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■マン島TTのジャンプスポット、バラフブリッジを通過するBMW K1100LTのサイドカー。マン島TTではサイドカーレースがあることもあってカー付きは珍しくない。スーパースポーツをサイドカー化したマシンもたまに見かける。
2週間のレースウィーク中にマン島へやってくるバイクは1万数千台以上。最新バイクから旧車まで、洋の東西を問わずいろいろなバイクが集まる。さながらそれは“動くバイク博物館”で、レースのない日などはバイクを眺めているだけでも楽しめるのだ。
観戦者はどこからやって来る?
TTウィーク中のマン島へやってくるのは、当然ながら大半がイギリスのナンバープレートを付けたバイクだ。イギリスがEUに加盟していた頃は、EU規格のナンバープレートに「GB」の文字が表記されていたため判別するのにやや手間取ったが、2020年にイギリスがブレクジット=EU(欧州連合)離脱をして以降、ナンバープレートはイギリス独自の黄色一色のものへ切り替わったので判別しやすくなった。
ちなみにマン島はイギリス同様の黄色のナンバープレートだが、マン島の国旗にもあしわられている三脚巴(さんきゃくともえ)が描かれているので、すぐにそれとわかる。
次いでよく見かけるのがフランスとドイツで、イタリア、ベルギー、オランダ、スイス、スペイン、アイルランドなど西ヨーロッパ各国のナンバープレートを見かける。しかしまれにアメリカやオーストラリア、中国のナンバープレートを見かけることもある。アメリカとオーストラリアのナンバープレートを付けたバイクは世界一周中であることも珍しくなく、やはり大海を越えて来るにはそれだけの気力と労力が必要なのだ。

■おそらくはル・マン2に社外品のフェアリングを装着したモトグッツィ。グリーンの車体色はオールドグッツィのムード満点で、フェアリングにマン島TTのスネーフェルマウンテンコースのステッカーを貼っているし、ヘルメットは伝説の名ライダー、故ジョイ・ダンロップのレプリカであることから、かなりのマン島TTフリークだろう。

■台数こそ少ないものの、ここ2~3年でちらほらと見かけるようになってきたインディアン。こちらのスカウトはリヤシートに満載された大荷物から推測するに、2週間のキャンプ生活を楽しんだのではないだろうか。

■タンクの膝が当たる部分をブラッシュペイントするという、地味なカスタマイズが施されたBMW K1100LT。日本でも縦置きエンジンのKは見る機会が減ったが、それはマン島でも同様だ。

■イギリスの黄金時代を支えたものの、1967年にバイク生産を終えたメーカー、アリエル・モーターサイクルズ。こちらのリーダーは2ストローク250ccエンジンを搭載。ガソリンタンクはモノコックのプレスフレームに内蔵されていて、通常のタンク部分はヘルメットも収納できるトランクとのこと。マン島でもめったに見られないレアバイクだ。

■1971年に終焉を迎えたイギリスのメーカー、ヴェロセットが1965年から生産していたヴェノム・スラクストンは、ノーズコーンと呼ばれたフェアリングが目を引く。フィッシュテールマフラーはカスタムではなくオリジナルというのも、旧車に明るくない者にとっては驚かされる要素だ。
日本製バイクをはじめ、70~90年代の懐かしいバイクも多数存在
日本4メーカーのバイクが多勢ではあるが、やはりお膝元のトライアンフの比率は日本よりもグンと増える。もちろんBMW、KTM、ドゥカティ、アプリリア、モトグッツィ、MVアグスタなどのヨーロッパメーカーの比率も日本より格段に多い。ハーレーダビッドソンは日本よりも少ないが、ここ数年で増えてきた印象がある。
バイクのカテゴリーでいうと、スーパースポーツが大多数かと思いきや、アドベンチャーツアラーとおおよそ半々、ひょっとすると後者のほうが多いかもしれない。やはりマン島までの長距離を走ってくるには都合がいいのだろう。10年ほど前まではBMW・GSシリーズが大多数だったが、近年はドゥカティ・ムルティストラーダを筆頭にトライアンフ・タイガーシリーズやKTMのアドベンチャー系が増えている。
バイクの新旧では、ここ10年ほどに発売されたバイクが目立つものの、1980~90年代のプチ旧車も少なくない。そしてトライアンフやノートン、BSAなどのイギリス黄金時代を築いた旧車(50~70年代)を見かける。
いずれも数をカウントしたわけではないから正確性には欠けるが、日本とはずいぶんと様相は違っている。当然といえば当然だが、ここではそんなバイクの中から独断と偏見で選んだ日本製プチ旧車たちをメインにご覧いただこう。
日本製70年代モデルも健在

■「おお、往年のホンダレーサー!」と思いきや、こちらはオーナーが作り上げたRC181レプリカで、ベース車両はCB500Fourとのこと。RC181はホンダが500ccクラスに初参戦したレーサーで、デビューイヤーの1966年にジム・レッドマンとマイク・ヘイルウッドが走らせてシーズン5勝を挙げた。

■ホンダCB750Four(おそらくK7?)に装着されているパニアケースは、ひょっとすると当時の純正品かもしれない。一見するとノーマルかと思いきや、ほぼ直管みたいなマフラーを装着。相当に元気であろうサウンドは、残念ながら聞けなかった。

■サイドカバーに小さくレタリングされた車名は「DT175」。空冷2ストエンジン搭載の同車は、年式は不明ながらモノサス採用のため78年以降モデルだろう。こちらも丁寧に乗っていることがわかるコンディション。ちなみにナンバープレートはドイツだが、これで自走してきたの?
意外に多い80〜90年の日本製モデルetc.

■良好なコンディションのスズキGS1000はスズキ初のリッターバイクだが、このモデルはGS1000G(80〜)という駆動方式をチェーンからシャフトに変更した仕様(そちら側の写真がなくて申し訳ない……)。国内でもGS750(後にE)に対してシャフト駆動のGS750Gが販売された。

■これまたグッドコンディションのヤマハRD350LC(80〜)のオーナーは、マン島在住のトレーシーさん。2ストロークが好きで、14年前に購入した愛車にはカストロールのエンジンオイルを使い、「その匂いが好きなのよ! RD350はパーフェクトなバイク」と大絶賛。

■これはYPVSが装着された、2型のRD350LC(国内仕様はRZ350)。RD系モデルは毎年その集団を見かけ、欧州でも人気の絶版車と言える。どれもきれいにカスタマイズされたものばかりで、こちらも倒立フォーク+17インチホイール、ストロボパターンのUSインターカラー、アンダーカウル、バフがけしたクランクケース、ステンレスチャンバーなど、見どころ満載だ。

■ゼッケンスペースこそないものの、80年代のGPや耐久ワークスマシンなどで活躍したスズキ×ハーベーカラー(独のタバコブランド)が美しく再現された油冷のGSX-R1100(86〜)。島内では半袖短パンで走るライダーも多いのだが、こちらのライダーは上下ともレザーを着用しているところも好ましいポイント。

■1989年に発売されたTT-F1のホモロゲモデル、スズキGSX-R750R(通称RK)。ナンバープレートを見るとオーナーはフランス住まいで、マン島TTだけでなくル・マン24時間耐久レースも観戦しているレースファンのようだ。

■イギリスではスズキの油冷ファンが存外に多い。その中でも89年から登場のGSX750Fはなかなかお目にかかれないレアなバイクだが、写真のモデルは98年から登場の丸みを帯びた2型。年式なりの小キズはあるものの、丁寧に乗り続けていることがわかるほど良好な状態だ。

■ヨーロッパでは見るのが珍しいエリミネーター250LXは、エリミネーター250シリーズのスポークホイール仕様で89年登場。もはや日本でもめったに見る機会はない気がする……。

■単気筒ゆえに見逃しやすいが、こちらもスズキ油冷! とはいえ見かけるのはレアな部類で、同系エンジンを搭載するグース250/350も見かけない。このジェベル250(92〜)はヘッドライトを社外品に換装してハンドリングを軽快にしている。

■海外向けモデルで国内販売されなかった、499cc水冷2気筒エンジンを搭載するCB500(93〜)。こちらでもなかなかお目にかかれないが、今年はオーナーズクラブが来ていたのか、数台がまとまって駐車している場面にも遭遇した。ナンバープレートの「B」はベルギーを表している。

■2気筒エンジンで270度クランクをいち早く採用したTRX850(95〜)。オーナーは左の男性で、所有してから16年。エンジン、ライディングポジション、サウンドが気に入っているそうだ。ちなみに右の女性は現役サイドカーライダーで、今年のマン島TTに参戦していた。

■クランク位相が360度から、TRX850と同じ270度へ変更された2型のTDM850(96〜※日本では98〜)。ヨーロッパでは人気モデルだったが日本では不人気車種で、当時もあまり目にすることはなかった。しかしオフロードバイクの美点を採り入れたオンロードバイクという、現在人気のアドベンチャーツアラーの祖でもあるのだ。

■ゴールドウイングもハーレー同様にかなりの少数派だが、一日に数台は見かける。オーナーのデニスさんはドイツからきたGL1500(88〜)乗りで、「マン島まで走るにはとても合っている」と、にこやかに答えてくれた。

■ZX-9R(98〜)がすでに20年以上前のバイクとは思えないのは、あなたも私も歳をとったせい? それはさておき、ヨーロッパでは男同士のタンデムが珍しくない。日本ではほとんど見かけないのはなぜだろう?

■台数は決して多くないのだが、XJR1300(98〜)は1200とともにちらほらと見かけるバイクだ。空冷並列4気筒といえば日本メーカーのお家芸だったエンジンだが、ヨーロッパにもファンはけっこう多いのかもしれない。その奥にあるのは、日本ではめったに見かけなくなったビューエルX1ライトニング(99〜)。

■今では日本でもめったに遭遇しないスズキ・ストリートマジック(97〜)。日本では50/110ccがあったが、欧州の一部地域で主に販売されたのは、意外にも50cc(TR50)だった模様。2スト好きはイギリスにも多くいて、NSR250R、RD350などはわりと見かけるが、「ストマジ」を見たのは初めてだ。

■まるでショールームから出てきたばかりのようにきれいなスズキTS185。レトロな空冷2スト単気筒を積んだオフロードモデルは、2010年代中盤まで南米やアフリカ向けに生産されていたようで、販売店がその前後で並行輸入したものかもしれない。ちなみにナンバープレートはイギリスだ。

■前述したようにスズキ油冷エンジンの人気はイギリスで根強く、バンディット1200S(00〜)もよく見かけるモデルだ。サブライトやホーン、ゴールドのボルトなど細かいところのカスタムからオーナーの思い入れが伝わってくる。サイレンサー部が妙に短いマフラーはどんな音(爆音?)を出すのか。

■前述したとおり欧州では日本よりもサイドカーが多いが、こちらはフランスのサイドバイク社が製作したコメット。サイドカーには2人乗車ができ、4点式シートベルトも備えているところを見ると、ハイスピードを想定したサイドカーのようだ。バイクはカワサキZX-12Rで、ライムグリーンにイエローを合わせたカラーリングも大胆だ。

■ベース車は不明ながら、スズキ油冷にターボを組み合わせたモンスターなカスタムマシン。車体色のオレンジとサイドカバーの「GEGERAL LEE」の文字から察するに、1979年から放送されたアメリカドラマ『デュークス・オブ・ハザード』に登場したダッジ・チャージャーをモチーフとしている模様。フロントフェンダーのステッカーから判別するに、このバイクのオーナーはコースマーシャルを務めているようだ。

■今年のマン島TTではWIMA(Women’s International Motorcycle Association=国際女性ライダー連盟)のパレードが行われた。CRF300ラリーで参加していたオーストラリア人女性は、世界一周ツーリングの真っ最中!

■スーパーカブはイギリスでかなりの人気があるバイクのひとつだ。ほとんどはキャブレター時代のカブばかりだが、近年はC125もちらほらと増えてきている。

■2代目DT200R(84〜)が3台も揃っている場面に遭遇したのも初めてだ。当時の欧州向けにはそれほど多く販売されていなかったはずだが、遭遇した3台はどれもコンディションがよく、あまりオフロードは走ってないのかも? それにしてもイギリスには2スト好きがけっこう多い。

■ここはコース終盤のクレッグ・ニー・バーのバイク駐車場で、ざっと200台以上が停まっている。1世代前(2世代?)のスーパースポーツがこうして並ぶ光景は珍しくない。

■こちらもクレッグ・ニー・バーの駐車場。日本ではプロトが輸入販売しているベネリTNT125だが、4台もまとまっているところは初めて見た。ナンバープレートはイギリスだったが、トランポに積んできたのか、それとも自走してきたのかは未確認。
Photo&Report●山下 剛(Yamashita Takeshi)

































