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リニアなレスポンス特性で扱いやすい688cc並列2気筒エンジンを搭載したヤマハのスーパースポーツモデル、YZF-R7がモデルチェンジ。日本では2026年5月29日に116万6000円〜という車両価格で発売予定だが、一足早く海外からインプレッションをお届けする。リポーターはイギリス人モーターサイクルジャーナリストでマン島TT参戦などレース経験も豊富なアダム・チャイルド氏だ!
☆記事の前半部分はこちらで→【ヤマハ YZF-R7(2026) 試乗記:公道編】YZF-R1並みの電子制御で大型SSビギナーも安心!
※本文で言及されている車両価格や周辺事情などはイギリスおよびヨーロッパ諸国のものです。日本国内とは異なる箇所があります。
新採用の多彩な電子制御がサーキット攻略を支援
新型YZF-R7のサーキット試乗では、サスペンションにヤマハのテクニカルスタッフによる微調整が施され、タイヤがサーキット向けのブリヂストン バトラックスレーシングストリートRS12に換装されたのみで、それ以外の変更はなかった。さあ、未体験のコースである「Circuito do Sol」に挑む時が来た。
私は走行前、公道とは異なるこの環境では、YZF-R7は少々力不足で場違いな感じもあるかもしれないという懸念を抱いていた。このサーキットはアップダウンが激しく、上っているときは頂点から先が見えない坂や、起伏を伴いつつさまざまなアールを描くコーナーなどがある。オーソドックスなレーストラックというよりは、まるでジェットコースターのような、勇気を試されるコースだ。しかし結果的に、ここはYZF-R7にとって完璧な遊び場となったのであった。

新しいサーキット、特に今回走ったような手強いコースの走り方を学ぶ際には、扱いやすく、ミスを許容してくれるバイクが必要であり、だからこそ、新型YZF-R7の性能が大きく際立った。
最初のセッションでは、パワーを最大に設定し、ABSやトラクションコントロールなどすべてのライダーサポート機能を最小限の介入レベルに抑えて走った。坂の頂上や路面が盛り上がった箇所では、望まぬウイリーがスムーズに抑え込まれ、リフトコントロールが作動しているのが感じられる。しかし、ABSやその他の電子制御が作動している気配は走行中まったく感じられない。そして、威圧感のない扱いやすいエンジンパワーのおかげで、常にコントロールを失うことなく、最適なラインを選び、コーナーを正確に攻めることができた。
初心者や経験の浅いライダーは、サーキットにおいてこの手厚いサポートを大いに享受できることだろう。万が一に備えて走りを見守りつつも介入の気配をほとんど感じさせない電子制御のおかげで、安心してリラックスした状態で走れるはずだ。

なお、公道試乗でハードに攻めた際にはフロントフォークのセッティングに懸念が生じたが、それでもサーキット用に設定を標準値から大幅に変更することはしなかった。プリロードは変更せず、圧側減衰力は最強から7クリック戻しを4クリック戻しへ、伸側減衰力は最強から8クリック戻しを4クリック戻しへと調整した(減衰力の調整範囲は圧側も伸側も11クリック)。
これによって、フロントの接地感のすばらしさはそのままに、コントロール性はさらに向上。また、レーシーな銘柄に換装されたタイヤはウォーマーを巻かずとも私にさらなる自信を与えてくれ、ブレーキを緩めて速いコーナーリングスピードで走らせることができた。新しいサーキット、特にこの「Circuito do Sol」を攻略するうえで、新型YZF-R7はまさに完璧なパートナーだ。

サーキット試乗の終盤では、リフトコントロールをキャンセルした――これには特に理屈はなく、純粋に遊び心からだ。また、リヤのABSもキャンセルしたが、ほかのセッティングはそのままにした。ラップタイムを追求したりレースをするのであれば、フロントフォークは別のセッティングも試したほうが良かったと思うが、今回のように一般スポーツ走行枠のような環境では、減衰力調整のクリック数を数えるのに時間を浪費する必要はまったくなかった。
最高出力が73馬力しかないにもかかわらず――いや、73馬力だからこそかもしれないが――途方もなく楽しく、気取らずにサーキット走行を満喫できる。大胆に早めのタイミングでアクセルを開け(グリップ感は十分、スライドコントロールもバックアップとして機能してくれる)、程よい大きさのウインドスクリーンに身を隠し(もちろん尻をシートからわずかに浮かせて)、ストレートでは馬力を目一杯絞り尽くす。体を起こし、思い切りブレーキを掛け、然るべきところでブレーキレバーをリリースして、肘が地面に届きそうなほどのバンク角まで車体を傾ける。これを日が沈むまで思う存分繰り返した。

サーキット試乗中にはABSが1、2回作動し、バイクのステップやレーシングブーツのトゥースライダーが路面を軽く擦ることもあった。それでも新型YZF-R7は、今回走行したコースにおいて、スポーツエントリーモデルとして単に「良い」というレベルを超えており、安心して走れるバイクだった。同カテゴリの他のバイクなら、サスペンションの減衰力不足や最低地上高の問題でライダーが諦めてしまうような状況で、これほど良い走りを見せることはなかっただろう。
そして重要なのは、走りの主導権は常にライダー側にあり、バイクに“乗せられていた”のではなかったという点だ。新型YZF-R7は軽量でコントロールしやすく、乗っていて楽しいバイクだが、決して過度な性能でライダーにプレッシャーを掛けてこない。20分間連続でハードなスポーツ走行をした後でも、私は疲れ果てることはなく、むしろもっと乗りたいという欲求に駆られた。これがもし、もっとパワーのあるバイクだったら、そうはならなかったはずだ。

ただ、ライバル車が全て73馬力ならば新型YZF-R7はサーキットではるかに優位に立てるのだが、よりパワーのあるバイク――スポーツエントリーモデルながら90~95馬力を発揮するモデルもある――と広いサーキットで競い合った場合、今回ほど元気いっぱいに走れたかどうかは疑問が残る。
新型YZF-R7のシャシーは同じカテゴリのライバルたちに勝るとも劣らない優秀なものであり、ライダーサポート機能も最高水準のものだ。しかし、競合するほかのバイクのいくつかに、馬力でいくばくかの差をつけられているという事実は隠しようがない。

総評:気負わず安心してスポーツ走行を満喫でき、質感も高い
近年、スポーツエントリーバイクというカテゴリーにおける競争が熾烈になったことで、ヤマハには電子制御が少なく時代遅れの存在になりつつあったYZF-R7を改良することが求められていた。ヤマハはその期待に応えるだけでなく、それ以上の成果を上げた。
サーキット向けのスライドコントロールや公道向けのクルーズコントロールなど、新型YZF-R7のライダーサポート機能やスポーティなテクノロジーの豊富さはクラスをリードするものだ。わずか数年前のリッタースーパースポーツと同等の電子制御システムを誇り、しかも価格は1万ポンド以下に抑えられている。新しく搭載されたライダーサポート機能は、表向きは初心者のライディングスキル習得を助けるためのものだが、経験豊富なライダーにとっても役立つものだ。新型YZF-R7は、端的に言えば、とにかく楽しく走れるバイクだ。
そして、魅力はライダー支援機能だけではない。ライディングポジションはより洗練され、余裕のあるものとなった。また、サスペンションの標準セッティングはソフトになってさらに親しみやすく、公道志向となっている。シャシーからのフィードバックもすばらしく、乗りやすい。ライダーに大いに自信を与えてくれる、そんなバイクのひとつだ。
スタイリングに劇的な変化はないものの、高品質な新型ディスプレイや新形状のトップブリッジなど、細かな改良が大きな違いを生んでいる。また、万人受けするとは限らないが、私自身はヤマハ発動機創立70周年記念カラーを気に入っている。
新型YZF-R7は、日常使いにも適し、サーキットでも適切なコースであればスキルを問わず楽しく走れる、優れたスポーツバイクである。

ただし大きな疑問が2つ残る。ひとつは「エンジンは73馬力で十分なのか?」ということ。もうひとつは「9500ポンドという価格設定は、豊富な電子制御を考えるとリーズナブルだが、同じスポーツエントリーモデルのライバル車と比べると高価すぎるのではないか?」ということだ。
ヤマハ YZF-R7(2026)国内仕様諸元
エンジン種類:水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ ボア×ストローク:80.0×68.5mm 総排気量:688cm3 最高出力:54kW<73ps>/8,750rpm 最大トルク:68Nm<6.9kgf・m>/6,500rpm 燃料タンク容量:13L(無鉛レギュラーガソリン指定) WMTCモード燃費:25.2km/L 変速機:6段リターン 全長×全幅×全高:2,070×725×1,160mm ホイールベース:1,395mm シート高:830mm 車両重量:189kg タイヤサイズ:(F)120/70ZR17 (R)180/55ZR17 カラー:ブルー、ブラック、ホワイト 価格:116万6000円(ブルー、ブラック)、125万4000円(ホワイト) 発売日:2026年5月29日



report:Adam Child photo:Ant Production/ヤマハ まとめ:モーターサイクリスト編集部




































