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■写真はZ1300にDFI(デジタルフューエルインジェクション)が初搭載された’84年式のZG1300A
開発コンセプト「水冷6気筒、シャフトドライブ」が別路線での成功につながった並列6気筒
カワサキは、大ヒットしたZ1シリーズの次なる旗艦スポーツとして、数々のアイデアを模索した。市販化に至らなかったものとして、2ストスクエア4気筒モデル、水冷ツインロータリーエンジンの「X99」などがトライされたが、排ガス規制での問題のほか、量産に至る信頼性を確保できずお蔵入りとなった。
そして次のアイデアとして開発され、海外市場向けに市販化に至ったのが、カワサキ量産車初の並列6気筒搭載車「Z1300」だった。「水冷6気筒、シャフトドライブ」が当初から開発コンセプトとされた同車は、並列6気筒の形式はCBXと同じながら、想像以上に異なるテイストを持つ乗り味を実現。開発コンセプトが功を奏したのか、スーパースポーツ的な当初の立ち位置とは異なるツアラー路線で生き残ることとなった。
そんなZ1300は、実際どんな乗り味だったのかを紹介しよう。


巨艦なのに手強くない、アップライトな上体姿勢と良好な足着き性のGTクルーザー
「これほど巨大なのに、またがっても不安な感じがない」。それがZ1300の第一印象だった。両足はべったりと着き、ホンダのゴールドウイングを思わせた。重量は確かにズシリとしているが、どちらかに倒れてしまうという感じはしない。CBXに乗った感覚と比較すると、余計に重心の低さを感じたのかもしれない。

そして走り出してみると、両車を比較すること自体が間違っていると感じ始めた。クラッチミートして、発進する。クーッと後輪が持ち上がり(シャフトドライブ特有の挙動だ)、ジワッと巨体が前に進み出した。おとなしく、しかしドロドロとエンジンが回転する。エンジンからしてCBXのような軽快さはなく、運動性もドロドロとしている。
Z1300のオーナー氏曰く「コーナーリング中に変速などしようものなら、シャフトのクセが出て吹っ飛びそうになるし、寝かした時に気をつけないと車重に負けて滑ることもある」と。そんなコメントを聞いていたから、派手に攻めようという気は起きないが、穏やかに流していれば、そうした横暴さはまったく顔を出さない。
一方で、直進での安定感に関しては申し分がない。たとえ高速道路で大型トレーラーがすぐ脇を走り抜けようと、我関せずという雰囲気である。車体の運動性もエンジンの回り方も、ツアラーを意識させる作りなのだ。
前述したゴールドウイングのような乗車フィーリングは、走り出しても感じる。ただし、エンジンの回り方はゴールドウイングの水平対向6気筒より野性的というか、若干粗雑さのあるもの。高回転域まで引っ張っていっても、“ドロドロ感”が、“デュロデュロ感”に変わる程度で、ドラマチックな印象ではない。よくも悪くもツアラーなのである。現代のツアラーほどのハイペースは望めないだろうが、高速長距離走行でも疲れを感じさせないだろうと感じた。

カワサキとしては当初、Z1に次ぐフラッグシップモデルとして、このZ1300を開発したはずだが、結果的にそうはならなかった。排気量にふさわしい安定感、信頼性が重視された末、結果としてこの水冷並列6気筒は車体を成長させつつフルドレスツアラーのボエジャーなどに転用されていったのだ。
それは当初にメーカー側が意図した方向ではなかろうが、その後Z1300は意外にも89年まで生き残る。だが、後期のカタログラインアップでは、重量級スーパースポーツというアピールはされていない。すでに4バルブ4気筒の水冷パワーユニットが登場しており、それを搭載したGPZ900RやGPz1000RXらがスーパースポーツの役割を担ったからだ。
意図から外れたところではあったが、1300cc6気筒ユニットは着実な支持を得られたモデルと言えるだろう。それはメーカーの初期のねらいではなく、ユーザーに別な位置づけで評価されて生き残ったからだが、自分自身、試乗前のイメージとは別のところで、楽しさを発見したように思った。



■航続距離をなるべく長く取れるよう採用された大型の27Lフューエルタンクに圧倒されるZ1300。水冷6気筒のエンジンはシリンダーピッチが詰められ、ラジエターに覆われているため、CBXよりもエンジンの主張は控えめだ。なお試乗車は欧州仕様のため27Lタンクにローハンドルの組合せだが、北米仕様は21.4Lタンク+アップハンドルが標準だった。なお、本文でも紹介したように撮影・試乗車はカワサキ独自のDFIを採用し、シリーズ中で最も高い最高出力を誇った130ps仕様のZG1300A(’84年モデル)。
Z1300(ZG1300A/1984)の各部紹介












カワサキKZ1300 主要諸元(’79モデル)
■エンジン 水冷4サイクル並列6気筒DOHC2バルブ ボア・ストローク62×71mm 総排気量1286cc 圧縮比9.9 キャブレターミクニ32mm径BSダブルスロート×3 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力120hp/8000rpm 最大トルク11.8kgm/6500rpm
■変速機 5段リターン 1速2.294 2速1.667 3速1.280 4速1.074 5速0.931 1次減速比1.841 2次減速比2.651
■寸法・重量 全長2302 全幅887 全高1167 軸距1587 シート高809(各mm) キャスター28°30′ トレール102mm タイヤF110/90-18 R130/90-17 乾燥重量296kg
■容量 燃料タンク21.4L(or27L) オイル4.6L
■価格 1万2000マルク(’79年当時のドイツ価格)
レポート●阪本一史 フォト●山内潤也、八重洲出版アーカイブ

































