目次
「路肩」と「路側帯」の違いとは
クリスマスやお正月の行事がある12月から1月にかけて実家に帰省したり、観光旅行など出掛ける人が多くいるかと思いますが、この時期は事故が多く起きます。警察庁のデータによれば交通事故死者数が298件(2020年12月)と最多を記録しているなど、12月は交通事故が多いことが明らかとなっています。
また、交通量が多い時期に付きものなのが渋滞ですが、先を急ぐ気持ちが出てしまうのか、車線を逸脱して路肩や路側帯を走行する人が少なからずいます。
見方によっては、空いているスペースの活用と言えないこともありませんが、一歩間違えれば歩行者やクルマにぶつかって事故を起こす事態にもなりかねません。
路肩・路側帯通行はバイクで走行する上でのひとつのメリットだと思っているかもしれませんが、違反になってしまうことがあるんです!
当記事では、路側帯の違いや違反内容について解説していきます。
自動車学校や教習所の学科で習ったかもしれませんが、まず「路肩」と「路側帯」の違いについて振り返ってみましょう。
「路肩」とは、道路構造令という法律の第2条12号において次のように定義されています。
道路の主要構造部を保護し、または車道の効用を保つために、車道、歩道、自転車道または自転車歩行者道に接続して設けられる帯状の道路の部分をいう。
引用:道路構造令|e-Gov
一方「路側帯」とは、道路交通法第2条3号の4において次のように定義されています。
歩行者の通行の用に供し、または車道の効用を保つため、歩道の設けられていない道路または道路の歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられた帯状の道路の部分で、道路標示によって区画されたものをいう。
引用:道路交通法|e-Gov
路肩と路側帯との違いは「歩道があるか、ないか」という点です。つまり、片側1車線ずつの車道の左右に歩道が設置されている道路などは、車道と歩道の間にあるスペースが「路肩」です。
そして、歩道が設置されていない高速道路などの左側端にあるスペースは「路側帯」ということを覚えておきましょう。
路側帯を走ったら「通行区分違反」になる
よく似たようなものとして認識されている「路肩」と「路側帯」は、それぞれ設置されている目的が違います。
道路交通法によれば、路肩は「道路の主要構造部を保護し、または車道の効用を保つため」とあり、路側帯は「歩行者の通行の用に供し、または車道の効用を保つため」と記述されています。
どちらも「車道の効用を保つ」とありますが、これは側方の安全確保、故障車などが非常時に駐車する、または緊急車両が通行する、雨天時に歩行者への水や泥はねを防ぐといった目的の意味があります。
それ以外に注目すべきところは、路側帯が「歩行者の通行」を目的としている点です。だからこそ、クルマやバイクの通行が不可なのです。
ただし、路側帯=「歩道のない道に設置される」という条件において、高速道路など自動車専用道路(そもそも人が立ち入らないので、当然歩道はない)に付帯するものも路側帯となります。
そのため、高速道路の車線脇のスペース=路側帯がどんなに広くても、必ず車道を走らなければならないのです。
第17条 車両は、歩道、または路側帯と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない。
引用:道路交通法|e-Gov
この規定に違反すると違反点数が1点、反則金は大型車7000円、普通車6000円、二輪車6000円、原付5000円が科せられます。反則金を納付せず刑事事件になった場合は、3ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金となります。
人通りが多い市街地の場合、「路側帯を通らずに白線に沿って走ろう」と気を付けるだけでも「通行区分違反」にならないかと思いますが、特にバイパス道路や高速道路を通るときは気を付けた方がいいでしょう。
なぜなら、バイパス道路や高速道路は路側帯が広く確保されているため「通っても大丈夫だろう」と走行しがちで(まれに車線と勘違いする人も……)、警察によって取締りを受ける対象となります。
路肩走行OKだが、危険なので避けた方がよい
路側帯と違って路肩はそもそも救急車や消防車、パトカーといった緊急車両などが走行することも前提としているため、十分な幅員があれば通行しても違反にはなりません。
ですが、路肩はスペースが狭いところもあるので「通行可能」という認識で、無闇に突っ走っていくのは大変危険です。
バイクで路肩走行するような状況として考えられるのは渋滞時でしょうか。前に1台もクルマがいない空いている状況で、あえて路肩を走る人はいませんよね。そこで「渋滞時の路肩」をイメージすると、車線側となる右側はクルマがビッシリ詰まっていて、左側が歩道。歩道には通行者がいるケースもあるでしょう。
そんな状況でバランスを崩したら、どちらか一方にぶつかってしまう可能性もあります。
反射神経が良い人でも、右側を走っているクルマとの距離はたった数十cmぐらいしかないので、危険を察知しても瞬時に避けることは困難でしょう。
歩行者と接触してしまえば人身事故となりますから、自動車運転処罰法第5条の「過失運転致死傷」に問われる可能性があります。過失運転の場合、歩行者を死傷させたら現行犯逮捕で、7年以下の懲役もしくは禁錮(きんこ)または100万円以下の罰金が科せられます。
急いでいたつもりが事故を起こしてしまって目的地にもたどり着けず、警察に見つかって刑罰を受ける事態を招いてしまうことにもなりかねません。クリスマスやお正月の時期は交通量も多くなるので、よほど特別な事情がない限りは路肩通行するのは控えるようにしましょう。
レポート●鷹橋 公宣 編集●モーサイ編集部・小泉元暉
元警察官・刑事のwebライター。
現職時代は知能犯刑事として勤務。退職後は法律事務所のコンテンツ執筆のほか、noteでは元刑事の経験を活かした役立つ情報などを発信している。