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■イラストはイメージ。実際の警察官の業務風景とは関係ありません
パトカーの運転には、専用免許が必要!?
街中で警ら中のサイレンを鳴らして走るパトカーや、大規模警備で出動する機動隊のバスなどは、一般の方たちも割と見かける警察車両だと思いますが、実は「警察官であれば誰でも運転できる」わけではありません。
そこには、一般にはあまり知られていない警察独自の資格制度や、少し「世知辛い」一面もある免許取得の実態が存在します。筆者も体験した現場でのリアルな経験から、警察官のディープな業務での運転事情に迫ります。

1. 坂道発進で落ちる者も? 独自の資格「パトカー検定」のリアル
警察官がパトカーを運転するためには、普通の運転免許を持っているだけではハンドルを握らせてもらえません。運転免許試験場のコースなどを利用して行われる、警察独自の検定「通称パトカー検定」という試験に合格する必要があります。
この検定には段階があって、車やバイクの大きさごとに分類されており、普通自動車でいえば、通称「ミニパト」と呼ばれる軽自動車規格のパトカーやデミオやマーチなどの小型の4輪パトカーの運転が許可される検定があります。
さらにその上位に大型パトカーの資格もあり、これに合格して初めてクラウンなどの「デカパト」と呼ばれる大型パトカーを運転できるようになります。 つまり交通機動隊で4輪を運転する場合は、こちらが必要です。さらに、交番のバイクを運転するための検定もあります(ただし、県により異なります)。


市民の安全を守る警察官ゆえに、誰もが上位の運転資格までパスするのかと思いきや、現実はそうでもありません。 試験内容は一般的な運転免許取得時のものと似ていますが、中には「坂道発進の際にギヤをニュートラルに入れてしまい、そのまま後ろに下がって試験に落ちてしまう」といった、運転スキルに不安を抱えるレベルの受験者(警察官)も存在します。
そのため交通関係の部署でなくても、通常の勤務に影響がないように運転訓練を実施します。運転訓練により、ほとんどの警察官はある一定以上の運転レベルはクリアします。
なお、これらの検定に合格すると、賞状のようなものが授与されるほか、「パトカー検定○級所持」と各人のデータが保存され厳重に管理されています。
2. 「任意という名の強制!?」…4輪の中型・大型車両免許はほぼ自腹で取得
パトカーだけでなく、機動隊のバスや、災害現場に物資を運ぶパネルトラックなどの特殊車両を運転できる免許を持つ警察官もいます(筆者もその一人でした)。この場合は、一般の大型免許に加えて、警察内で実施される大型車両を運転するための検定をクリアする必要があります。
この免許を持つ警察官は一部存在し、業務に必要な運転をする場合もあるものの、その免許取得費用は基本的に「自腹」。教習所に通う十数万円もの費用の大半は自己負担となります(※県によっては助成金があったりもします)。
そして、現場の警察官として、この大型を運転する免許を持っていると「都合よく使われてしまう」というジレンマもあったりします。大型免許を所持する警察官は、自身の通常業務や片付けなければならない仕事があるにもかかわらず、大型車両を必要とする特殊なイレギュラー勤務に駆り出されることもあります。

そのため「仕事で必要になってもお金は出ないし、取ったら取ったで忙しくなる」という理由から、あえて免許を取りたがらない警察官も存在します。
基本的には「任意」とされていますが、若い世代が中型や大型免許を持たずに入ってくる中で、誰かがマイクロバスなどを運転しなければ仕事にならない場合も多いため、実態としては「任意という名の強制」で自腹を切って取りに行かざるを得ないこととなります。
しかし、大型免許を持っていると特殊な車両を運転することもできるので、車や重機が好きな方には苦ではないこともあります。例を挙げると、各県で使用されている機動隊バスの「いすゞ・エルガミオ」や災害用のベンツの「ウニモグ」なども運転する機会があるので、運転技術を活かした仕事がしたい、特殊な車等が好きという方には天職かもしれません。それに加え、警察のイベントなどで車両を展示する際も、大型の特殊車両は子供達に人気でした。車好き、警察車両好きなおじさん達からもモテモテ(!?)になれます。



3. 「車の免許がない警察官」もいる? 地域で異なる免許保有事情
求められる運転スキルや免許の要件は、勤務する都道府県警の事情によって異なります。同じ警察という組織でありながら、そこには地域で随分異なったりして「カルチャーショック」が存在します。
管轄が広大な面積を持つ地方の警察などでは、移動に車(パトカー)が必須です。そのため、車の免許を持たないまま警察学校に入校した者は、入校中に自腹で教習所に通い、車の免許を取得します。
一方、都市部の交番業務では、車よりも125ccのスクーター(小型バイク)が足として多用されます。そのため、「車の免許がなくても、バイクの免許さえあれば業務上はOK」とみなされることがあり、実際に車の免許を持っていない警察官も存在します。

しかし交通系の警察官に限らず、現場で活動する多くの警察官には、車の運転免許が必要となる場面が多く出てきます。過去には、車の運転免許を取得していないのにも関わらず、捜査用車両を運転して処分を受けた警察官が一時期ニュースで取り上げられましたが、これなどはかなり例外的でした。しかし、この事件以降、各警察官に対しての所有免許のチェックは、一層厳重になって今に至っています。
【まとめ】
ここまで紹介した内容は私が勤務していた時代の話なので、現在の状況は少し変わっているかもしれません。ともあれ、サイレンを鳴らして颯爽と駆けつける警察車両の裏側には、自腹で教習所に通う警察官の苦労や、坂道発進で苦戦する姿、そして地域ごとの意外な免許取得事情が隠されています。今後街でパトカーや機動隊のバスを運転する警察官を見かけたときは、少し違った視点で、彼らの運転技術を眺めてしまうかもしれません。
文●睦良田 俊彦
睦良田 俊彦(むらた・としひこ)
1986年北海道生まれ 趣味:クルマ、バイク
歯科技工士を経て警察官となり、約15年間勤務(白バイ隊員歴約10年)。警察学校卒業後は約3年半の交番勤務を経て交通部門へ。白バイ警察官として第一線で交通取締りをメインに活動し、ライダーのための安全講習、交通安全啓発イベント、マラソン大会先導、大統領車列先導など、様々な経験を重ねてきた。県警主催白バイ大会での優勝経験もあり、白バイ新隊員の育成などにも携わった後、巡査部長の階級で依願退職。現在は退職後の夢でもあったライディングレッスンなど、ライダーのためになる活動が出来る場を作るべくYouTuberとして、バイクの面白ネタ等を発信する「臨時駐車場チャンネル」ほか、新たにバイクライディング技術等に特化した「元白バイおやじチャンネル」も開設して活動中。バイクイベント等に積極的に参加し、出身の北海道で開催のライディングレッスンで講師も務めている。































