バイクライフ

ホンダの「インテグラ」と言えば……国内初のカウリング付きバイク!【1980〜2000年代に起こったバイクの改変 その2】

欧州勢から始まったカウル付きモデル

自動車メーカーでは、自社で商標権を所得した車名を時代ごとに別モデルで使い回すことがある。例えばタイトルでも紹介したホンダの「インテグラ」の場合、1980年代後半に登場した四輪スポーツセダンを思い出す方が多いだろう。

ところが、80年代以前からのバイクフリークは、ホンダのインテグラと言えばカウリング(フェアリングとも呼ばれる)付き仕様のスポーツバイクのことを懐かしく思い出す(筆者もそのひとり)。なぜならこのインテグラ、国内市場にとっては、実にメモリアルなモデルだったからだ。

少し歴史を振り返ると、モーターサイクルでのカウルは、空気抵抗を低減し速度を上げるなどの意図で導入されたもので、1920年代から登場したと言われる。速度記録の挑戦車やレーサーにまず取り付けられ、量産市販車に採用されたのは70年代以降。

イタリア・ドゥカティの900SS(72年)に丸みを帯びたハーフカウルが装着され、欧州のみならず日本のバイクフリークは、そのセクシーな造形に憧れた。そして、鮮烈なインパクトで登場したフルカウルモデルが、ドイツ・BMWのR100RS。ライダーの身体をすっぽりと覆うその造形も200km/hオーバーの高速化時代を象徴する装備として、羨望の対象となった。いずれも欧州製モデルだが、その当時、国産勢はまだカウル付きには追随していなかった。

国内車カウル不認可の風穴を開けたCBX400Fインテグラ

カウル付きの国内第一弾のCBX400Fは82年7月発売。ハーフカウルのほか、方向指示器キャンセル機構の標準装備もアピールポイントとした。価格は標準のCBX400F(ツートーン色48万5000円、単色47万円)に対し、6万円ほど高い54万9000円。カウル本体は耐衝撃性に優れたABS樹脂、スクリーンには高級素材のポリカーボネートを採用。なおカウル登場当初の各車は、ホンダ車に限らずスクリーン周囲に、安全面への配慮から縁ゴムなどのモールを装着する機種がほとんどだった。

その後、輸出向けのカワサキZ1R、スズキGS1000S(共に79年製)など、ハンドル側にマウントされメーター周りを覆う小さなカウル(通称ビキニカウル)を装着するモデルが登場。

そして80年にはグランドツアラー系の輸出モデル、ホンダGL1100インターステーツが大型フルカウルを装着するなど、国内各社でもカウル付きが少しずつ出てきたものの、いずれも輸出向け車での話。国内ユーザーには依然として遠い憧れでしかなかった。国内では運輸省(当時)の型式で、カウル装着車が認可されていなかったからだ。

カミナリ族や暴走族など、若者がバイクで暴走行為をする行為が問題になっていた1970年代の日本の時代背景では、カウルの装着はスピードを出すことが狙いと捉えられ暴走行為の引き金になると、お上には認識された。そのため、日本のバイクメーカーは、国内向けにカウルを装備したバイクを発売できていなかったのだ。

その流れを変えたのは、国内ナンバーワンメーカーのホンダ。小排気量から大排気量クラスのナナハンまで、販売競争が激化しつつあった70年代後半以降、次なるブレークスルーの手段として、国内向けにもカウルを装着して市販車を出すのは、機能的にもデザイン的にも飛躍できる悲願の一つだったはず。

筆者が別冊モーターサイクリスト編集部員だった時期、ホンダOBの技術者・野末壽保さんから当時運輸省にはカウル認可の件で幾度となく足を運んだという話を伺ったことがあるが、ホンダは本格的なカウルを国内に投入する前、初代のVT250Fに小さなビキニカウルを装着して82年5月に発売。だが、これを当時のプレスリリースでは、あえてメーターバイザーと紹介。カウルという言葉に神経質に対応する微妙な時期だったことを窺わせた。

だがそれから間もない82年7月には、カウル付きモデルのCBX400Fインテグラが登場。「日本初、フェアリング(※カウルと同意)標準装備の中型スポーツバイク」と謳われた当時のプレスリリースには、「ホンダのロードレース活動で得た空気力学を積極的に取り入れて設計されたもの(中略)特にスクリーン部は、通常の乗車姿勢でも直接的にライダーが風の影響を受けにくいよう上端を立てて、走行中の風の流れをスムーズにライダー上方に流すアップ型を採用。これとフェアリング本体により、長距離ツーリングや高速走行時の風圧から生じるライダーの疲労の軽減を図ることが出来、快適な走行を可能にしている」と紹介。

無論のこと、カウルの効用は快適性にも寄与するが、この文章では、速度を上げるといったお上の危惧を回避する意図が見て取れる。

一気に増殖したカウル付き=インテグラ

その後、数を増やしていったカウル付きのインテグラ群。以下、登場順に写真紹介。CB750Fインテグラ(82年8月)。
国内販売車ではカウル付きしか用意されなかったCBX550Fインテグラ(82年9月)。
VT250Fインテグラ(83年6月)。
異例の原付二種モデルMBX80インテグラ(83年6月)。
VF400Fインテグラ(84年1月)。

そして、CBX400Fの派生モデルとして誕生したカウル付きのインテグラは、バリエーションを一気に拡大。続いてCB750Fインテグラ(82年8月)、CBX550Fインテグラ(82年9月)、VT250Fインテグラ(83年6月)、MBX80インテグラ(83年6月)、VF400Fインテグラ(84年1月)と立て続けにリリース。

個人的に興味深いのは、威勢を借りて登場させたかに見える小排気量車MBX80のカウル付きで、高速道路に乗れず、最高速が絞り出しても100km/hに到達するかしないかのモデルに(もちろん公道では速度違反です)、フルカウルを付けたのはかなり異例。当時の街なかでもさほど見かけた記憶がないから、今も現役で所有している趣味人がいたら、隠れたお宝かもしれない。

インテグラの名称ではないものの、異色のカウル付きモデルとして記憶に留めておきたいのが、50ccの「スポーツスクーター」ビート(83年12月発売)。スクーターで世界初の水冷2サイクルエンジン搭載(最高出力7.2ps)をアピールし、半透明のカウリング内に装備したデュアルハロゲンヘッドライトもインパクト絶大。価格は15万9000円。言わずもがな、インテグラと同様、ビートも四輪で認知されている車名だろう。
ホンダ・インテグラが全盛の中、VF750F(82年12月発売)は例外的にカウル付きながら、非インテグラの名称だった。理由は、最初から派生モデルではなくカウル標準装備のみでリリースされたためだろう。なお余談だが、カウル付きモデルが国内で全盛となった80年代後半以降、カワサキ・ゼファーを代表とするカウル無しモデルを「ネイキッド」という呼称が一般化していった。

無論のこと、82年に初めてホンダがカウル付き国内モデルを出して以降、国内他社も83年以降に追随。スズキはレーサーレプリカの始祖とも言えるRG250Γ(ガンマ)にカウルを標準装備したし、カワサキはGPz400を投入。そしてヤマハも近未来的なフォルムのXJ750Dで話題を集めるなど、以降カウル付きモデルは当たり前のように増えていった。

そんな状況を鑑み、ホンダも他モデルにカウル付きを投入していったが、そうした流れの中、一時期はカウル付きの代名詞のように使われた、「車名+インテグラ」の派生モデル的な名称は消え、カウル付きモデル百花繚乱の80年代後半に突入していったのである。

レポート●阪本一史 写真●ホンダ

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