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2026年の大阪・東京モーターサイクルショーに参考出品されたホンダの電動バイク、WN7。第102回箱根駅伝では先導用の白バイとして使用され、注目を浴びたモデルである。そんなWN7はいったいどういう車両なのか、イギリス人モーターサイクルジャーナリストでマン島TT参戦などレース経験も豊富なアダム・チャイルド氏が、スペインでの試乗インプレッションをレポートする。
※本文で言及されている周辺事情はヨーロッパのものです。充電規格などは日本国内とは異なります。
二輪最大手のホンダで初の電動モーターサイクル
ホンダが初の量産型電動バイクとしてWN7を発表したことは、ホンダにとってだけでなく、バイク業界全体にとっても大きなニュースである。スクータータイプの優れた電動バイクはBMWなどがすでに販売しており、またがるタイプの趣味的な電動モーターサイクルもゼロモーターサイクルスやライブワイヤー、カンナムといったブランドが小規模で取り扱っている。しかし、市場最大手であるホンダが、またがるタイプの完全電動モーターサイクルを量産するのは今回が初めてだ。しかも、専門のショップではなく、一般のディーラーで購入できるという点も特筆すべきであろう。

WN7は、2024年のEICMA(ミラノショー)で原点となるコンセプトモデルの「EV Fun Concept」が初公開され、25年には量産試作車が発表された。そして26年、ついに実車が市場に登場。WN7には、定格出力が11kWと18kWの2つのバリエーションがあり、それぞれA1免許とA2免許に対応している。以降は基本的に18kWモデルについて述べる。公表スペックでは最高出力は68馬力、最大トルクは10.2kgf・mという力強い数値を誇り、航続距離は140km、最高速度は129km/hとされている。

充電ポートは、一般的なICE車では燃料タンクのキャップがある場所にあり、押して開けるだけのシンプルなフラップが付いている。充電時間は短く、高速道路のサービスエリアなどで見かけるCCS2急速DC充電器(モード4)を使用すれば20%から80%までわずか30分、より一般的な壁掛け式の6kVA AC充電器(モード3)では0%から100%まで2.4時間で充電可能だ。家庭用電源(モード2)からの充電は、0%から100%まで5.5時間かかる。モード2ケーブルは標準装備されているが、モード3ケーブルはオプション。なお現時点では、電動モーターサイクルでモード4の急速充電器に対応しているのはWN7だけである。

WN7では、ホンダはこれまで保守的だった部分で挑戦が試みられている。フレームレス設計が初めて採用され、ホンダの二輪車としては初めてベルトドライブを採用しているのだ。車体寸法はホンダの人気モデル、CB750ホーネットをベースとしている。


電子制御面では、複数のライディングモードとライダーアシスト機能を搭載。その中には、回生ブレーキ調整機能も含まれている。また、ギヤもクラッチも装備していないが、ICE(内燃機関)車のリバースギヤにあたる後退機能も採用されている。走行音はほぼ無音で、慣れるまでには時間が掛かるかもしれない。

私はこのホンダの画期的なEVに試乗するため、スペイン南部へ向かった。
スリムで未来的、質感も良い
通常、プレス向けのニューモデル試乗会は昼食やコーヒー休憩、給油以外は終日走行するスケジュールだが、WN7はほかの電動モーターサイクルと同様にICE車より航続距離が短いため、今回のテストは主にバイクの機能性を体感することに重点が置かれた。試乗コースは、午前中はWN7の主用途となるであろう街乗りを楽しみ、その後、マラガ近郊の丘陵地帯で少し走り込むというもの。天候は快晴だった。なお、このようなリラックスした形式の試乗ではあったが、私はWN7の真価を確かめるため、従来のICE車と同じように限界まで走らせた。

WN7が電動であること、そしてガソリンエンジン特有の音を発しないという理由だけで、WN7を好まない人もいるだろう。1万2999ポンド(日本円に換算すると、記事制作時のレートで約276万5000円)という価格は、同社のCB750ホーネット(7495ポンド。日本円に換算すると、記事制作時のレートで約159万4000円)のような従来のICE車と比較すると、確かに高価に見える。しかし、それは本質を見誤っていると言える。今のところは、WN7の比較対象は市場に出回っている他の電動モーターサイクルとすべきだろう。何しろ、ホンダは業界最大手であり、世界的な巨大企業が初の量産型電動モーターサイクルを発売するとなると、それは大きなニュースだ。まさに電動モーターサイクルの現状を測る指標と言えるのである。

まず外観だが、実物を見ると特にその美しさが際立っている。電動モーターサイクルのデザイナーは、従来のICE車のデザイナーのように制約を受けることがない。ラジエターや吸気系のスペースを確保する必要もなく、深刻な熱や排気ガスの問題もなく、燃料タンクもない。そのため、より自由な設計が可能になっているようだ。

最新技術を満載しているにもかかわらず、WN7は驚くほどシンプルな外観を保っている。従来のエンジンやラジエター、排気システムを搭載する必要がないため、このネイキッドスタイルの電動モーターサイクルは驚くほどスリムだ。ミラーを除けば、最も幅の広い部分はフロントフォークのすぐ外側にある。後方から見ると、特にスリムで未来的な印象だ。

ホンダは長年の経験を生かし、従来の設計思想から大きく逸脱することなく開発を進めた。WN7はCB750ホーネットとほぼ同じ車体寸法とステアリングジオメトリーとなっており、ホイールベースはCB750ホーネットより長く、リヤタイヤは150/60と、ホーネットの160/60よりも細めに設計されている。バッテリーケースはメインフレームを兼ねているため軽量化に貢献しており、乗り心地と制動性能は、おなじみのショーワ製サスペンションとニッシン製ブレーキが担う。デザインは洗練されており、ホンダ電動モーターサイクルのフラッグシップモデルに期待されるとおり、高い品質と仕上がりを実現している。


スリムでしっかりとした、誰でも乗り降りしやすい800mmのシートに座ると、視界はなじみ深いようでいて、同時に新鮮さも感じられる。 5インチTFTディスプレイは同社製のほかのモデルのいくつかで使用されている物と同じ物が使われている。スイッチ類もほかのホンダ車と共通で、安心できる「ホンダ」感を醸し出している。キーレスイグニッションのスイッチは側面にあり、明らかにCBR1000RR-Rファイアブレードから流用されている。だが、ほかのホンダ車と異なる部品・構成も、数多い。



WN7にはクラッチレバーやシフトペダルがなく、手元にギヤを切り替えるスイッチもない。リヤブレーキについては、ほかの電動バイクでは自転車やスクーターのように左レバーで操作するようにしているところもあるが、ホンダは伝統的なペダル方式を踏襲している。



イグニッションをオンにすると、WN7は静かに始動する。フロントブレーキを握り、通常のスターターボタンと同じ位置にある「ON」ボタンを押すと、走行準備完了。ガレージや駐車場からを移動させる必要がある場合は、左スイッチボックスの手前側/奥側にあるトリガーのようなパドルスイッチを長押しして「ウォーキングスピードモード」を起動し、そのうえでアクセル操作を行えば時速5km以下の範囲内で後退/前進できる。これは、特に坂道で後退する必要がある場合に、非常に便利で効果的な機能だ。発進準備ができたら、アクセルをひねるだけで発進。とても簡単である。

【後編に続く!】
ホンダ WN7 諸元(ヨーロッパ仕様18kWモデル)
【原動機・性能】種類:電動モーター 定格出力:18kW<24.5ps> 最高出力:50kW<68ps> 最大トルク:100Nm<10.2kgf・m> 【バッテリー・性能】種類:リチウムイオン 電圧:349.44V 充電時間(0→100%):2時間30分(モード3での充電時) 一充電航続距離:140km 【寸法・重量】全長:2,156 全幅:826 全高:1,085 ホイールベース:1,480 シート高:800(各mm) 車両重量:217kg タイヤサイズ:(F)120/70R17 (R)150/60R17 【カラー】グレー、ブラック、マットブラック
※日本国内導入未定

report:Adam Child photo:Honda Motorcycles/Motocom まとめ:モーターサイクリスト編集部
ホンダ
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