スタンダードな原二スクーターのアドレス125は、2023年のモデルチェンジでスポーティなスタイルからエレガントなスタイルに変更された。今回のモデルチェンジでもその方向性を踏襲し、見た目は大きく変わっていないとも言える。だが、実はエンジンやフレームなどさまざまな箇所に変更が加えられ、実力が大幅に高められているのだ!
大ヒット御礼の大盤振る舞い!?
アドレス125は世界各国で販売されているグローバルモデルであり、そのうちインドでは売れ筋モデルとして莫大な実績を誇る。それだけに改良には力が入り、また、スケールメリットのおかげで新パーツが採用されても価格の上昇は比較的緩やかだ。新型アドレス125はそういった恩恵を強く実感させるスクーターだ。
デザインコンセプトは「Further Refined Iconic Presence」、「曲面と、流麗なラインが織りなす、新しい存在感」。デザイン性と実用性の両方に妥協しない、新しい洗練されたデザインを目指している。
パワーを損なうことなく低燃費を実現したSEP(スズキ・エコ・パフォーマンス)エンジンは、市街地走行をより快適かつ効率的なものにするために吸排気カムのプロフィールを最適化し、CVTの設定も変更。エアクリーナーとマフラーも改良されている。さらに、ねじり剛性を高めつつ軽量化も果たした新型フレームを採用。
新型エンジンの構成イメージCG。黄色の部分が刷新されたパーツだ。新設計のフレームに合わせてクランクケースも刷新されている。
エアクリーナーボックスは容量を10%拡大。また、吸気管の長さおよび断面積を最適化することで、高回転域における出力損失を抑制するとともに、より低回転からトルクを発生させる特性にも寄与している。
ステンレス鋼製マフラーはエキゾーストパイプの形状を見直し、低速域でのトルク向上に貢献。さらに、サイレンサーボディ内の触媒コンバーターを廃止し、マフラーの小型化を実現している。
マフラーカバーのデザインはよりスタイリッシュなデザインに変更された。なお、タイヤ交換などの作業時にマフラーを取り外すことなくリヤホイールを脱着できるレイアウトにするなど、整備性にも配慮が行き届いている。
フレームは従来モデルに比べてねじり剛性を25%向上させながら、約1kgの軽量化を実現。高い直進安定性と優れたコーナリング性能に寄与する。
もちろん、コミューターとして機能・収納面の改良も数多く施されており、日本仕様はリヤキャリヤを標準装備。これで価格が従来型から1万円も上がっていないのは驚きというほかない(従来型は27万3900円だったので上がり幅は6600円)。
最新型はグラブバーとしても機能するリヤキャリヤを標準装備しており、トップケースをスムーズに装着できる。従来型に純正アクセサリーのリヤキャリヤを装着すると28万7100円(工賃除く)だったので、ある意味値下げとも言える。なお、リヤキャリヤを標準装備しているのは世界でも日本仕様のみで、海外仕様では従来型同様のグラブバーが付く。
燃料タンク容量は従来型より0.3L拡大され、5.3Lとなった。テール部にある給油口の蓋は、鍵を直接挿して外す方式から、メインキーシリンダーの操作で解錠する外蓋と手で開けられる内蓋の組み合わせに変更。外蓋の内側には、給油時に内蓋を置くためのラックが設けられている。
メインキーシリンダーは駐車時に鍵穴をガードできるシャッター付き。鍵を挿してOFFの位置から左に回せばシートを解錠、押しながら右に回せば給油口の外蓋を解錠できる。
シート下トランクスペースは従来型から2.6L拡大され、24.4Lとなった。最低地上高160mmを確保するために底が浅めで、ヘルメットは形状によっては中に収められないが、シートヒンジ部の左右にヘルメットの金具を掛ける突起形ヘルメットホルダーが1個ずつ装備されている。
フロントインナーラックは、従来型では左側のみだったが、モデルチェンジで左右両側に備わるようになった。中央にはちょっとした買い物袋を掛けるのに便利なフロントフックを採用。
左側のフロントインナーラックの上方には、スマートフォンの充電などに便利なUSBソケットを装備している。青く光るライトが付いているので暗い場所でもソケットが見えやすい。
シート先端の下方には、折りたたみ式でコンパクトに収納できるホルダーが備わる。カバン等荷物の落下を抑止するストッパー付きだ。
アナログ指針式の速度計と、時計や燃料計などを表示する液晶ディスプレイを組み合わせたメーターパネル。スピードメーターの周りには「エコドライブイルミネーション」を搭載しており、通常運転の状態はブルー、燃費の良い運転状態ではグリーンで点灯する。
メッキリム付きのLEDヘッドライトはデザインを変更。また、エンブレム下にU字型に発光するポジションランプを配置している。ウインカーはクリアレンズとオレンジ電球の組み合わせ。
ヘッドライトスイッチはハイ/ロー切り替えに加えてパッシング機能がついた。ロービーム時にロー側のボタンを押し込むと、ヘッドライトが一時的にハイビームになる。
リアコンビネーションランプもデザインを変更。LEDテールランプはフロントのポジションランプに合わせてU字型の発光パターンを採用している。
右スイッチボックスにはハザードスイッチが追加された。スタータースイッチはキルスイッチ一体型で、スタータースイッチを押し続けなくてもワンプッシュで始動できる「スズキイージースタートシステム」を採用している。なお、キックレバーによるエンジン始動も可能。
実走では、従来型よりなめらかで落ち着いた加速フィーリングが印象的だ。力強さに欠けるというわけではなく、発進でアクセルをややワイドめに開ければ50km/hオーバーまですんなり速度が乗る。前後連動のコンバインドブレーキは効きも安定感も優秀。先進的な機能や装備は投入されていないが、スタンダードスクーターとしてはとても実直な進化を遂げている。
フロント12インチ・リヤ10インチならではの機敏さと巡航時の安定性が両立されており、ストレスなく自由に乗れる印象。上質さの追求に妥協していないことがはっきり伝わってくる。ちなみに満タン航続距離は、WMTCモード値の燃料消費率で計算すると、53.4×5.3=283.02kmとなる。
フロントフォークはテレスコピック式。5本スポークの鋳造アルミホイールは軽量化された新設計品。フロントブレーキは外径190mmのブレーキディスクとニッシン製1ポットキャリパーの組み合わせ。
リヤブレーキは内径120mmのドラムブレーキを採用。標準装着タイヤはダンロップ製D307Nだ。なお、写真ではセンタースタンドを掛けているが、サイドスタンドももちろん装備されている。
コンバインドブレーキシステムによりフロントブレーキにも作用するリヤブレーキレバーには、ブレーキロックレバーが備わった。
コンバインドブレーキシステムは従来型から装備されていたが、スポーティスクーターのアヴェニス125と同様のものに刷新することでコントロール性・操作感がアップしている。
フロアボードは窮屈に感じない広さを確保しており、ハンドルグリップも自然な位置でリラックスして乗れる。足着き性は、シートが従来型より太ももに干渉しにくい形状になったので、足をべったり地面に着けるのも楽。(ライダーは身長169cm、体重は56kg)
アドレス125 スペック等
エンジン種類 空冷4ストローク単気筒OHC2バルブ
ボア×ストローク 52.5×57.4㎜
総排気量 124cm3
最高出力 6.2kW<8.4ps>/6,500rpm
最大トルク 10Nm<1.0㎏f・m>/5,000rpm
燃料タンク容量 5.3L
WMTCモード燃費 53.4km/L
変速機 Vベルト無段
全長×全幅×全高 1,880×690×1,155mm
ホイールベース 1,260mm
シート高 770mm
車両重量 108kg
タイヤサイズ (F)90/90-12 (R)90/100-10
カラー ホワイト、マットブラック、グリーン、マットブルー
価格 28万500円
発売日 2025年9月10日
アドレス125 パールグレイスホワイト
アドレス125 マットブラックメタリック No.2
アドレス125 ソリッドアイスグリーン
アドレス125 マットステラブルーメタリック
report:林 康平 photo:長谷川拓司/スズキ