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「一時停止違反」に、なる!/ならない!の境界線は?
警察庁は、毎年の交通違反の取り締まり状況を公開しています。
最新となる「令和3年中における交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」によると、同年中に全国でもっとも多く検挙された交通違反は「一時不停止」でした。(2022年9月現在)
検挙件数は年間でなんと1,588,628件で、交通違反全体の3割弱を占めています。
それだけ交差点が危険ポイントであり取り締まりも強化されているということは、裏を返せば「一時停止違反さえしなければキップを切られる確率は低くなる」ともいえますよね。
しかし「ノルマに追われた警察官の餌食になり、言いがかりをつけられてキップを切られた」という体験談が多いのも一時停止違反の特徴。
一体、警察はどんな基準で一時停止違反になる/ならないを判断しているのでしょうか?
「教習所で習った一時停止」は、法に明記されたものではない!
一時停止に関する規則を定めているのは、道路交通法第43条です。
条文中に「車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前で一時停止しなければならない」と明記されています。
また、道路標識等による停止線が設けられていない場合は、交差点の直前で一時停止しなければならないとも記されています。
ここで、自動車学校や教習所で習ったことを思い出してください。教官から「停止線を踏む直前でピタッと止まって、3秒数える」と教えられた人が多いはずです。ほかにも「停止線から1メートル以上離れたらダメ」とか「バイクは片足を地面につける」といった指導を受けた人もいるでしょう。
しかし、条文をみても「何秒止まらないと『一時停止』とはいえない」「バイクは足をつかないといけない」とか「停止線の何メートル以内の手前で止まらないといけない」といった数字や方法は明記されていません。これが一時停止違反の考え方を難しくしている原因です。
「停止線の直前で停まった」と警察官に認識させるには……!
道路交通法第43条の考え方に照らすと、正しい一時停止を判断するポイントがみえてきます。
まず注目するのは、停止線の「直前」という考え方です。直前とは、停止線を踏み越えることなく、その直前を指します。直前なのだから、厳密にみれば「線を踏んでもアウト」ですが、そこまで厳しく検挙されているわけではありません。
実際の取り締まり現場で非常に多いのが、「停止線の位置からでは先で交わる道路の見通しが悪いから、停止線を少し越えた位置で停止した」というケースです。また、自分の前を走るクルマが停止線の手前で一時停止をし、自分もそのまま前のクルマに追従して発進したといったケースもあります。これでは「直前で停止」とはいえないので、警察官に見つかってしまうとキップ処理されてしまうでしょう。
警察官は「〇メートル手前だったからセーフ」「停まったのが〇メートル手前だったからアウト」といった数字を基準にしていません。なんともファジーな話ですが、一般的な乗用車の場合であれば、運転手の視界から停止線がボンネット下にちょうど消えたくらいの距離感なら文句のつけようがないはずです。
「停まった!」と主張している人の多くが、じつは「停まっていない」という現実がある!
次に注目するのは「停止」の考え方です。停止とは、タイヤの回転が完全に止まった状態を指します。要するに「ピタッと止まる」という状態でなければ、停止とはいえません。
そんなことは常識だ!という意見が聞こえそうですが、では実際の取り締まり現場ではどうかというと、残念なことにしっかりと停止できているクルマは多くないというのが現実です。
もう飽きるほどに、停止線で止まらずにスーっと走り抜けていったクルマのドライバーから「いや、ちゃんと止まりましたよ?」と反論されてきましたが、反論してきた方のなかに正しく停止できていた人なんて一人もいません。
おそらく、減速の際にかかる車内の重力で「止まった」と錯覚するのだと思われます。30~50km/hで走っていたクルマで、停止線を目標にブレーキを踏み込んで減速していけば、徐行にあたる10km/h程度のスピードでも「止まった」と感じてしまうようです。
また、バイクも「足がつけばOK」と考えて一瞬だけ足をつけて路面を蹴るように進んでいくライダーが少なくありませんが、やはりタイヤの回転は完全に止まっていないので停止とはいえません。
一時停止違反でキップを切られたくない! 大切なのは「割り切って、これ見よがしに停まる」こと!
警察による取り調べについてトラブルや不満が多い一時停止違反。
たしかに、厳しい取り締まりがおこなわれているのも事実ですが、実際に取り締まり現場を見てきた経験から言えば、「しっかりと一時停止できていないドライバーが多い」というのも事実です。
一時停止違反でキップを切られたくないなら、ドラレコを装備して「きちんと止まった!」という証拠を確保しておくのも自衛策としては有効でしょう。しかし、ドラレコの映像がかならず有利な証拠になるとはいえません。もしかすると、自分では止まったつもりでも、実は「停止」とはいえない運転だったことが証明されてしまうかもしれないのです。
本当に一時停止違反でキップを切られたくないのなら、停止線の直前でピタッと止まる、これを実践するしかありません。
道路交通法の遵守や安全確保といったきれいごとではなく、単なる「キップを切られないためのテクニック」だと割り切って、これ見よがしにピタッと停止すれば、どんなにノルマに追われている警察官でも言いがかりのつけようがないでしょう。
要は、交差点を監視している警察官に「アレはキップを切ったら問題になるな……」と諦めさせればいいのです。
このテクニックを割り切って実践することは、結果的に交差点進入時の出会い頭事故や歩行者との接触事故の回避にもつながります。キップは切られない、交通事故にも遭わない、いいことしかないと思いませんか? 今日からできるテクニック、みなさんもぜひ実践してください。
レポート●鷹橋公宣

元警察官・刑事のwebライター。
現職時代は知能犯刑事として勤務。退職後は法律事務所のコンテンツ執筆のほか、noteでは元刑事の経験を活かした役立つ情報などを発信している。