時代を先取りしすぎたCB400FOUR。400㏄クラスマルチ全盛の時代を迎えた80年代初頭、ホンダはよりグレードアップした「CBX400F」で、再び王座を狙う!
※当ページは別冊モーターサイクリスト39号(1982年1月号)に掲載された試乗インプレッションを修正し掲載したものです。価格などは当時のものが記載されております、ご注意ください。
■2順目のバッター
1972年、ホンダはCB750(1969年)、CB500(1971年)に続く、第3の4気筒エンジンとしてCB350Fを発表したが、それはスーパースポーツというより、ハイクオリティな大人のツーリングMCといった色合いが濃かった。性能的にみても、CB350ツインに対して、特に優位に立つこともなく、ひたすらスムーズで軽い走りをするMCで、若者にアピールする要素は少なかった。
当時(編集部注:’70年前後)は免許制度が現在と異なり、400㏄までの区分がなかったためもあり、このおとなしい自動2輪の売れ行きはかんばしいものではなかった。そこでホンダのとった作戦は、400㏄への排気量アップと、徹底的なデザイン変更によるーパースポーツ化であった。これが現在でも名車と呼ばれるCB400FOURの誕生であり、同時に日本特有の400㏄クラスの活発化にも拍車がかかった。
しかし、この人気車種CB400FOURは比較的短命に終わることになる。ホンダ自身によれば「7年前は、暴走族、公害、省エネなどの社会問題があり、MCにとっては厳しい状況だった。スーパースポーツCB400FOURが名車といわれながら、我々の期待ほどに売れなかったのは、社会環境によるところも大きかった」。
そこで時代の要求に応えて、ホンダは 1977年に2気筒3バルブのホークを発表した。アメリカンからスーパースポーツまで揃ったホークシリーズは一応の成功を収め、400㏄ブームは改正された免許制度にも助けられ、大きく伸びた。
そのブームの中で他社は、SOHCツインのホンダに4気筒で対抗し、カワサキ=Z400、ヤマハ=XJ400、スズキ=GSX400Fと市場には400㏄マルチがあふれることになり、このクラスに駒を持たないのは、中型マルチの元祖ホンダだけという皮肉なことになってしまった。
ホンダファンのCB400Fをなつかしむ声は高くなり、中古車市場では新車価格を上まわるものさえ出るありさまだった。そうなればファンがホンダのニューマルチを期待しないほうがおかしく、ここ1〜2年、6気筒だ、いやVだ と外野の声は高まるばかりだった。 そんな喧喋(けんそう)の中、CBX400Fは東京モーターショーで、ファンの前に姿を現わした。
今さらいうまでもないが、エンジンは DOHC4気筒であり、ここにいたって、4社まったく同じ土俵に上がったわけだ。 今度はCBX400Fが最後発のDOHCフォアということになる。
「最初に400フォアを出したウチとしては、 2順目のトップバッターだと思っている。 そのためには、他社と同じものではだめで、持てる技術のすべてを注ぎ込んで、コンパクト、軽量、ハイパワーを追求した」(ホンダ技術陣)
400フォアを野球の打者にたとえたわけだ。同じピッチャーを相手にして打つなら、2度目にはそれなりの策を持たなければプロではない、ホンダはそういいたかったのだろうか。
■機は熟成した
「合理性だけを追求するのでなく、豊かで、ある程度自由なことをやっていいのが現代だと思う。そこで、400㏄市場に 刺激を与えてリードするには、遠慮はいらないのではないか。走り に徹したCBX 400Fも、今の時代なら受け入れてくれるだろう」
これが開発意図であり、結果としてCBX400Fは、400㏄としては最高の48psの出力と、インボードベンチレーテッドディスクブレーキ、プロリンクサスペンションなどの最新技術を満載しながら、173 kgの軽さで登場したわけだ。
もちろん、エンジン、ブレーキ、サスペンションのすべてが、完全に新設計であり、細かいスペックを注視するまでもなく、ひと目で新しいとわかる外観を持っている。
色彩の派手さと新機構の数々は、十分アピールするものの、CB400Fが持つフォルムそのものの独自性には、やや弱いといえるかもしれない。
775mmという低いシートに腰を降ろすと、170㎝のテスターだと十分な足つき性が確保されていることがわかる。低いハンドルはグリップラバー外側までで69㎝弱で、シートに近いため全体に上半身はピチッと決まり、実際以上にCBXを小柄なMCと感じさせているようだ。これは走りだしてからもかわらず、取りまわしやすさにもつながっている。
ライダーの目から見るハンドルまわりの豪華さは、CB750FやCBXと同等のもので、ジュラ鍛のセパレートノハンドルや中央に燃料計を配した、各種警告灯付きのメーターパネルは、400㏄クラス一のグッドデザインだ。
前後、特に後方からこのMCを見ると、今までになかったものを発見できる。それはウインカーをテールランプと一体に組み込んで、スッキリさせてしまったことで、前方の55/60Wのハロゲンランプをはさんで独立したウインカーの灯間も、従来より狭い。