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【カワサキZ1300(1979)】回顧試乗。もうひとつの国産並列6気筒はツアラー路線で生き残った

■写真はZ1300にDFI(デジタルフューエルインジェクション)が初搭載された’84年式のZG1300A

開発コンセプト「水冷6気筒、シャフトドライブ」が別路線での成功につながった並列6気筒

カワサキは、大ヒットしたZ1シリーズの次なる旗艦スポーツとして、数々のアイデアを模索した。市販化に至らなかったものとして、2ストスクエア4気筒モデル、水冷ツインロータリーエンジンの「X99」などがトライされたが、排ガス規制での問題のほか、量産に至る信頼性を確保できずお蔵入りとなった。

そして次のアイデアとして開発され、海外市場向けに市販化に至ったのが、カワサキ量産車初の並列6気筒搭載車「Z1300」だった。「水冷6気筒、シャフトドライブ」が当初から開発コンセプトとされた同車は、並列6気筒の形式はCBXと同じながら、想像以上に異なるテイストを持つ乗り味を実現。開発コンセプトが功を奏したのか、スーパースポーツ的な当初の立ち位置とは異なるツアラー路線で生き残ることとなった。

そんなZ1300は、実際どんな乗り味だったのかを紹介しよう。

’78年の独ケルンショーで発表され’79モデルとして海外市場で市販された初期モデルのZ1300(A1)
初期モデルのZ1300(A1)。’84年型でFI化されるまでは、ライダーの車体ホールドへの干渉を避けるべくスリムさをねらい、専用のミクニ製BS型の2バレル3蓮式キャブレターを採用した

巨艦なのに手強くない、アップライトな上体姿勢と良好な足着き性のGTクルーザー

「これほど巨大なのに、またがっても不安な感じがない」。それがZ1300の第一印象だった。両足はべったりと着き、ホンダのゴールドウイングを思わせた。重量は確かにズシリとしているが、どちらかに倒れてしまうという感じはしない。CBXに乗った感覚と比較すると、余計に重心の低さを感じたのかもしれない。

試乗車はDFI(デジタルフューエルインジェクション)が初搭載された’84年式モデル(機種コード:ZG1300A)

そして走り出してみると、両車を比較すること自体が間違っていると感じ始めた。クラッチミートして、発進する。クーッと後輪が持ち上がり(シャフトドライブ特有の挙動だ)、ジワッと巨体が前に進み出した。おとなしく、しかしドロドロとエンジンが回転する。エンジンからしてCBXのような軽快さはなく、運動性もドロドロとしている。

Z1300のオーナー氏曰く「コーナーリング中に変速などしようものなら、シャフトのクセが出て吹っ飛びそうになるし、寝かした時に気をつけないと車重に負けて滑ることもある」と。そんなコメントを聞いていたから、派手に攻めようという気は起きないが、穏やかに流していれば、そうした横暴さはまったく顔を出さない。

一方で、直進での安定感に関しては申し分がない。たとえ高速道路で大型トレーラーがすぐ脇を走り抜けようと、我関せずという雰囲気である。車体の運動性もエンジンの回り方も、ツアラーを意識させる作りなのだ。

前述したゴールドウイングのような乗車フィーリングは、走り出しても感じる。ただし、エンジンの回り方はゴールドウイングの水平対向6気筒より野性的というか、若干粗雑さのあるもの。高回転域まで引っ張っていっても、“ドロドロ感”が、“デュロデュロ感”に変わる程度で、ドラマチックな印象ではない。よくも悪くもツアラーなのである。現代のツアラーほどのハイペースは望めないだろうが、高速長距離走行でも疲れを感じさせないだろうと感じた。

Z1300(左)、CBX(右)

カワサキとしては当初、Z1に次ぐフラッグシップモデルとして、このZ1300を開発したはずだが、結果的にそうはならなかった。排気量にふさわしい安定感、信頼性が重視された末、結果としてこの水冷並列6気筒は車体を成長させつつフルドレスツアラーのボエジャーなどに転用されていったのだ。

それは当初にメーカー側が意図した方向ではなかろうが、その後Z1300は意外にも89年まで生き残る。だが、後期のカタログラインアップでは、重量級スーパースポーツというアピールはされていない。すでに4バルブ4気筒の水冷パワーユニットが登場しており、それを搭載したGPZ900RやGPz1000RXらがスーパースポーツの役割を担ったからだ。

意図から外れたところではあったが、1300cc6気筒ユニットは着実な支持を得られたモデルと言えるだろう。それはメーカーの初期のねらいではなく、ユーザーに別な位置づけで評価されて生き残ったからだが、自分自身、試乗前のイメージとは別のところで、楽しさを発見したように思った。

Z1300(ZG1300A・’84年モデル)
Z1300(ZG1300A・’84年モデル)
Z1300(ZG1300A・’84年モデル)

■航続距離をなるべく長く取れるよう採用された大型の27Lフューエルタンクに圧倒されるZ1300。水冷6気筒のエンジンはシリンダーピッチが詰められ、ラジエターに覆われているため、CBXよりもエンジンの主張は控えめだ。なお試乗車は欧州仕様のため27Lタンクにローハンドルの組合せだが、北米仕様は21.4Lタンク+アップハンドルが標準だった。なお、本文でも紹介したように撮影・試乗車はカワサキ独自のDFIを採用し、シリーズ中で最も高い最高出力を誇った130ps仕様のZG1300A(’84年モデル)。

Z1300(ZG1300A/1984)の各部紹介

Z1300用に新開発された1286cc水冷並列6気筒はボア・ストローク62×71mmで、このロングストローク型がCBX(64.5×53.4mmの1047cc)との回転感の違いを生み、ボアピッチを限界まで詰めたことで大排気量6気筒にしてはスリムなエンジン幅を実現
水冷化したエンジンを象徴するフィンのない表面のすっきりした外観。シリンダーの前傾角が少なく直立気味なのは、その前に配置される大型ラジエターと前輪との干渉を避ける意図もあった
’83年型のボイジャー(ZN1300)で先行採用されたDFIを、’84年型でZ1300にも採用。6本のインジェクターを装備し、ハンドルスイッチにより2段階の噴射量調整が可能な仕組みとなっていた
角形ケースへ収められた計器類。左に速度、右に回転計。その間の上側に燃料計、下側に水温計。メーター下のキーシリンダーには電源オンオフのほか、ハンドルロック、パーキング機能も装備
左側操作系は、一番上にヘッドライトハイ/ロー、中間にエレクトロニッククルーズコントロール機構、ウインカーやホーン&パッシングスイッチを配置。ほかにファーストアイドル機構も装備
右操作スイッチは、キル、ヘッドライト、スターターボタンを配置
燃料タンクは写真の欧州仕様が27L、米国仕様が21.4Lとされ、それに合わせてポジションもそれぞれの仕様に最適化されている
左サイドカバーのキーシリンダーで開閉する横開きのシート。テール部に収納スペースを確保
質実剛健な7本スポークのキャストホイールは、Z1300のキャラクターにうまくマッチしている。リヤのエアショックユニットは’81年型より採用されたもので、5段階の減衰調節が可能
ヘッドライト下のカワサキロゴ部分はホーンカバー。一見するとオイルクーラーのような冷却フィン状のデザインをしているが、この四角いカバー内にホーンが収められている
右側配置のシャフト駆動はカワサキ初の試みで、ほぼ同時期のZ1000STにも採用。大パワーに対応するには当時チェーンでは耐久性に難ありとの判断で、開発初期からこの方式が決められていた
Z1300シリーズの6気筒を先にFI化し1983年に登場したZN1300ボイジャーは、より軽量で運動性能の高い4気筒のボイジャーⅫ(’86〜)と併売されつつ’88年まで存続。エンジンのキャラクター的にはこうしたグランドツアラーにマッチしていたとも言える

カワサキKZ1300 主要諸元(’79モデル)

■エンジン 水冷4サイクル並列6気筒DOHC2バルブ ボア・ストローク62×71mm 総排気量1286cc 圧縮比9.9 キャブレターミクニ32mm径BSダブルスロート×3 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力120hp/8000rpm 最大トルク11.8kgm/6500rpm
■変速機 5段リターン 1速2.294 2速1.667 3速1.280 4速1.074 5速0.931 1次減速比1.841 2次減速比2.651
■寸法・重量 全長2302 全幅887 全高1167 軸距1587 シート高809(各mm) キャスター28°30′ トレール102mm タイヤF110/90-18 R130/90-17 乾燥重量296kg
■容量 燃料タンク21.4L(or27L) オイル4.6L
■価格 1万2000マルク(’79年当時のドイツ価格)

レポート●阪本一史  フォト●山内潤也、八重洲出版アーカイブ

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