試乗インプレッション

【NEW MODEL IMPRESSION】"直4" スーパースポーツ最強のパフォーマンスを目指して S1000RR M PACKAGE

エンジン・車体を一挙に刷新したBMWのスーパースポーツS1000RR。ポルトガル・エストリルサーキットで行われた国際試乗会に参加したテスターは、その扱いやすい高性能に驚きの声を隠さなかった。

report●鈴木大五郎 photo●BMW
 


 

性能を底上げした新設計シャシー

ピットロードから走り出した瞬間「シフトカム、来た~!!」とヘルメットのなかで叫んでしまった。

●回転域により吸気バルブの開閉タイミングと開閉量を変更し、燃焼効率を高める「シフトカム」を採用した新エンジン。最高出力は従来型より8馬力アップし207馬力を発揮する

降り出した雨のため選択したレインモードは1速~3速の出力がずいぶんと抑えられている設定。それでもそのトルクフルさは光っていて、しかもそれが無表情の豊かさではなくてしっかり輪郭のあるもの。昨年、R1200GSで低~中回転、中~高回転でバルブタイミングが切り替わるシフトカムを体験したときも、そのトルクフルさと瑞みずみず々しさに驚いたのだけれど、スーパースポーツであるS1000RRで体感した驚きはそれ以上だったかもしれない。これならサーキット走行以外の用途にも順応性は高いはずだ。

●エンジン上部がくの字状となる新設計フレームは軽量コンパクト化を追求し、剛性バランスも最適化。電子制御式リヤサスペンション、フルフロータープロは路面に対し直角にレイアウトされ、柔軟な挙動を発揮する

さて、コースインして周回を重ねると、今度はその車体の軽さに感動を覚えた。悪天候により走行スケジュールは大幅に変更され、1セット目はハーフドライかつ純正タイヤでの走行。2、3セット目は完全ウェットとなり、レインタイヤを履いての走行で、残念ながらポテンシャルの全てを味わうことは叶かなわなかった。

しかし、そんな悪条件のなかでも感じられたのが、スポーティな軽快さだ。スーパースポーツであれば、どんなモデルでもまず重いということはないが、このマシンは格別に軽く感じられる。特に今回のテスト車「Mパッケージ」はカーボン製ホイールやリチウムイオンバッテリーを採用することで、より軽量な仕上がりとなっている。これらが左右の切り返しの素早さなど運動性能の向上につながっていることは間違いない。だが、それ以上に完全新設計となったシャシーが実に素晴しい。

●エンジン単体で4㎏、フレーム単体で1㎏など軽量化を徹底し、車重は従来型より11㎏軽量に。4輪BMW伝統となる白×赤×青の専用カラーをまとった写真のMパッケージは、カーボン製ホイール、リチウムイオンバッテリーを装備し、スタンダードからさらに3.5㎏軽量な仕様となる

「剛性バランスを最適化し、よりフレキシブルな特性にした」と開発陣から説明を受けたが、柔軟さが感じられ、マシンからのフィードバック量がすこぶる豊富なのだ。これは新たに採用されたフルフローター式リヤショックの動きの良さもあるだろう。電子制御式サスペンションのスムーズさもさらに向上し、アクセルワークに対し、リヤタイヤの状況が把握しやすく、コントロール性の良さにつながっている。

絶対的なエンジンの速さプラス安心感。従来型までは安心感が真っ先に来るものだったが、それに対し新型は、まず軽さ・運動性能の高さを感じ、そして次に分かりやすい安心感が得られるという違いがある。200馬力オーバーのマシンは数多く存在するが、半面ライダーとのギャップは増していくばかり。しかし新型S1000RRは絶対的ポテンシャルと共に、安全で乗りやすく、そして場所を選ばないフレキシブルさがある。今後のスーパースポーツのあり方に新たなる1ページを開いた、全方位的超高性能マシンの登場だ。

●LEDヘッドライトを採用したフロントは左右対称デザインに一新。カウルの空力特性もさらに高められた


●フルカラーとなったメーターは3種の表示パターンが選択可能で、電子制御の動作レベル、ブレーキ入力量、バンク角、ラップタイム、平均速度など多彩な情報を表示。Mパッケージはライディングモードプロが使用でき、より細やかな電子制御の設定が可能だ
 

RIDING POSITION

従来型に対しハンドル位置がやや上がりワイドに。非常にコンパクトで下半身のフィット感も良好。

165㎝のライダーにも大きすぎず、海外の大柄なライダーからも窮屈感はないと高評価だった(シートはMパッケージ仕様)。足着き性はスーパースポーツとしては標準的。

 

扱いやすさと超高性能の素晴らしい両立

FAVORITE

エンジン、車体とも全面刷新の気合。シフトカムのフレキシブルさ、ハンドリングの軽快さ、リヤ周りの動きの良さと分かりやすさ。電子制御もスムーズで、マシン全体がフレンドリーな肌触りなのだ。従来型も同様だが、スーパースポーツでグリップヒーター標準装備はBMWらしい。価格も内容を考えれば○!

REQUEST

機能が膨大になりすぎて、設定がすぐには覚えられないこと。パーツが高額になるであろうこと(立ちゴケ程度でも……)。乗りやすすぎて、自分のテクニックが衰えそう。すさまじいパワー感があった従来型に対し、従順な印象なのは好みが分かれるかも。それにしても、完全ドライで乗りたかったなぁ~。
 


 

S1000RR

■Specifications[ ]内はMパッケージ

【エンジン・性能】種類:水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ ボア×ストローク:80.0×49.7㎜ 総排気量:999㎤ 最高出力:152kW<207ps>/13500rpm 最大トルク:113Nm<11.5kgm>/11000rpm 燃料タンク容量:16.5L 変速機:6段リターン

【寸法・重量】全長:2073 全幅:848 全高:1151 ホイールベース:1441 シート高:824(各㎜) 車両重量:197㎏[193.5] タイヤサイズ:フロント 120/70ZR17 リア 190/55ZR17

【カラー】赤[白×青×赤]

価格●289万1160円~300万9960円(Mパッケージ)/ 245万9160円(スタンダード)/ 273万8880円(レースパッケージ) 発売時期●7月上旬(予約受付中)

CONTACT

問い合わせ先 BMW
電話番号 TEL:0120-269-437
URL http://www.bmw-motorrad.jp

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