▲ハニカムパターンのホイールはSP忠男製。バックステップは純正を逆向きに装着するジェロニモ
外装キットには「幻」と前置きが付く名品がある。
1977年に「紀一と博FRP研究所」が発表したこれがまさにそれだ。
<時代が生んだフォルム>
70’年代のヴィンテージカスタムを目の当たりにした時、あのときめきを思い起こす。「あの」とは40年ほど前に少年たちを熱狂させたスーパーカーブームだ。雑誌やテレビでしか見ることのないフェラーリやランボルギーニの実物をショーで見た時の興奮。70’年代カフェレーサーには、あのオーラがある。
その最たるマシンがこれではないか。佐々木和之さんの74’年式Z2には、77’年東京モーターサイクルショーで発表され市販が開始された紀一と博FRP研究所(K&H)製スペシャルパーツが装着されている。
左右に張り出したビッグタンクは同社得意の造形だが、目を見張るのは巨大なウェッジシェイプのテールカウル。デザイン・製作した中山博さんはスーパーカー好きであり、当時、空前のスーパーカーブームであったことを思えば、その造形美を大胆に取り入れたのだと推察できる。
このボディキットは28セットしか製造されなかった(当時28万円)。それがこうして現代に生き続けていることは、ひとつの奇跡である。

エンジンは860ccにスープアップ。マフラーは初期ウエダレーシング製だ

ディスコボランテよろしく張り出したビッグタンクもFRP製で容量は25リットル。英国製キャップ(おそらくエノット)もオリジナル整備品

突き出たテールフィンにはブレージランプとウインカーが内蔵される。当時の車両メーカーもやっていなかった斬新さ。テールカウルの内部は大きめの小物入れ(ツーリングボックス)
本文:甲賀精英樹
写真:佐藤正巳
※本記事は八重洲出版発行のムック「THE JAPANESE CAFERACERS」(ネット書店、全国書店で絶賛発売中!)の記事を転用しています。
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