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ハスクバーナ・ヴィットピレン801は「KTM・790デュークをベースにするも、キャラクターは結構違う」

ハスクバーナが作るバイクを、その傘下にあるモデルということから「KTMの焼き直し」と言う方もいますが、考え方を改めるべきでしょう。2024年3月に先行発売されたスヴァルトピレン801もそうでしたが、このほど日本に投入されたヴィットピレン801も、KTM・790デュークとは搭載エンジンや基本骨格を同系統としながら、まったく異なるキャラクターに仕上げられたのは紛れもない事実です。そうは言ってもスタイリングの味付けがほとんどだろうという指摘も、的外れと言わざるを得ません。
とりわけ、セパレートハンドルでカフェレーサー的スタイルだったヴィットピレン701に対し、バーハンドルを装備したロードスター路線のヴィットピレン801は「機能がスタイリングを形作る」ものと思えました。決して小手先のデザインで派生モデルを作ったわけではないのです。
ヴィットピレン801は、ハスクバーナのオンロードバイクの作法に従ったネーミングで(スウェーデン語で「白い矢」の意味)、排気量は799ccのパラツイン(並列2気筒)エンジンが搭載されています。
これは前述の通りKTM・790デュークと同系統で、製造元は中国のCFMOTO。年を追うごとに厳しくなるユーロの排出ガス規制への対応や、それに追随するグローバルな環境対策に莫大な費用がかかるリスクを回避して、コストパフォーマンスの高いモデルを供給。799ccの並列ツインシリーズには、そんなねらいもあるように感じられます。

ハスクバーナ・ヴィットピレン801のエンジン「トルク重視型とした異色の285度位相並列2気筒は、絶妙にシャープな特性」

「LC8c」と呼ばれるエンジンの名は(水冷8バルブ・コンパクト)に由来しますが、文字通りコンパクト、かつ軽量なパッケージに仕上がっています。技術的トピックも、CFD流体解析を用いた吸気ポートの設計をはじめ、2本のカムシャフトの間に配した振動軽減用バランサーの採用、高圧鋳造という高精度が求められるアルミ素材を用いたクランクケースによる軽量化など数え切れません。むろん、最大出力は790デュークと等しく105psですが、発生回転数はデュークの9500rpmに対し、9250rpmへとわずかに下げられています。
これはハスクバーナのエンジニアチームがヴィットピレン801のキャラクターを形作る際「中低速域のトルク」を重視したことと無関係ではないでしょう。KTMにしろハスクバーナにしろ、このLC8cを搭載したモデルに乗るとライド・バイ・ワイヤによるアクセル制御の巧みさによって思わずワイドオープンにしがちです。すると、胸の透くようなパワーフィールと、目が置いていかれるような加速を味わえるのですが、ヴィットピレン801にはそこに至るまでの回転域にこそ濃密な味わいがあるのでした。回転数にすれば3000から4000ないし5000rpmほどでしょうか、力強さとスムーズネスの協奏は誰をもうっとりとさせてくれるもの。285度位相という異色のクランクのトラクションにも、どこかヒューマンタッチな感触があり、機械というより生き物のような鼓動すら感じ取れるはず。
わずか250rpmの差異ですが、790デュークとはこのあたりが決定的に異なり、またヴィットピレン801の大きな魅力となっていること間違いありません。加えて、デビュー当時の790デュークよりもアクセルに対する反応がずっと敏感な気がしました。一言でいえばツキがいいということになりますが、敏感すぎるということもなく、すべてのスピード域で絶妙なフィーリング。エンジンとの対話を心から楽しめるセッティングであり、これは3つある走行モードのいずれでも同じフィーリングが味わえました。

ハスクバーナ・ヴィットピレン801のシャシー「硬質でキレのある走りを生み出す足まわりとワイディングポジション設定」

ところで、ヴィットピレン401が2024年のフルモデルチェンジによってセパハンからバーハンドルに変わったことをご記憶の方も少なくないでしょう。いろんな意味で驚いたものですが、ハスクバーナとしてはカフェレーサーからロードスターへの変貌というコンセプトがあり、ヴィットピレン701で採用されていたセパハンが801でバーハンにされているのも同じ意味合いかと思います。
個人的には1車種くらいカフェレーサーがあってほしいとは思いますが、ロードスターという新鮮なテイストも捨てがたいものでした。そのバーハンドル、具体的にはスヴァルトピレン801よりも低くて幅が広くなっており、ライダーは自然な前傾姿勢が取りやすくなっています。820mmというシート高と相まって、コーナリングの際はアペックスへ向かって、高いところから急降下するかのような感覚が楽しめることでしょう。ちなみに、サスペンションは前後ともWPのAPEXを採用していますが、作動性に当たりが出るには3000kmほど走り込むと具合がよくなるかもしれません。試乗の際に違和感などはありませんでしたが、「あたりがつけば、もっとスムーズになる」との想像が働きました。
ヴィットピレン801のステップ位置は、790デュークとさして変わらないのですが、前後ダンパーのセッティングは異なります。低いハンドル位置を活かすようにフロントはいくらか硬めで、リヤもあえてSTDのまま乗りましたが、やはり硬めが合う感触でした。そしてキャスター/トレールの24.5°/97.9mmという設定は絶妙なバランスで、曲がりやすさと安定を巧みに演出しています。これはタイトなスラロームを走ってみれば誰でも感じることができ、荷重移動をさほど意識せずともスイスイ、ヒラヒラと駆け抜けられることでしょう。
なお、ブレーキシステムはスヴァルトピレン801と同様にスペインのJ.Juanというメーカの製品を採用しています。日本では耳慣れないブランドかもしれませんが、かのブレンボが買収したブレーキメーカーですのでクオリティは問題ないでしょう。実際、ラジアルポンプのフロントブレーキは感触もよく、180kgの車体のコントロールに不足はありません。サーキットを走るとしても、よほどの腕利きでなければ不満は出ないと予想します。
ヨーロッパでは、ヴィットピレン801のような「ソフトスポーツバイク」と呼ばれるジャンルが人気なようです。すなわち、1000ccオーバーマシンや、100馬力を大幅に超えるマシンは手に負えない、自分の手の内でスポーツライドを楽しみたいといったニーズに支えられたもの。日本でもその兆しは確かにありますから、ヴィットピレン801が頭角をあらわすのも時間の問題に違いありません。初めての大型としても味わいやすいでしょうし、リッターバイクを乗りこなしていた方にも歯ごたえのあるマシンです。ぜひ、試乗のチャンスを作ってみてはいかがでしょうか。






ハスクバーナ・ヴィットピレン801主要諸元
【エンジン・性能】水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク88mm×65.7mm 圧縮比12.5 総排気量799cc 最高出力77kW(105ps)/9250rpm 最大トルク87Nm(8.87kgm)/8000rpm 変速機6段リターン
【寸法・重量】ホイールベース1475mm シート高820mm 車両重量180kg タイヤサイズF120/70ZR17 R180/55ZR17 燃料タンク容量14L
【車体色】イエロー、シルバー
【価格】145万9000円

文●石橋 寛 写真●石橋 純/ハスクバーナモーターサイクルズ





































