大幅な仕様変更を受けた新型と日本の道とのマッチングは?
従来のBMW・Fシリーズに搭載されていたエンジンは、今となっては珍しい360度クランクの並列2気筒。音もフィーリングも同社のボクサーツインに非常に似ていたのだけれど、新型のBMW F850GS/F750GSに搭載されたのは、今、最も人気のあるエンジン形式。並列2気筒の270度クランク仕様である。
ちなみに、現在この形式のエンジンは、ホンダのアフリカツイン、ヤマハのMT-07、トライアンフのボンネビルシリーズなど、人気モデルがこぞって採用。90度Vツインの感覚に非常に近いこの形式により、Fのキャラクターも大きく変貌したのだった。
では、なぜにBMWはこのエンジンを選択したのか? 大きな要因としては〝市場からの要求〟とのことであったが、日本の道路事情に対してはどうなのか。実際にBMW F850GS/F750GSで走行して検証してみたいと思う。
■F850GS
●F750GSより45㎜高いシート高を持ち、高出力・高トルクエンジンを搭載するF850GS。スポークホイールの採用などオフロード性能を高めているのは先代モデルと同じだ。また、プラスチック製エンジンガードは標準装備されるが、ハンドルプロテクターはF750GS共々ディーラー装着オプションとなる。
●フロントタイヤはF750GSの19インチに対し、F850GSは21インチを採用する。なお、日本仕様にはオフロードタイヤの標準設定はない。
●電子制御サスペンションのダイナミックESAは両モデルともオプションとなる
ジェントルかつ、気持ちよく回るエンジン
明らかにトルクが増し、そして鼓動感も増しているエンジン性能であるが、ライディングモードでツーリングを選択し、あまり回転を上げずに走らせると非常にジェントル。振動が少ない、滑らかなエンジンフィールである。フリクションが少ないであろうことがすぐに感じられ、さすが最新の設計だなぁと思わせる。
今回の走行ではさほど回転を上げないシーンが大半であったから、そのメリットは非常に際立っていた。
その一方、想像以上にすんなり回るエンジンを駆使して、ワインディングを高いアベレージスピードで走ることも可能だ。
高回転からのシフトダウンであっても、リヤタイヤがキュキュッと滑ったりマシンが不安定になるようなことは皆無である。最新の電子制御によりマシンの挙動は乱れにくいものとなっているが、MotoGPマシンでもトレンドとなっている逆回転クランクによる、バックトルクの緩和もそれをアシストしているのかもしれない。
もちろん、車体も完全刷新されている。そして、燃料タンクの搭載位置がシート下から通常のエンジン上に変更となり、フロント周りの接地感が大幅に高まったのだ。
特に850は800時代のいかにも腰高なマシンを操っているといったフィーリングは影を潜め、フロント21インチにもかかわらず、体を委ねて旋回力を引き出していくことが可能となった。
対して750はスポーツネイキッドマシンのように意のままに振り回して行ける一体感がある。同時に、サスペンションの動きの良さは、その追従性の高まりが手に取るように分かる。そのうえでハンドリングの軽快さをもたらしているのも、逆回転クランクの恩恵かもしれない。
大きすぎず、過不足ないというFのキャラクターは、想像どおり日本の道にベストマッチングだったのだ。
■F750GS
●スマートフォンをブルートゥースで接続することで、電話の発着信や音楽再生などが可能になるTFTディスプレイは両モデルにオプション設定。操作は左手側のマルチコントローラーで行う。
●写真のステンレス製サイレンサーが標準だが、ディーラーオプションとして2.35㎏軽量なアクラポビッチ製のHPマフラーが用意される。
●F750GSのエンジンはF850GSよりも18馬力/0.9㎏m低いが、先代モデル比では3馬力/0.7㎏向上。なお、今回の旅で900㎞以上走行してのトータル燃費は、F850GSが24.12㎞/ℓ、F750GSが23.56㎞/ℓだった。
RIDING POSITION
F750GSはまるでスポーツネイキッドのよう。余裕はありつつもコンパクトだ。足着き性もこの手のマシンとしては良好。重量車ではないためプレッシャーは少ない。F850GSはよりアップライトで膝の曲がりも緩め。スタンディングでもしっくりくる設定だ。
■F850GS
■F750GS
BMWらしい造り込みによる熟成
FAVORITE
モード切り替えにより様々なキャラクターを味わえ、2モデルが同じエンジンを用いながらそれぞれの個性を持つ、新型エンジンの多様性が好印象。タンデムや長距離ツーリングでも頼もしい、車体のしっかり感とサスペンションのスムーズさも○。電子制御の緻密さや、TFTメーターの多機能ぶりはうれしい。
REQUEST
オートシフターによるギヤの入りが少し硬いので改善を望みたいところ。スクリーンのイージーな調整機構があると長距離でさらに快適だろう。F750GSはF700GSと比べるとやや大柄になり頼もしくなった反面、手を出しづらくなったライダーもいるかもしれない。また、両車ともやや排気音量が大きく感じられた。
(report●鈴木大五郎 photo●岩崎竜太)
Specifications []内はF750GS
【エンジン・性能】種類:水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ ボア×ストローク:84.0×77.0㎜ 総排気量:853㎤ 最高出力:70kW<95ps>/8250rpm[57kW<77ps>/7500rpm] 最大トルク:92Nm<9.4㎏m>/6250rpm[83Nm<8.5㎏m>/6000rpm] 燃料タンク容量:15ℓ 変速機:6段リターン 【寸法・重量】全長:2310[2270] 全幅:880[850] 全高:1350[1225] ホイールベース:1595[1559] シート高:860[815](各㎜) 車両重量:236[230]㎏ タイヤサイズ:Ⓕ90/90-21[110/80R19] Ⓡ150/70R17 【カラー】黒、白、赤[白、黄、灰] 【価格】154万1000円[129万6000円]
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