「カブ」のシリーズの中でも特にアソビゴコロのあるこのクロスカブ。道を選ばぬクロスオーバー的なキャラクターをねらい、STDよりも大柄な110、前後14インチの可愛らしい50と別仕様もラインアップ。各々キャラクターの異なる2本立てとなっている。
東京モーターショーでCT125のコンセプトモデルが展示される今だからこそ、ハンターカブの“現在の継承車”に注目してみたい。
文/阪本一史 写真/山内潤也
※本記事は旧車二輪専門誌 モーターサイクリストCLASSIC2018年4月号に掲載されているものを再編集しています。
ハンターカブ需要の継承車
野山へ分け入り狩りなどを楽しむため、不整地も走れるカブとして北米で生まれたハンターカブ(CT)シリーズ。古くはOHVエンジンのC100をベースとしたC100T(’61)が輸出向けに投入され、’62〜63年にはC100/105Hが国内にも登場。
後にOHCエンジンのCT50(’68)とCT90(’69)を経て、’81年にはCT110が国内販売。
時は多機種拡販競争のHY戦争のころで、その後疲弊した市場の立て直しのため、CT110は’83年に国内ラインアップから消滅となった。
しかし、スーパーカブでアクティブに走り回りたいという層や、実用車と異なる意匠で趣味性を求める層に根強く支持され、CT110の海外仕様が逆輸入車として’10年ごろまで流通した。
そうした背景もあり、その性格を受け継ぐ初代のクロスカブが登場したのは’13年のこと。
同車は、中国生産となった先代スーパーカブエンジンを搭載し、豪州向け郵政仕様をベースに専用部品を加えて仕立てられた派生モデルだが、やはり旅好きのカブ乗りを中心に、根強く支持された。
この流れを汲み、新型カブをベースに刷新されたのが現在発売されているクロスカブシリーズで、大きな特徴は、新型カブ系エンジンでの走りの熟成と、先代よりも日本人に取り回しやすい方向での車体の見直しなどだ。
またもうひとつ新たなトピックが、50ccの投入だ。
こちらは110とは異なり、前後14インチの車輪を採用。以前のリトルカブ的な立ち位置のモデルと言え、110とはねらいやキャラクターが異なる。
そのため、ここでは110をクローズアップし、STDの110とどう違うのかを中心に紹介していくことにする。
クロスカブの脇に立つと、少し大柄なカブだなと感じさせるが、またがるとさらに差を感じる。
身長173㎝でも両足接地ではカカトがわずかに浮き、着座しての視点もSTDより高い。
おそらくセロー250くらいの高さだろうが、視界がいい。
それもそのはずで、数値ではSTDの110より50㎜もシートが高いのだ。
そして、ハンドルは110㎜幅広く、約50㎜ほど高い。
その分厚みのあるシートでバランスを取っているため、手、尻、足の3点関係は違和感がないが、身長160㎝台やそれ以下のライダーにとっては、この高さがカブの取っ付きやすさを薄めることになるかも。
しかし、106㎏(STD比で+7㎏)の車重は大層な重さではなく、車体自体のスリムさは変わらないので、威圧感は少ない。
ただし、STDのカブが持つ親和性というか、小回り感は薄れ、旅に向くヘビーデューティ版カブという言葉が頭に浮かぶ。
ちなみにその辺でも、110と50のクロスカブではかなり印象を異ならせるのだ。
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