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暑さが一段落して、バイカーにとってはトップシーズンが訪れました。暑くて我慢していたご自慢のライダースジャケットや、レーシングスーツも心置きなく身にまとうことができそうです。
が、これだけ多様性が広まった世の中ですから、バイカーファッションの自由度も相当にアップしています。たとえば、これまでテーラードジャケットを着てバイクに乗るのは一部のクラシックマニアとか、郵便局の配達ライダーくらいのものでしたが、やっぱり世界は広い! バイクにテーラードスーツというスタイルはすでに世界的トレンドになっていると言っても過言ではありません。
安全性やら機能性といった面での課題こそ残りますが、それを差し置いてもカッコよく乗りたい方だって決して少なくないでしょう。そこで、今回はスーツスタイルが似合うバイクをイメージ優先でセレクト。あわせて、インスタからもお手本となるようなショットをご紹介。オールドスクールもいいですが、新たな扉を開くのもまたバイカーらしいのではないでしょうか。
モトグッツィ V7シリーズ
2008年にリリースされたイタリアンメイドのネオクラシックバイク。Vツインエンジンを縦置きする独特なパッケージでおなじみのモトグッツィですが、このV7シリーズは特にスタイルやテイストを前面に押し出し、世界的に注目されています。
また、モトグッツィ本社はイタリアの代表的なリゾート「コモ湖」や、世界のファッショニスタが集うミラノからもほど近いためか、オシャレバイカーからいつでも熱視線が送られているのでしょう。
そもそも、ヨーロッパで750ccといえばミドルクラスとして街と街を行き来するような気軽なマシン。それゆえ、ガチなバイカー装備というより、オールドスクールなスタイルや、それをカジュアルにくずしたコーデで乗っているオーナーが少なくありません。
もちろん、スーツスタイルでのライディングも人気なようで、SNSには多数のオシャレバイカーが登場しています。
こちらのV7ライダーは主張のあるチェックのスーツに、蝶ネクタイといういかにもイタリア風のスタイリング。編み上げブーツや、ジェットヘルにマッチしたヒゲなどスーツスタイルのニュアンスをマシマシにしてくれるディテール満載です。また、カスタムカラーやロケットカウルなどV7そのものの仕上がりもカッコいい! ただ、ここまでいくと「狙ってる感」が漂い始め、下手をすれば「コスプレ」に成り下がってしまうので要注意でしょう。そうした印象を払拭するには「スーツで乗ってるのにキレのあるライディング」がキモではないかと。
トライアンフ ボンネビルシリーズ
トライアンフは「紳士の国」英国生まれだけに、スーツアップもばっちりこなしますね。とりわけボンネビルはトライアンフのアイコンといっても過言ではないだけに、いずれのモデルもビシッと決まるはず。スクランブラーやトラッカー風カスタムであろうと、本家カフェレーサーに仕上げようと、ボンネビルは適度にオリジンを主張してくれるのでスーツスタイルがミスマッチとなることは少ないはず。
あえて短所をあげると、人気のスタイルだけに相当頑張らないと「あ、おなじみのスタイルね」とインパクトが薄いことかもしれません。いわゆる「ベタ」にならないためには、カスタムの懐が深いバイクというのを活かし、スーツを仕立てるのと同様、バイクも自分好みに仕立て上げるのが正解かもしれません。
それにしても、海外でジェントルマンバイク(スーツなどを合わせ、上品に乗るバイク)というと、必ずトップランナーに躍り出てくるというのはブランドの力にほかなりませんね。
グレンチェックのスーツはなかなか着こなしが難しいと思っていましたが、トライアンフに合わせるとは、まさに「その手があったか!」と膝を打ちました。足元こそ写っていませんが、黒のチャッカブーツでも合わせていたらパーフェクトでしょう。ストライプシャツの色目を慎重に選び、とどめはべっ甲カラーのメガネ&バイザー付きジェットヘル。ボンネビルのオーナーは、こうした手練れバイカーが少なくありません!
ドゥカティ スクランブラー カフェレーサー
すでにデビューから5年以上が過ぎたとは思えないスクランブラーのカフェレーサー(2015年に発売、2020年販売終了)。今もって、ネオクラシックを再構築したスタイリングは新鮮かつ、アグレッシブに映ります。
スクランブラーのノーマルモデルも十分スーツが似合うかもしれませんが、ここはセパハンの前傾姿勢でスーツのシルエットがより鮮明になるカフェレーサーをセレクト。インスタを探してみるまでもなく、わんさかスーツで乗ってる写真が出てきて人気のほどがうかがえます。
とはいえ、一筋縄ではいかないオシャレマシンですから、生半可なオシャレではバイクに負けてしまうかもしれません。さらに、スクランブラー カフェレーサーに乗っているバイカーはオシャレ上級者も少なくありません。なので、スーツはスーツでも成人式で使うようなやつとか、リクルートスーツみたいなのはもってのほか。カフェレーサー用に一着仕立てるくらいの気概がほしいものです。
ハッシュタグから察するに、こちらのスーツもオーダーメイド、ビスポークらしいことが伺えます。個人的に惜しいと思えるのは、ベント(ジャケットの背中側にある切れ込み)がセンターベントっぽいこと。せっかくなら、乗馬用ジャケットに祖を持つサイドベンツにしてもらえると「わかってらっしゃる!」と嬉しくなるのですがね。一方、単色のタイやカフスのコーデは今っぽいミニマルなもので、カフェレーサーのボディカラーともマッチしています。ヘルメットやバイザーのカラーチョイスも決まってます!
ランブレッタ X300
スクーターを洒落たスーツスタイルで乗るのは、1960年代のイギリスで流行したモッズが火をつけたトレンド。もっとも、そのモッズも最初は古いイタリア映画から刺激を受けて始めたようです。ともあれ、モッズときたらべスパかランブレッタと相場は決まっていますよね。
ここでは、ランブレッタの新たなモデルXシリーズをチョイス(本国イタリアでは2022年発売、日本での販売も予定されているらしいのですが、導入時期は未定)。シャープなラインで構成されたボディながら、シルエットにはどこか柔らかさが漂い、旧い町並みから緑あふれる郊外まで不思議とマッチしてくれるスクーターです。
もっとも、デザインしているのはKTMやハスクバーナモーターサイクルズのデザインチーム「キスカデザイン」ですからさもありなん。スーツもソフトなルックよりも、構築的なシルエットがお似合いかと。通勤でも使いやすいスクーターですから、デイリーなスーツスタイルを究めるというのもまた一興ではないでしょうか。
もはや反則的にカッコいい。それもそのはず、こちらはランブレッタの公式垢が打ち出したプロモ画像なので、やっぱりこれくらいスカしてないとね。ただ、スーツスタイルの参考にすべきポイントもあって、例えば昨今グイグイきてるダブルブレストのチョイスやオーセンティックなローファーなど、ランブレッタ以外でも通用するテクニックでしょう。
BMW Rナインティ
BMWモーターサイクルの中でヘリテージモデルの中核を担うだけあって、ネオクラシックとしての完成度、バランスは特筆もの。扱いやすく、また望むだけのパワーを与えてくれるボクサーエンジンは他社にはないアイコニックなもの。それゆえ、スーツスタイルにとどまらず、さまざまなコーディネートが許される稀有なバイクといえるでしょう。
アドベンチャーをモデルにしたGSやカウルを装着したモデルもありますが、トレンドの「ミニマル」を表現するなら、ストックモデルを最低限なカスタムで乗りこなすのが良さげ。
たとえば、BMWのクラシックモデルでよくあるブラックにペイントするというアイデア。当時に近い塗料を使って、テロテロな仕上げがキモ。できたら、ヘルメットも同様にコーディネートすればストリートでも「地味に目立つ」ことができることでしょう。
ヘリテイジらしくモノクロをチョイスしてみましたが、やっぱりBMWは似合います。ダブルブレストを選んでいるのはトレンドを踏襲していますが、ラペル(ジャケットの襟)を適度な幅に抑えているところは「流行に乗ってるだけじゃないぜ」といった主張が伺えます。ポケットチーフの見せ方もさりげなくていい感じ。
レポート●石橋 寛 編集●中牟田歩実