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水冷エンジン搭載!スポーツスターS試乗「意外なことに?ちゃんとハーレーダビッドソン」

スポーツスターS ハーレーダビッドソン

脳内で賛否両論がぐるぐる「水冷スポーツスター」

数ヵ月前にハーレーダビッドソンが新世代のスポーツスターSを発表して以来、僕の脳内では賛否両論がぐるぐる渦を巻いていた。もちろん、バイクメディアで仕事をする人間としては、革新的なニューモデルの登場は大歓迎である。でも昔からスポーツスターシリーズが大好きで、2006年から15年に渡ってXL883を愛用してきた身としては、エッ、これのどこがスポーツスターなの?と思わないでもない。

そういった事情を編集部の担当者に話したところ「じゃあ2回に分けて書いてみませんか。たとえば、1回目はテスターとしてのレポート、2回目はスポーツスター好きの主観という感じで」との打診をもらったので、今回はその言葉に甘えさせてもらうことにした。と言っても、完全に別の視点で書き分けるわけではないのだが……。

ハーレーらしくないルックスと軽さ

新世代のスポーツスターSと初めて対面して、僕がビックリしたのは、ロゴとマークが無かったら、どこのバイクだからわからないことである。
もっとも、真横から見たガソリンタンクとテールカウル、アップタイプの2本出しマフラーは、かつてAMAフラットトラックレースで無敵の強さを誇ったXR750を思わせるけれど、マシン全体を見てハーレーダビッドソンらしいとは言い難い。その印象は少し前にデビューしたアドベンチャーモデルの「パンアメリカ」、過去に販売された水冷エンジンの「Vロッド」や「ストリート750」にも通じる話だが、伝統を重んじるハーレーダビッドソンの主力機種に、まさかそんな印象を抱く日が来るとは。

いろいろな意味で「らしくない」新世代のスポーツスターSだが、低く構えたスタイル、ファットなフロントタイヤ、かなり多めのトレール、フォワードコントロール式ステップなどは、近年のスポーツスターシリーズで主力的な感があったXL1200XSフォーティーエイトに通じる要素。
機能面もある意味「ハーレーらしくない」。エンジン特性が切り替わるライディングモードや、6軸IMUによるバンク角連動のABS/トラクションコントロール/スリップ制御など最新スポーツバイクのような電子制御機構を備えている。価格は185万8000円〜。

裏を返せば、シリンダーヘッドとシリダーに刻まれた冷却フィンやエンジン右側のプッシュロッドチューブ、左側の巨大なプライマリーカバー、スチール製ダブルクレードルフレーム、アナログ式メーター、個性的なスイッチボックスなどが、僕にとってはスポーツスターらしさとハーレーダビッソンらしさを形成する重要な要素だったのだろう。
ただしその事実を把握した僕は、伝統に執着することなく「新時代のスポーツスターを生み出そう!!」という開発陣の意気込みを感じることとなった。

そして試乗前に数分ほど押し引きをしてみると、今度は予想外の軽さにビックリ。事前にスペックを眺めて装備重量228kgという数値を発見したときは、何かの間違いかと思ったものの、250kgをオーバーしていた既存のスポーツスターシリーズよりは明らかに軽い。
この数値が真実だったら、インディアン スカウトシリーズ(252kg~)や、ドゥカティ ディアベルシリーズ(249kg~)といったライバル勢に対して、大きなアドバンテージになるだろう。
価格的にはライバルではなさそうだけれど、参考までにホンダ・レブル1100はMT:223kg/DCT:233kgである。

走り始めた瞬間からワクワク

では実際に乗っての印象はどうだったか。誤解を恐れずに記すと、既存の空冷45度Vツインシリーズとの共通点がまったくないにも関わらず、ちゃんとスポーツスター……と言うより、ハーレーダビッドソンだった。

具体的な話をするなら、古きよき時代を思わせる要素はまったく見当たらず、最新の技術を随処に投入しているのに、水冷60度Vツインはこれぞ内燃機!と言いたくなる野性味あふれるフィーリングを披露してくれるし、乗車中にステップへの荷重抜重を意識すれば、既存のハーレーダビッドソン各車と同様に車体はきっちり反応を示してくれる。

いずれにしても、荒馬にまたがっているかのような高揚感、市街地を走り始めた瞬間から味わえるワクワク感、日常域で得られる操る手応えは、紛れもなくハーレーダビッドソンで、僕はふと四半世紀ほど前の自分の印象、初体験となるリジッドマウントのスポーツスターや、キャブレター時代のダイナ/ソフテイルなどに、ことごとく感激したことを思い出してしまった。


1252ccの水冷DOHC4バルブVツインエンジン「レボリューションマックスT」

「レボリューションマックスT」と名付けられた新世代Vツインエンジンは、パンアメリカ用と基本設計を共有しつつもトルク重視の特性に。シリンダー挟み角は既存のVロッドやストリート750と同様の60度だが、それらのコンロッド位相がゼロだったのに対し、このエンジンは30度位相を採用。爆発タイミングは90度Vツインや270度位相のパラレルツインと同じとなっている。

距離が進むに連れて好感を抱いたのは、エンジンの低回転域と車体のバンク角。まずは前者の説明をすると、今どきの高性能ツインはどんな領域でも過不足ない反応を示す一方で、低回転域がいまひとつ面白味に欠けることが少なくないのだけれど、スポーツスターSが搭載する「レボリューションマックスT」は、あえて高めのギアを選んで巡航したくなるほどに、低回転域の表情が豊か。この特性ならロングランがなかなか楽しめそうだ。

一方のバンク角は、今回の試乗ではワインディングロードを走っていないので断言はできないものの、少なくとも近年のローダウン系スポーツスターよりは相当に深い。
僕の場合は既存のフォーティーエイトやアイアンなどに乗っていると、市街地の曲がり角でもバンクセンサーを擦ることがあったのだが(だから峠道では、できるだけ車体を寝かさない意識が必要だった)、スポーツスターSでは一度もそういう場面には遭遇しなかった。

なお試乗前に編集部から「アメリカ仕様は最高出力が公表されていて122馬力もあるのに、フロントブレーキがシングルディスクで大丈夫なんでしょうか?」と言われていたので、ブレーキに関する僕の印象を記すと、大丈夫と言えば大丈夫である。
峠道を激走したら物足りなくなる可能性はあるけれど、それは既存のほとんどのスポーツスターも同様だったし、このモデルの場合は専用開発と思われるブレンボのタッチがすこぶる良好で、頭のいいABSが装着されているから、むしろ既存のスポーツスターよりいいのかもしれない。

インナーチューブ径43mm、フルアジャスタブルの倒立フォークはショーワ製で、ストロークは92mm。フロントタイヤはクルーザーの世界でも異例の太さとなる160mm幅で、できるだけナチュラルな操安性を得るため、プロファイルはかなり尖っている。
アドベンチャーツアラーのパンアメリカと同様に、ブレーキパーツはブレンボで統一。フロントマスターはセミラジアル式で、指のかかり具合とタッチは絶妙だった。ちなみに、ハーレーダビッドソン初のブレンボ採用車は2006年型Vロッドシリーズである。

アドベンチャー「パンアメリカ」があったからこそ?

さて、そんなわけで新世代のスポーツスターSに驚きと面白さを感じた僕だが、気になる点がなかったわけではない。
近年のローダウン系モデルと比べると、足つき性は明らかに悪くなっているし、低めのハンドルとフォワード式ステップが生み出す「く」の字型ライディングポジションになじめない人もいるだろう。また、フロントに160mm幅という超極太タイヤを履くわりに、ハンドリングは上手くまとめられているものの、厳密に言うと低速域における前輪の挙動には不自然さがあるし、リヤにプログレッシブな動きが期待できるリンク式モノショックを採用しているにも関わらず、乗り心地は良好とは言い難い。

まあでも、そのあたりは確信犯なのかも……と思わないでもない。
何と言ってもハーレーダビッドソンは少し前に、僕が述べた気になる点のほとんどを解消している、パンアメリカを発売したばかりなのだから。逆にパンアメリカが存在したからこそ、ハーレーダビッドソンは新世代スポーツスターの第1号車となるSで、インパクト&スタイル重視と思える開発ができたのだろう。

冒頭で述べたように、試乗前の僕の脳内では賛否両論がぐるぐる渦を巻いていたのだが、今現在は、これはこれで大いにアリだと思っている。とはいえその一方で、オールラウンドに使えるアドベンチャーツアラーのパンアメリカが存在しても、オーソドックスなライディングポジション&タイヤサイズと、乗り心地のいい前後サスを採用したスポーツスターの「T」や「ST」などを欲するライダーはいるんじゃないだろうか……とも感じているのだった。

リンク式モノショックなら良好な乗り心地が実現できるはず……なのだが、実際のスポーツスターSの乗り心地は、既存のツインショック車と似たり寄ったり。ストロークは51mm。スイングアームは2本のパイプを組み合わせる独創的な構成。
リヤショックもショーワ製でフルアジャスタブル式。テールカウル左下にはリモートタイプの油圧式プリロードアジャスターが備わる。なおライダーの想定体重は68kg以下~132kgとなっているが、プリロードアジャスターを最弱のゼロにしても硬い印象は消えなかった。
専用設計のラジアルタイヤはダンロップGT503。エンジンの基本設計を共有するパンアメリカがチェーンドライブだったのに対して、スポーツスターSはハーレーダビッドソンの王道と言うべきベルトドライブを採用。
メーターは4インチの丸形カラー液晶で、写真の状態は速度計と回転計を表示したスタンダードな状態。燃料計、ギヤポジション、時計なども表示される。
クルーズコントロールスイッチ、メーターのメニュー操作スイッチが並ぶ左スイッチボックス。グリップヒーターのスイッチはあるが、ヒーター自体はオプション。
ライディングモードの操作スイッチ、音楽再生機能の操作スイッチ、ボリューム調整スイッチがならぶ右スイッチボックス。

スポーツスターSの足着き&ライディングポジション

両手両足を前方につき出すライディングポジションは、操る楽しさに貢献。
ただし日常的に使うなら、あるいは、小柄なライダーの視点で考えるなら、ハンドルグリップ位置はもう少し高く、もう少しライダー寄りでもいいような気がする。755mmのシート高は、今どきのクルーザーの基準ではやや高い部類で、右側のアップマフラーが横方向に張り出していることもあって、足着き性は良好とは言えない。なお、テスターを務めた筆者の身長は182cm。

テーパータイプではないけれど、中央を1インチ、左右を22.2mmとしたハンドルバーは、ハーレーダビッドソンのこだわりを感じる構成。バーエンド式バックミラーの視認性はなかなか良好だったが、混雑した市街地などでは幅の広さがネックになりそう。
暴力的な加速を適度に受け止めてくれるシートは、フラットトラックレーサーのXR750を思わせるスタイル。標準はシングル仕様だが、純正アクセサリーとしてパッセンジャーピリオンキットが存在する。
シートはキー操作で外すことができるが、シート下スペースはかなり限られたもの。ハーレーダビッドソンジャパンによると、配線スペースなども考慮するとETCをシート下に収めるのは厳しいようだ。

ハーレーダビッドソン スポーツスターS主要諸元

[エンジン・性能]
種類:水冷4サイクルV型2気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク:105mm×72.3mm 総排気量:1252cc 最高出力:── 最大トルク:125Nm<12.7kgm>/6000rpm 変速機:6段リターン
[寸法・重量]
全長:2270 全幅:── 全高:── ホイールベース:1520 シート高:755(各mm) タイヤサイズ:F160/70TR17 R180/70TR16 車両重量:228kg 燃料タンク容量:11.8L
[車体色]
ビビッドブラック、ストーンウォッシュホワイトパール、ミッドナイトクリムゾン
[価格]
ビビッドブラック:185万8000円
ストーンウォッシュホワイトパール、ミッドナイトクリムゾン:188万7700円

ビビッドブラック(185万8000円)
ストーンウォッシュホワイトパール(188万7700円)
ミッドナイトクリムゾン(188万7700円)

レポート●中村友彦 写真●山内潤也/ハーレーダビッドソン 編集●上野茂岐

CONTACT

https://www.harley-davidson.com/jp/ja/motorcycles/sportster-s.html

ハーレーダビッドソンカスタマーサービス TEL:0800-080-8080

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