ヒストリー

【カタナヒストリー】カタナはなぜ「名車」に成り得たのか。初代GSX1100Sから最新型KATANAまでを振り返る

1981年に世にリリースされ、生産終了から長い時が経つが今なお絶大なる人気を誇る旧型カタナシリーズ。世のバイク乗りならば誰しもが知っているであろう伝説のカタナたちを、今回は振り返っていこう。

追記2022年1月27日:目次の追加、写真の配置調整、スペック表記の統一などを行いました。

今も語り草となる「ケルンの衝撃」

スズキ初の4ストローク並列4気筒エンジンとなるGS750はDOHC2バルブヘッドを採用して1976年に登場。2年後にはGS1000を完成させ、AMAスーパーバイクで常勝マシンとして名を馳せる。

1979年、4バルブ化しつつ吸気効率を向上させる新技術、2渦流燃焼室TSCCを装備したGSX1100Eを生み出す。

日本ではGSX750Eが発売されるが、これについた俗称は「べこ」、牛である。当時、スズキは他を圧倒する高性能マシンを持っていたが、外観は決して洗練されたものではなく、それはスズキにとっても解決すべき問題点だった。

そんな折、スズキはドイツのデザインコンペに出品されたターゲットデザインの作品に活路を見出しデザインを依頼、生まれたのがGSX1100Sカタナだ。

1980年のケルンショーで初公開され、これまでの市販二輪車の常識にとらわれない造形、日本刀をモチーフとしたシャープな曲線が描くフォルムに人々は賛否両論まっぷたつ!

日本刀をモチーフにしたカタナのデザインスケッチ。実車では高速域での風圧を低減すべくスクリーンが追加されて、シート形状も変更するなど、フォルムを極力崩さないように細心の注意を払いながらの修正が加えられた。

二輪車の造形設計、すなわちデザインはカタナ以前と以後に分かれるといって過言でない。それまでのバイクは、レースでの必然性から生まれたカウルが市販車に装着されるようになってからも、デザインは空力性能最優先であり、美しさや格好良さだけを追求したものは皆無。

良く言えば機能美、悪く言えば無骨に過ぎた。

しかしカタナは違った。ヘッドライトを覆うカウルから燃料タンクにかけての緩やかな弧で描く鋭角なラインが現す刃の美しさ。シートを斜めのラインで色分けすることで示した柄。バイクの上半身で日本刀を模した発想と表現力に、世界の価値観は一変した。

それが「ケルンの衝撃」である。
 

1980年「プロトタイプ発表、既成概念を覆した革新的デザイン」

造形設計を手掛けたのはハンス・ムートが率いるターゲットデザインで、1980年のケルンショーで初公開された。原型となったのは、前年にドイツの二輪誌が主催したデザインコンペのためターゲットデザインがMVアグスタの依頼で製作した「Rosso Raptor」で、低く構えた流麗な上半身の造形はそのままに日本刀のモチーフを追加。スズキのフラッグシップスポーツと意欲的なデザインが融合して生み出された。
 

1981年「GSX1100Sカタナ登場、プロトタイプのイメージをそのままに市販化」

ケルンの衝撃の翌年に市販された初代GSX1100Sカタナは、プロトタイプとほぼ同じ造形で1981年に登場。大きな変更点はスクリーンの追加である。1074cc空冷並列4気筒DOHC4バルブエンジンはGSX1100Eと同型ながら、チューンアップによって最高出力を111馬力まで高められ最高速度は230km/h以上を誇る。

日本でも逆輸入車が入手可能ではあったが、59万8000円だった750Sに対し1100Sはその2〜3倍以上の値が付けられ、多くのライダーにとって高嶺の花だった。

左が1100Sで右はGSX1000S。1000SはAMAスーパーバイクのレギュレーションに合致させるためエンジンをボアダウン(72.0→69.4mm)し排気量を998ccとしたモデルだが、AMAやTT-F1も排気量上限が1000ccから750ccへと下げられたことによって需要が減り、短命に終わった。
1100SのBSキャブレター(左上)と1000Sに採用されたVMキャブレター(右上)。1000SにもBSキャブ仕様が存在する (下)当時のバイクでは珍しいコンビネーションタイプのメーターもカタナのアイデンティティのひとつ。速度計は240㎞/h、回転計は1万2000回転まで目盛られレッドゾーンは9000回転から。

1982年「GSX750S登場、刀狩りなど様々な逸話を生み出した国内向けナナハン」

日本でもカタナの登場は衝撃をもって伝えられ、国内仕様の登場も期待されたが、当時の車両運送法は暴走族問題もあって厳しく、スクリーンとクリップオンハンドルが認可されなかった。そのため国内仕様となるGSX750Sは当初スクリーンがなく(オプション)、アップタイプのハンドルバーが装着されて1100Sとは大きく異なる外観で発売された。

ユーザーはスクリーンを装着してハンドルを換えて乗っていたが、全国で違法改造による検挙が相次ぎ、歴史になぞえらえた「刀狩り」と呼ばれる現象を引き起こした。

雑誌『モーターサイクリスト』1981年8月号における1100S公道初試乗で東京・上野のバイク街に立ち寄った際の様子。かねてから話題になっていたモデルがついに公道に現れたとあって衆目を集めている。

発売後、しばらくしてスクリーンの認可が下りて標準装備化されたが、ハンドルは「耕うん機」のままだった。

左は国内仕様の750Sで最高出力69馬力。右は輸出仕様の750Sで最高出力は81馬力もしくは82馬力。一見は1100Sと同じように見えるが、リヤホイール径が1100Sの17インチに対し750Sは18インチとなるほか、クランクシャフトが組み立て式から一体鍛造になるなどの違いが見られる。
国内仕様の750Sは車名に「KATANA」が入らず、サイドカウルに入る刀ロゴもユーザー自らが貼る仕様となっていた。また「耕うん機ハンドル」は1100Sに比べて前輪に掛かる荷重が少なく、高速域では不安定感も増大

1983年「GSX750Sはマイナーチェンジ、走りを強化」

1983年、耕うん機と揶揄(やゆ)されたハンドル形状を見直し(それでもまだ高め)、エンジンはバルブタイミングや圧縮比を見直し3馬力アップの72馬力へ向上、ホイールを前19/後ろ18の星形スポークから前16/後ろ17インチの6本スポークにするなどの変更を受けた。車名にカタナの文字は依然として付かない

スズキのみでデザインされたGSX750Sの3型は、リトラクタブルヘッドライトを装備、車体色をホワイト系、フレームを金色に塗色。新たなカタナの創造を図ったが、初代750ほどの人気は得られず1987年に生産を終える。

1984年「車名がGSX750Sカタナとなり専用設計に、リトラクラブルヘッドライトも採用!」

GSX750Sカタナ(写真は1985年登場の最終型)。

全面変更を受け車名にも「KATANA」の文字が入ったが、大きな特徴はスズキ初となるリトラクタブルヘッドライトだ。ターゲットデザインは関与しておらず、スズキのみで設計されている。エンジンとフレームはGSX750Eを改良したもので、角断面スチールフレームも特徴のひとつ。

 だが90年代に入り国内のカタナシリーズは拡大し、400ccと250ccにもカタナが出そろった。いずれも水冷並列4気筒エンジンを抱える車体には1100同様の意匠が与えられ、ファンを拡大するとともにカタナ人気の根強さを知らしめることとなる。

1990年「GSX1100Sカタナが台数限定で復活」

1987年型を以て一旦生産終了した1100Sだが、1990年にスズキ創業70周年記念車として1000台限定で復活(海外仕様)。タンクには記念ステッカーが貼られたほか、シリアルナンバーが刻印された純銀製のオーナメントキーホルダーが付属。車体色は1983年より生産されていた赤×銀ではなく初代同様の銀となった。

125cc、250cc、400cc、650ccにもカタナは展開された

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