■掃除して美化した燃焼室と、磨き終えたバルブを仮セット。エンジンを開けて作業するときは排気量問わず、この光景が良い!
思い入れのある形式のエンジン
こんにちは。カメラマンの小見です。
前回、外観中心にエンジン手を入れ、しばらくのあいだ乾燥させておきました……そこからの作業再開です。「なんちゃってチューナー」気分でバルブやカムをチェックします。
冗談はさておいて、この形式のエンジンを眺めていると……私が高校生のころ、CB50JXが新車で販売されており、ライバル車だったヤマハのRD50やスズキのRG50の中間加速にスタート直後は置いていかれるものの、後半の伸びで抜き返す、あの喜びが脳裏に! そんなおバカな街道レースっぽい青少年期の記憶がつい蘇るのも、好き物諸氏には分かっていただけると思うのです。

■白い粉(なんか物騒!)にまみれた初期状態からずいぶん綺麗になったエンジン。気が変わって部分的にバフ仕上げにするかもしれません。
ひたすらカーボンなどの汚れ落とし!
ヘッド周辺からシリンダーあたりをエアブローしてよけいな埃を飛ばしたあと、左カバーを外してクランクを回し、タイミングマークのTをケースの突起に合わせます。カムカバーを外して、カムスプロケットの○マークがシリンダーに対して真上に来ているのを確認したら、カムスプロケットのネジを外し、カムチェーンをシリンダーに落とさないよう針金でくくってカムスプロケを外すという一連の流れになりますね。
カムホルダーを外すとカムも外せます。ヘッドもプラハンで軽くたたきながらシリンダーから撤去。さて、燃焼室はどんな感じでしょう??
カムの状態にオイル焼けや傷が見られましたが、それの処置は後回しとして、ヘッドの燃焼室側とピストンヘッドの状態を見ます。まあ、それなりにカーボンが付着して黒~くなっていました。大体そんなこったろうと……と、想像していた程度の汚れ具合でした。
ピストンの頭を軽く掃除だけしておき、ウエスで保護して、ヘッド以外は別の安全な場所に保管。ヘッドのメンテに集中します。
バルブスプリングコンプレッサーで圧縮してコッター2つ(1セット)をマグネットツールでくっつけてバルブから外すと、スプリングとバルブはヘッドから分離。カーボンで黒くなったバルブの当たり面を見ると、圧縮漏れに直結しそうな欠けやキズはなさそう。これは朗報だわいと、ボール盤にバルブを取り付けて掃除と研磨を開始。指先で当たり面を意識しつつサンドペーパーの番手を変えながらバルブの汚れを落とし、最終的にはワコーズのメタルコンパウンドとウエスでピカピカに磨いて完了。燃料室もカーボンを落としたり、2つのバルブとともに吸排気ポートの汚れも落としておきます。

■分解時のキモはこの「T」マーク。エンジン左側のカバーを外すと、エンジン本体寄りにスジとマークが見えるはず。

■カムカバーを外して左側から見るとカムスプロケットに「◯」マーク。「T」マークが圧縮上死点で規定位置に来ていればカムスプロケの○は真上に来ます。

■カムスプロケットの固定ボルトとカムチェーンをクランクケースに落とさないよう注意しつつカムスプロケを外したら、カムを留めているカムホルダーを外します。このホルダーを上に外せばカムも外せます。

■ヘッドを裏返しにして燃焼室を見てみます。バルブの小さいエキゾースト側にややカーボンが集中していました。

■ピストンヘッドの汚れも、心なしかエキゾースト側に汚れが残っているのに、インレット側は剥がれたようにカーボンが少ない。なんででしょう? オイルの滲みも気になります。

■コンプレッサーでバルブスプリングを縮めて、コッターを除去。この作業を吸気側と排気側それぞれ、つまりバルブ2つ分行い、バルブをヘッドから外します。これが単気筒でも4バルブになると作業量が倍になります。

■擦り合わせに必要なバルブコンパウンドを友人から借用。粗めと細めが上下にくっついた効率的な缶に入っている。

■年代物のボール盤だが、バルブも負けじと黒い。

■「ほ~ら、どうだいジョニー。もう綺麗になったよ!」(海外通販番組風)

■メタルコンパウンドをウエスに付け、しつこく磨きます。バルブステムのウエスト加工(くびれてる部分)もここからしつこく磨いておきました。
EX側バルブ径よりタコ棒が小さく外れやすいので……
掃除作業が終わったら、バルブコンパウンドで当たり面の幅を見ながら擦り合わせの工程へ。作業の流れを一気に書いてますが、本業の合間を見ながらなので実際は一気に1日で終えることはできませんでした。
擦り合わせで少し困ったのは、インレット(キャブに繋がる吸気側)は良しとして、エキゾースト(マフラーに向かう排気側)のバルブ径が小さくて、タコ棒の吸盤ですら何度も外れてしまい、シート面にたたきつけてカンカンやる擦り合わせ方式がとてもやりにくかったこと。「こりゃ困ったな~」と頭をひねったところ、ドリルをカム側からバルブステムに噛ませ、ヘッドを逆さまにしながらドリルの自重でバルブをシートに押し付けてドリルをちょこっと回すという、少しインチキ気味な策を思いつきました。と言っても長時間やるのは不安なので、キュイン、キュイン!と回数を分けて様子を見ながらバルブをシート面に押し付けるようドリルを回してみた次第。
バルブコンパウンドの跡と当たり面を見るとまあまあ綺麗になったので、ヘッドとバルブを清掃。
次は劣化したステムシールの交換です。
あらかじめ新品を取り寄せておいたので、ラジオペンチで古いステムシールを撤去し、新品をそ~っと位置決めして優しくバルブガイドに押し込み、セット終了。バルブにオイルを塗布してガイドに通し、分解と逆の手順でバルブスプリングをコンプレッサーで縮めてコッターを組み付けます。最後に軽くプラハンでバルブスプリングのテッペンをたたき、コッターのズレなど確認して落ち着いたようならバルブ周りの作業は終了。

■古いタコ棒の吸盤が割れたので新品のタコ棒を買って擦り合わせ開始。インレットのバルブ径では、まあまあ作業しやすかったのですが……

■径の小さいエキゾースト側バルブで予想外に難航。吸盤がすぐ外れちゃう。

■なんとなく投げやりになって数日後、思いついた方法を実行してみました。通常の電動ドリルを取り出して準備開始。

■内燃機屋さんにある“ミラー”の台座みたいに、傾斜セットできる台なんてないので、片手でヘッドを保持。燃焼室を上にしてバルブをセットしたら、裏側からバルブステムにドリルを噛ませてキュイーン! ドリルの自重でバルブをバルブシートに押し付けようというアバウトな発想。

■これでダメだったら腕利きの内燃機屋さん行きだなと当たり面を見てみると、まあまあ大丈夫そう。いちおう走れるでしょう。
手磨きでカムシャフトの荒れを修正
傷と汚れの多かったカムシャフトは、もしかすると後日変えるかもしれないということと、修正で何とかなりそうとの判断から、手作業で表面の荒れを修正。
ひたすら600番のペーパーで研ぎまくり、1000番に切り替えて様子を見ると、ずいぶん綺麗になったようです。ご生前サーキットで何度もお見かけしたPOPヨシムラのおやじさんを思い出しつつ、せっせとカム磨きです。
世間のイヤなニュースも何もかも忘れて没頭できる時間と言えます。

■オイル量が少ない状態で走り回ったのか、はたまた変色している部分と地肌色の差は長時間そこだけ当たっていたからなのでしょうか?

■クリーナーで汚れを落として再度確認してみます。磨き直しでどこまでツルツルになるのか、逆に試してみたくなりました。

■カムを研磨する機械はないので、ひたすら600番で磨き倒します。やっぱり指紋がなくなりました。

■深めのキズ以外落とせたので、高性能オイルを使用できれば、それでヨシ!と、ここらで作業を終了。自分の執念深さのせいで指先が数日痛いままでした。
逆順で組み付け!で、ひとまずエンジンは終了
カムの状態がだいぶ良くなったところで、ヘッドの組み立てへ。
クランク(ダイナモ外周)のタイミングマークTとカムスプロケの合いマークを合わせ、カムチェーンを掛けてカムスプロケットを固定したら、カムチェーンテンショナーの張りを確認してヘッドカバーを装着。
エンジン横のダイナモカバーのガスケットも新品に交換し、固定します。
フレームに積んだあとで行うと面倒なので、エキパイを留めるスタッドの6mmネジのサビを落とす意味もあり、ダイスを通しておきました。これでマフラー取り付けの際にもスタッドにナットをかまして回すのがスムースになるはず。ダイスを使用するためのハンドルが入りにくかったため、ひと工夫してサークリッププライヤーをダイスの穴に突っ込んでダイス作業。フィンによる干渉を気にせず、ダイスがスルスル回って快適にできました。
次にキャブの復旧作業を考えていたので、シリンダーヘッドとキャブを繋ぐ部分の純正ガスケットにPC20の内径に合わせて拡大しとけ!のメモをガスケットのパックに記入し、ひとまずエンジンは終了。(続く)

■バルブの先端近くに位置するステムシール。ここが破れるとオイルが上がってトラブルの元になります。小さくても大事な部品なので交換!

■古くて硬くなったステムシールを新品へ。古いのはテキトーにつまんで除去しても、新品は金属のクリップを歪めないよう大事に取り付けます。

■この後、バルブの乗っているジャーナル部にも軽く磨きを入れ、組みつけ工程の支度にかかります。

■吸排気ポートも、明るく爽やかにお掃除。今回はポート研磨まではやらなくてもよかろう。

■エキパイを留めるスタッドボルトは、まだヘッドから苦心なしに抜けそうで、ダイスを通すとこれまたすんなり回るので再利用。だが、ダイスハンドルは使えないため、最初はこの手のプライヤーで回してみました。

■もっと効率よく回せないもんかね?と工具箱を見ればちょうどよさそうなのがいました。サークリッププライヤーをダイスに穴に突っ込めば、小スペースで回せてOK。

■これぞキタコのピストン。「SPL82」って書いてありますが88ccではないのかな。程度は良いので、ここまでカーボンを落として、次に開けるときに実験を目論みます。

■さあ、バルブスプリングを取り付けて、バルブをセットします。

■スプリングとコッターが収まったら、頭をプラハンで少しコンコン。

■シリンダーヘッドを乗せる前に、ガスケットに赤い液体パッキンも塗っておきました。

■組み立てのときもバラしの逆ですが、タイミングマークで圧縮上死点を合わせます。

■ヘッドを乗せてカムをホルダーで固定、カムスプロケットの「○」マークが上に来るように合わせてチェーンをかけて各部ネジ止め。カムチェーンを後ろとヘッド左後方で調整するのも忘れずに。

■やあ、ヘッドの取り付けが終わりました。茶色いオイル汚れがなくなりとても気分が良いです。

■バルブクリアランスを確認してみると、ホンダさん規定の数値とほぼ変わらず。前オーナーの調整が良かったのでしょう。ロッカーアームのアジャストスクリューを少し回して、緩みの確認をした程度で終了。

■エンジン左側とケースカバーの古いガスケットは、車体の劣化同様しつこいものでした。ここで取っておきの“職人スクレーパー”を投入。熱交換器や巨大ボイラーを扱う知人が分けてくれた、材料を研いで作ったスクレーパー。とても硬くてナイフの材料みたいな素材か?という便利グッズ。

■ダイナモ側のガスケットは当然新品を用意。座面もオイルストーンで研ぎました。

■キャブ側のマニホールド接合部ガスケットはカッターですんなり。どうせこうなると思い、ポート内だけマスキング。ガスケットをマスカー代わりに。

■このエイプが純正キャブからPC20になっていたため、純正ガスケットは後日拡大しておくべし。忘れないようにマジックで書いておきました。

■これがその“PC20”なんですがね……。定評あるキャブなのに、こんなガビガビになっちゃってますよ(泣)!
レポート&撮影●小見哲彦
プロフィール●小見哲彦
無類のバイク好きカメラマン。
大手通信社や新聞社の報道ライダーとしてバイク漬けになった後、写真総合会社にて修行、一流ファッションカメラマン、商品撮影エキスパートのアシスタントを経て独立。神奈川二科展、コダック・スタジオフォトコンテスト等に入選。大手企業の商品広告撮影をしつつも、国内/国外問わず大好きなバイクを撮るように。『モーターサイクリスト』誌ほか多数のバイク雑誌にて撮影。防衛関係の公的機関から、年間写真コンテストの審査員と広報担当人員への写真教育指導を2021年より依頼されている。
○「ダートラマシン風に仕上げる!」潮風に当たったエイプをメンテ&カスタム!━━1【プロカメラマンの作業記録】
https://mc-web.jp/life/152961/
○「サビを落とせば新たな野望が!」潮風に当たったエイプをメンテ&カスタム!━━2【プロカメラマンの作業記録】
https://mc-web.jp/life/156238/
○「全バラでのフレーム塗装が必要」潮風に当たったエイプをメンテ&カスタム!━━3【プロカメラマンの作業記録】
https://mc-web.jp/life/160229/
○「ホイールを金色に塗れば気分が高揚!」潮風に当たったエイプをメンテ&カスタム!━━4【プロカメラマンの作業記録】
https://mc-web.jp/life/160463/
○「白粉吹くエンジンを美しい銀色に!」潮風に当たったエイプをメンテ&カスタム!━━5【プロカメラマンの作業記録】
https://mc-web.jp/life/168644/





































