コラム

「衝突軽減ブレーキ」や「直噴エンジン」── クルマでは当たり前なのにバイクにはないメカニズム4選

ホンダ、スズキ、BMW……二輪と四輪を製造しているメーカーはあるが、どこに聞いても二輪と四輪の開発部門は別組織であり、技術的な交流も少ないという。実際、二輪と四輪のメカニズムで共通しているケースを見つけることの方が難しく、珍しい。

思いつくのはBMWがレンジエクステンダーEV(発電用エンジンを積んだ電動車)に二輪ベースの2気筒エンジンを積んだという話や、ホンダNC700系の2気筒エンジンがフィットの4気筒エンジンと設計思想を同じくしているケースくらいだろうか。

「先行車追従」はあるが「衝突被害軽減ブレーキ」は二輪への採用が難しい

ホンダN-BOXのACCは先行車に近付くとシステムが先行車との距離や速度差を測定し、自動的に加減速。割り込んできた車両があった場合も対応し、適切な車間を維持しながら追従走行する。
先行車に追従する機能、ACCのイメージ。BMWやドゥカティ、カワサキなどの一部車両に搭載されており、車両の前方に取り付けられたレーダーで先行車との距離を測る。

実際、ホンダもBMWもACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール、先行車に追従して速度を合わせる機能)や車線維持といった高速道路における運転支援技術においては四輪では充実しているが二輪にその技術が応用されていることはない。

BMWはバイクにもACCを実装しているが、それはボッシュのシステムを載せたものであり四輪由来ではないといえる。ホンダに至っては、四輪では軽自動車までほぼ全車で「ホンダセンシング」と呼ばれる先進運転支援技術を標準装備しているが、二輪においては、まだ準備中だ。

さらにいえばACC自体はドゥカティやカワサキが採用しているものの、四輪では新型車に義務化となっているAEBS(アドバンスド・エマージェンシー・ブレーキングシステム、衝突被害軽減ブレーキ)は二輪に搭載されたという話は聞かない。センサーを使って、ライダーに衝突危機を知らせることはあっても車両が自動でブレーキをかけるという機能は二輪は採用されていないのだ。

もちろん二輪の特性から、車両が勝手にブレーキをかけてしまうとライダーが振り落とされて危険という部分もあるだろうし、そもそも二輪は自立できないため車両停止までを前提としたAEBSの装備はほぼ不可能という面もあるだろう。

電動パーキングブレーキはバイクには不要?そもそもバイクにパーキングブレーキはある?

一方で、スクーターやDCT車などを中心にパーキングブレーキを備えるモデルもある。写真はホンダNT1100のパーキングブレーキレバー。フロントブレーキのマスターシリンダー手前にある。

さて、ブレーキといえば最近の四輪におけるトレンドの一つに「EPB(電動パーキングブレーキ)」というものがある。通常、手でレバーを引いたり、足でペダルを踏んだりしてパーキングブレーキをかけているが、人力の代わりにモーターやアクチュータを使ってしまうのがEPBだ。

自動的に制御できるのでパーキングブレーキのかけ忘れ、外し忘れといったミスが減ることもメリットだが、なにより信号待ちなどの停止時に自動的にパーキングブレーキをかけるオートホールド機能が装備できるのがユーザーにとって大きなメリットとなっている。

こうした機能は二輪にはない。なぜなら、パーキングブレーキそのものが多くの二輪には備わっていない。というのも、二輪のMT車の場合、傾斜した場所に駐車する場合でも、サイドスタンドで停車し、ギヤを入れておけば車体が動かないようにしておけるので、パーキングブレーキの必要がないからである。
一方で、スクーターやDCT(デュアルクラッチトランスミッション)車は、ギヤを入れて駐車しておくことができない。センタースタンドで駐車しておくという手段もあるものの、補助的にパーキングロックやパーキングブレーキといった機能を採用している車種もあるが……。

乗用車では珍しくないガソリン直噴エンジンはバイクに向かない

さて、冒頭でホンダが四輪エンジンの基本モデルを二輪エンジンに応用したというエピソードに触れたが、いまや四輪のガソリンエンジンではかなり幅広く普及している「筒内直接間接噴射」、いわゆる「直噴エンジン」は現在のところ二輪の量産モデルでは見かけることのない技術だ。

ガソリン直噴エンジンのメリットは、燃料を高圧でシリンダー内に噴射することで気化熱による冷却が望め、それがトータルでの熱効率の高さにつながるというもの。燃費を良くするためだけの技術ではなく、ハイパワーを狙うにも有効な技術だ。そうであれば二輪の採用例が皆無なのは不思議に感じる。

とはいえ、直噴エンジンが高圧で燃料噴射をするためには、高性能な燃料ポンプや高圧に適応した配管などが必要で、そのためのスペースや独特のノイズを考えるとあえて二輪に採用するメリットがないのも事実だ。

カワサキは、水素エンジンの実験機として直噴スーパーチャージャーを採用しているが、市販車での実用例はない。

軽自動車で当たり前のターボエンジンも現在は見当たらない

その一方で、二輪にこそ採用してほしいと思うのが「ターボチャージャー」による過給エンジンだ。過去にターボエンジンは存在していたものの、現在ではカワサキがスーパーチャージドエンジンを用意するくらいで、二輪の量産ターボエンジンはほとんど見当たらない。

スズキにしろ、ホンダにしろ、660ccの軽自動車用ターボエンジンを設定していることを考えると、二輪でも400〜600cc級のターボエンジンというのは十分に成立すると感じられる。両メーカーの軽ターボに乗ったことがあれば、ほとんどターボラグ(過給遅れ)を感じさせないリニアリティを実現しているわけで、その技術を応用すればミドル級の二輪におけるトルクアップが期待できると思ってしまうのは筆者だけだろうか。

というわけで、今回は四輪では当たり前といえる装備・メカニズムながら二輪では採用されていないものを4つチョイスして紹介してみた。ABSや、各種のドライブモード切り替えなどが二輪でも普及している流れを見ていると、ここで紹介した機能もいつかは二輪に展開されることを期待してしまうのだが、いかがだろうか。

2022年6月現在、バイクでは唯一スーパーチャージドエンジンを積んだカワサキのフラッグシップ・スポーツツアラー・ニンジャH2 SX。エンジンは998ccの水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブで価格は265万1000円。

レポート●山本晋也 写真●ホンダ/カワサキ/BMW 編集●モーサイ編集部・中牟田歩実

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