「バルブ小さく、タコ棒が外れて困ったな」潮風に当たったエイプをメンテ&カスタム!━━6【プロカメラマンの作業記録】

分解時のキモはこの「T」マーク。エンジン左側のカバーを外すと、エンジン本体寄りにスジとマークが見えるはず。
カムカバーを外して左側から見るとカムスプロケットに「◯」マーク。「T」マークが圧縮上死点で規定位置に来ていればカムスプロケの○は真上に来ます。
カムスプロケットの固定ボルトとカムチェーンをクランクケースに落とさないよう注意しつつカムスプロケを外したら、カムを留めているカムホルダーを外します。このホルダーを上に外せばカムも外せます。
ヘッドを裏返しにして燃焼室を見てみます。バルブの小さいエキゾースト側にややカーボンが集中していました。
ピストンヘッドの汚れも、心なしかエキゾースト側に汚れが残っているのに、インレット側は剥がれたようにカーボンが少ない。なんででしょう? オイルの滲みも気になります。
コンプレッサーでバルブスプリングを縮めて、コッターを除去。この作業を吸気側と排気側それぞれ、つまりバルブ2つ分行い、バルブをヘッドから外します。これが単気筒でも4バルブになると作業量が倍になります。
擦り合わせに必要なバルブコンパウンドを友人から借用。粗めと細めが上下にくっついた効率的な缶に入っている。
年代物のボール盤だが、バルブも負けじと黒い。
「ほ~ら、どうだいジョニー。もう綺麗になったよ!」(海外通販番組風)
メタルコンパウンドをウエスに付け、しつこく磨きます。バルブステムのウエスト加工(くびれてる部分)もここからしつこく磨いておきました。
古いタコ棒の吸盤が割れたので新品のタコ棒を買って擦り合わせ開始。インレットのバルブ径では、まあまあ作業しやすかったのですが……
径の小さいエキゾースト側バルブで予想外に難航。吸盤がすぐ外れちゃう。
なんとなく投げやりになって数日後、思いついた方法を実行してみました。通常の電動ドリルを取り出して準備開始。
内燃機屋さんにある“ミラー”の台座みたいに、傾斜セットできる台なんてないので、片手でヘッドを保持。燃焼室を上にしてバルブをセットしたら、裏側からバルブステムにドリルを噛ませてキュイーン! ドリルの自重でバルブをバルブシートに押し付けようというアバウトな発想。
これでダメだったら腕利きの内燃機屋さん行きだなと当たり面を見てみると、まあまあ大丈夫そう。いちおう走れるでしょう。
オイル量が少ない状態で走り回ったのか、はたまた変色している部分と地肌色の差は長時間そこだけ当たっていたからなのでしょうか?
クリーナーで汚れを落として再度確認してみます。磨き直しでどこまでツルツルになるのか、逆に試してみたくなりました。
カムを研磨する機械はないので、ひたすら600番で磨き倒します。やっぱり指紋がなくなりました。
深めのキズ以外落とせたので、高性能オイルを使用できれば、それでヨシ!と、ここらで作業を終了。自分の執念深さのせいで指先が数日痛いままでした。
バルブの先端近くに位置するステムシール。ここが破れるとオイルが上がってトラブルの元になります。小さくても大事な部品なので交換!
古くて硬くなったステムシールを新品へ。古いのはテキトーにつまんで除去しても、新品は金属のクリップを歪めないよう大事に取り付けます。
この後、バルブの乗っているジャーナル部にも軽く磨きを入れ、組みつけ工程の支度にかかります。
吸排気ポートも、明るく爽やかにお掃除。今回はポート研磨まではやらなくてもよかろう。
エキパイを留めるスタッドボルトは、まだヘッドから苦心なしに抜けそうで、ダイスを通すとこれまたすんなり回るので再利用。だが、ダイスハンドルは使えないため、最初はこの手のプライヤーで回してみました。
もっと効率よく回せないもんかね?と工具箱を見ればちょうどよさそうなのがいました。サークリッププライヤーをダイスに穴に突っ込めば、小スペースで回せてOK。
これぞキタコのピストン。「SPL82」って書いてありますが88ccではないのかな。程度は良いので、ここまでカーボンを落として、次に開けるときに実験を目論みます。
さあ、バルブスプリングを取り付けて、バルブをセットします。
スプリングとコッターが収まったら、頭をプラハンで少しコンコン。
シリンダーヘッドを乗せる前に、ガスケットに赤い液体パッキンも塗っておきました。
組み立てのときもバラしの逆ですが、タイミングマークで圧縮上死点を合わせます。
ヘッドを乗せてカムをホルダーで固定、カムスプロケットの「○」マークが上に来るように合わせてチェーンをかけて各部ネジ止め。カムチェーンを後ろとヘッド左後方で調整するのも忘れずに。

やあ、ヘッドの取り付けが終わりました。茶色いオイル汚れがなくなりとても気分が良いです。
バルブクリアランスを確認してみると、ホンダさん規定の数値とほぼ変わらず。前オーナーの調整が良かったのでしょう。ロッカーアームのアジャストスクリューを少し回して、緩みの確認をした程度で終了。
エンジン左側とケースカバーの古いガスケットは、車体の劣化同様しつこいものでした。ここで取っておきの“職人スクレーパー”を投入。熱交換器や巨大ボイラーを扱う知人が分けてくれた、材料を研いで作ったスクレーパー。とても硬くてナイフの材料みたいな素材か?という便利グッズ。
ダイナモ側のガスケットは当然新品を用意。座面もオイルストーンで研ぎました。
キャブ側のマニホールド接合部ガスケットはカッターですんなり。どうせこうなると思い、ポート内だけマスキング。ガスケットをマスカー代わりに。
このエイプが純正キャブからPC20になっていたため、純正ガスケットは後日拡大しておくべし。忘れないようにマジックで書いておきました。
これがその“PC20”なんですがね……。定評あるキャブなのに、こんなガビガビになっちゃってますよ(泣)!
白い粉(なんか物騒!)にまみれた初期状態からずいぶん綺麗になったエンジン。気が変わって部分的にバフ仕上げにするかもしれません。
掃除して美化した燃焼室と、磨き終えたバルブを仮セット。エンジンを開けて作業するときは排気量問わず、この光景が良い!

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