自動運転の公道実験車両に同乗しているとき、信号待ちをしている車両が少し右に動いたことがありました。

最初はシステムのバグかと思いましたが、すぐに左側からバイクが近づいてきたのを見て、エンジニア氏に確認すると「信号待ちでバイクが前に出てくるのを検知して、不要な接触を避けるためにスペースを開けるような制御を入れています」ということでした。

さすがに、このレベルの制御が市販車に組み込まれているという話は聞きませんが、自動運転技術の開発者はバイクとの共存を十分に意識しているというエピソードとして記憶に残ります。

最近、電動キックボードの普及を考慮して「特定小型原動機付自転車」という新しいカテゴリーが生まれたことが話題となりました(施行されるのは2年内)。

すでに歩行者やサイクリストを検知するようになっているAEBSです。新カテゴリーの登場に合わせて、電動キックボードなどを検知する能力も向上することでしょう。

前述したように、AEBSはあくまでも運転支援機能ですから完璧ではないかもしれません。だからといってAEBS全般を否定するのは間違いです。少しでも交通事故を減らす可能性があるのなら、そうした機能が普及することは交通事故ゼロ社会に向けた正しい進化と捉えるべきなのです。

自動運転技術は「バイクのすり抜け」まで視野に入れて開発されているものもありますが、特に左側からのすり抜けは危険なので絶対にやめましょう。
フランスの自動車部品グローバルサプライヤー、ヴァレオの自動運転レベル4デモカー。筆者が試乗した際には、後方左側からすり抜けてくるバイクを検知して「右に寄る」という回避行動を見せました。

レポート●山本晋也 写真●ホンダ/ヴァレオ/ベロライン・ライダー 編集●中牟田歩実

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