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【新型カワサキZ900RSブラックボールエディション】1DAY試乗。好敵手ホンダCB1000Fと比較

外観のフォルムは変えず、中身を進化熟成させた新型Z900RS

カワサキの人気モデルだったZRX1200ダエグの生産終了を受け、2017年12月から市場へ投入されたZ900RS。ストリートファイターのZ900をベースとしつつ、これに専用パーツ採用でネオレトロな外観に仕上げた同車は、カワサキの70年代の名車だった海外向けのZ1(900スーパー4)、国内版のZ2(750RS)をオマージュしたフォルムでまとめられている。

そのデザインと性能が国内で受け入れられたことは、18年から24年まで401cc以上の大型バイククラスで国内販売1位を記録したのが実証している。往年の名車を連想させるカラーリング、ティアドロップ型のタンクをはじめとした丸みのある流麗なフォルムが、ベテランライダーのみならず、リアルタイムで空冷Zを知らない若い世代にも浸透し、バイクのソリッドな美しさとして認められたのだ。

そんなZ900RSが第2世代として進化を果たしたのが、このほど発売された新型だ。ただし一見すると従来との違いは分からず、新旧を並べればサイレンサー部の長さと触媒ボックスの形状、操作スイッチのレイアウトといった差異が分かる程度。売れているモデルの見た目を大きく改変することはないとの考えだろうし、それは賢明な判断だろう。

変えたのは中身のほうで、従来のケーブル式スロットルから電子制御スロットルへ変更。これにより、クルーズコントロールが標準装備され、従来よりも緻密なトラクションコントロールが可能となったようだが、ライダーが最も実感できるのは、スムーズでリニアな加速フィーリングに磨きがかかったことかもしれない。その進化を、先頃登場したCB1000Fとの比較試乗も含めて実感してみたい。

日本で販売される新型Z900RS(2026年モデル)の標準仕様に相当するのが、今回試乗紹介するブラックボールエディション
エディション名の通り、全身黒基調でタンク両サイドの太ライン部はダークグレー系を配色。従来車との主な識別点は、長いマフラー部、大きくなった触媒内蔵のチャンバー室、ハンドル形状など
上級モデルのZ900RS SE。黒×橙のファイヤーボールカラーで、オーリンズ製リヤサス、ブレンボ製フロントブレーキほか日本仕様では前後ドライブレコーダーも標準装備で、価格は183万7000円

ライポジの適正化と、扱いやすさを増した爽快なパワーフィール

身長173cm股下約80cmのライダーがZ900RSにまたがると、両足接地ではほんのわずかにカカトが1~2cmほど浮く。しかし、車体の保持に不安のない足着き性で、これは試乗後に実感したことだが、コシのあるクッション性も改善点だったようだ。また新型のもうひとつの改善点がライポジだ。

ハンドルの左右幅を50mmほど短くし、位置を38mmほど下げたようで、広めで高めだった従来のグリップ位置が、少し上体が前傾する方向へ変更された。とはいえ、またがるとこれが自然にごく緩い前傾で、まったく違和感がない。18年に初期型を試乗した際、「小柄なライダーだとやや幅広く感じるかもしれない」と記述しているから、スタンダードスポーツとして適正化されたのだろう。

身長173cm、体重76kg、股下80cmのライダーが着座した場合。ハンドル、シート、ステップの3点関係も自然で違和感がなく、両足接地ではカカトが1~2cmほど浮くが不安感は皆無
従来型Z900RSのライポジ。ステップ、シートの位置関係は大きく変わっていないが、ハンドルはアップで広がり気味だった。新型にまたがると、これが適正化されたことが実感できる

走り出しても、早速改良が実感できる。これも過去の試乗記で「惜しいのは、低速ギヤ(1~3速)でのエンジンレスポンスに過敏さがある点で、シフトダウン時などスロットルを煽りつつ回転を合わせてクラッチをつなぎたいとき、意図した回転に落ち着かず違和感を残し、エンジンレスポンスに揺れが出やすい」とあった。

こうした印象を新型はまったく感じさせず、エンジンは滑らかかつ軽快に回転上昇。過敏さが払拭され、軽快に回っていく回転感は新型が手に入れた美点で、一方で4気筒らしい低回転の粘りもある。トップ6速のメーター読み60km/hでは回転は2600rpm付近を指すが、そうした低回転からでもギクシャクすることなくスロットルのひねりだけでジワッと加速していく。

変速でズボラをしても街を流せるわけだが、積極的に変速してもシフトフィールは好印象。いい意味でぬるっと滑らかに変速する。試乗車は走行100kmに満たない新車だったが、標準でクイックシフター付きの変速ペダルは、クラッチ操作不要で実に滑らかにアップダウンを行える。ブレーキも通常の街走りならコントロールしやすく感じ、車体を安定させるようなリヤの引きずり制動もやりやすい印象だった。

高速に上がる。料金所からロケットスタートすると、エンジンは低回転から引っかかりなど微塵もなく爽快に回転上昇。トップ6速のメーター読みで80km/h≒3500rpm、100km/h≒4400rpm、120km/h≒5300rpmと車速を増す。無論、前述の回転域などZ900RSにとって十二分に余力のある速度レンジで、たがを外せばそこから先の法外な速度域へと余裕で向かっていく。ピークトルクの7700rpmを超え、9300rpmの最高出力発生回転数まで淀みなく回っていくだろう。

サスペンションの挙動も、低速から高速まで突き上げ感もなく小気味良く凹凸をいなしながら進む。適度に緩い前傾のライポジとなったZ900RSは、相応にライダーの上体に風が当たるものの、さほど辛くない。2眼の砲弾型メーターが風を適度に整流しているのかもしれない。

CB1000F(左)とZ900RS(右)の2台で東名・新東名と走り継ぎ、西伊豆を目指す
Z900RSブラックボールエディション:エンジン

■電子制御スロットル採用のほか、吸気ファンネル、カムプロフィール、ECU設定も刷新し低回転域での扱いやすさと高回転域での性能向上を図った948ccの並列4気筒エンジンは、最高出力116ps/9300rpm(従来111ps/8500rpm)、最大トルク10kgm/7700rpm(従来10kgm/6500rpm)を発揮。カワサキ製並列4気筒は概して中~高回転へと向かう回転上昇がシャープで、パワー感も弓なりに上がっていくような感触が特徴的で、特に空冷のザッパー、Z1000Jなどの空冷Z後期型から今に通ずるものがある。そうした個人的な好みもあって、筆者は空冷ザッパー系のGPz750、ZR-7を乗り継いだ。

Z900RSブラックボールエディション:エンジン

■電子制御スロットル採用をはじめ進化部分はストリートファイター系のZ900に準ずるもので、クルーズコントロール、トラクションコントロール、クイックシフター等は装備されるものの、パワーモード切り替えは非装備。

爽快な動力性能と挙動のZ。ゆったりとした挙動に万能さ感じるCB

Z900RSブラックボールエディション:西伊豆スカイラインにて

東名高速から伊豆縦貫道を経由し、西伊豆スカイラインへと進む。Z900RSとCB1000Fを交互に乗り換えつつ進むが、どちらも甲乙つけ難い楽しさがある。強いて言えば、CBのほうが中立から倒し込みへの移行が軽快(広めのハンドル幅によるのかもしれない)。一方のZ900RSは、操舵の手応えを持ちつつライダーの体重移動も加えて倒し込んでいく感じ。Zのそれは、スポーツバイクらしいニュートラルなハンドリングとも言えるが、道(ライン)の勝手がわからないルートを手探りで進むときは、CBの低めの着座位置とややアップなハンドルが安心感を生む。

Z900RSブラックボールエディション

曲率の読めないコーナーで、当て舵気味に上体をリーンアウトで入ったり、リーンインで入ったり、腰をずらしてインに重心移動したりといった自由度が高いからだ。そして、Z900RSのダイレクト感のある車体の挙動と比較して、CBの挙動が若干穏やかなのも安心できるポイントなのかもしれない。

勝手知ったるワインディングを走るとき、Z900RSでためらいなく攻めるのは楽しいものの、オールラウンドに穏やかにクリアするという面で、CB1000Fに利点があるように感じた。

気持ちのよい西伊豆の中速ワインディングを進んで脇道に折れると、日陰の多い林間の細いくねくね道へと変わる。路面には樹の実や枝、落ち葉がそこかしこに散らばり、足元を掬われそうな行程だ。時に車体を立ち気味に修正したり、操舵でラインを微調整したり、そんなときにも具合がいいのはCB1000Fのほうで、前後のブレーキも微調整で使いやすい。

一方Z900RSは、エンジンのオンオフでの反応は従順で扱いやすいものの、微制動などでの操作が若干シブい。慣らし段階ゆえのフォークの作動性か、ブレーキ効力の立ち上がり方のシブさか分からないが、荒れて不安要素の多い路面での融通性では、ひとまずCBに軍配が上がるかもしれない。

また付け加えるなら、標準装着タイヤも今回の行程での印象に影響がありそうだ。Z900RSに標準装着のタイヤはダンロップのGPR-300。ライフ性ほかコストパフォーマンスも重視したスポーツタイヤだが、一方のCBはよりスポーツ走行も重視したブリヂストンのS22。Z900RSにもっとハイグリップ系タイヤを装着したら、スポーツ性や荒れた路面での融通性などで、もうワンランク上の好印象が見えたかもしれない。

CB1000F

■70後半~80年代の名車CB-Fシリーズのフォルムをオマージュしつつ、現代の技術でまとめられたCB1000F。ビッグネイキッドらしい風格とライポジながら、先代CB1300SFから大幅に軽量化したパッケージングが万能な走りにつながっている。Z900RSよりも風格があるように見えつつ車重は2kg軽い214kg、パワーモード切り替えを標準装備しつつZより13万2000円安い価格(139万7000円)も魅力。これにオプションのクイックシフター(価格3万3880円)を付ければ、さらに万能となる。

Z900RSブラックボールエディション各部紹介

Z900RSブラックボールエディション:ハンドル周り

■左右幅で50mm、高さを38mm低くしたハンドルにより、上体の姿勢はより自然なスポーツポジションに。2眼でケースボディが砲弾型のメーターは、ネオクラシックなフォルムにフィットする指針式の速度&回転計を採用。


Z900RSブラックボールエディション:メーター

■2眼メーターの間に各種表示を集めた液晶パネルを配置。ここにギヤ段数、時計、オド&トリップ、燃料残量や水温などを表示。


Z900RSブラックボールエディション:左グリップ側の操作系

■左グリップの操作系。ウインカー、ハザード、ホーンやヘッドライトのハイ・ロー&パッシングといった基本のスイッチのほか、クルーズコントロールの設定、各種モード切り替え&設定ボタンを配置。


Z900RSブラックボールエディション:フロント周り

■標準仕様と言えるブラックボールエディションに装備のフォークはショーワ製倒立タイプでインナーチューブ径は41mm。伸圧減衰力とプリロード調整付き。Kawasakiロゴが入るラジアルマウントブレーキキャリパーはニッシン製。


Z900RSブラックボールエディション:後輪周りと排気系

■スイングアームより上部に、リンクを介して配置されるホリゾンタルバックリンクリヤサスペンション。ショック本体はショーワ製で伸び側減衰とプリロード調整が可能。装着タイヤはダンロップ・スポーツマックスGPR-300。


Z900RSブラックボールエディション:燃料タンク

■往年のZへのオマージュも込められた造形のティアドロップ(涙滴)型燃料タンクは17L容量で、同クラスのネイキッドモデルと同等のサイズを確保。


Z900RSブラックボールエディション:新作のタックロール入りシート

■ロール間のピッチを広げ、各ロール部に入るウレタンの厚みを増して快適性を向上させたシート。テール後部横に付く赤い反射板ステーが後部荷掛けフックを兼ね、前側には円形ロッド型のフックを装備。その前側にはキーロック付きヘルメットフックも装備。

「ZvsCB」とは言え、走りの各シチュエーションでどちらも圧勝しない。好バランスの2台

Z900RSブラックボールエディション

丸一日を、ライターの中村友彦氏と同行し(※中村氏のCBvsZ比較試乗記はモーターサイクリスト5月号で掲載中)、Z、CBの2台の印象をああでもないこうでもないと語りながら走ったわけだが、正直なところどちらかが圧勝ということにはならなかった。

個人的にはエンジンフィールならZ900RS、あらゆる道での万能性ならCB1000Fという評価に落ち着くが、そこは両車ともスタンダードなネイキッドスポーツである。エンジンフィールなら6対4でZ、万能性なら6対4でCBといった程度の差かもしれず、どちらも圧勝ではなく、この評価が人によっては逆なこともあったりしそうだ。

そういう意味で、現代のZとCBは、実にいいファンライド性と万能性をともに両立していて、いずれのオーナーとなっても、「隣の芝生が青い」的な気分にはならないだろう。

ちなみに、市街地、高速、ワインディングを含んだ約300kmでの行程での実測燃費は、Z=19.9km/L、CB=19.6km/L。こちらもトータル性能と同様、実に拮抗していたのを付記しておこう。

Z900RSブラックボールエディション(手前)、CB1000F(奥)

Z900RSブラックボールエディション主要諸元

Z900RSブラックボールエディション

■エンジン 水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク73.4×56mm 総排気量948cc 圧縮比11.8 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力85.0kW(116ps)/9300rpm 最大トルク98Nm(10.0kgm)/7700rpm 燃費20.5km/L(WMTC値)
■変速機 6段リターン 変速比1速2.600 2速1.950 3速1.600 4速1.389 5速1.217 6速1.069 一次減速比1.627 二次減速比2.867
■寸法・重量 全長2100 全幅815 全高1135 軸距1465 シート高810(各mm) キャスター25° トレール98mm  タイヤF120/70ZR17 M/C 58W R180/55ZR17 M/C 73W 車両重量216kg
■容量 燃料タンク17L エンジンオイル4L
■車体色 エボニー
■価格:152万9000円

ホンダCB1000F主要諸元

CB1000F

■エンジン 水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク76×55.1mm 総排気量999cc 圧縮比11.7 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力91kW(124ps)/9000rpm 最大トルク103Nm(10.5kgm)/8000rpm 燃費17.9km/L(WMTCモード値)
■変速機 6段リターン 変速比1速2.642 2速1.941 3速1.583 4速1.333 5速1.137 6速0.967 一次減速比1.717 二次減速比2.812
■寸法・重量 全長2135 全幅835 全高1125 軸距1455 シート高795(各mm) キャスター25°00′ トレール98mm  タイヤF120/70ZR17 M/C(58W R180/55ZR17 M/C(73W) 車両重量214kg
■容量 燃料タンク16L エンジンオイル3.5L
■車体色 ウルフシルバーメタリック(ブルーストライプ)、ウルフシルバーメタリック(グレーストライプ)、グラファイトブラック
■価格 139万7000円

レポート●モーサイ編集部・阪本一史  写真●山内潤也

CONTACT

■Z900RSブラックボールエディション
カワサキモータースジャパン
TEL0120-400819(お客様相談室)
https://www.kawasaki-motors.com

■CB1000F
ホンダ
TEL0120-086819(お客様相談センター)
https://www.honda.co.jp/motor/

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