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「それはダメ!」な市民への対応で、警察官が憎まれ役に!
いつの時代も警察官は子どもたちが憧れる職業のひとつです。
毎年、さまざまな企業が「将来なりたい職業ランキング」を集計して発表していますが、かならず上位にランクインしています。しかし、子どもたちが成長し、大人になっていくと、警察官は次第に批判の対象となり、憎まれ役へと変化していくのだから皮肉なものです。
憧れの職業から憎まれ役へと転落してしまうのは、一部の警察官が市民に対して横暴な態度を取っていたり、警察官にあるまじき行為で信頼を失墜させてしまったりするからでしょう。
本記事では、同僚の立場からみても「それはダメ!」と感じた市民対応を紹介します。
「『上から目線』で違反者に対する」のはダメでしょう!……1例目
交通取り締まりにおける警察官の言動には、批判が集中しています。
たしかに、ネット上の記事やコメント、SNSの投稿などに目を向けると「取り締まり中の警察官の態度が悪かった」「上から目線の対応にムカついた」といった意見が多数あります。
悪質性が低いといっても交通違反は道路交通法などの違反、つまりは「犯罪」なので、警察官が「悪いことをした人は強く懲らしめないといけない」と考えるのは仕方がないのかもしれません。
しかし、いかに罪を犯しているといっても、違反者は基本的に「善良な市民」であり、単なる「うっかり」「見落とし」「勘違い」といった理由で違反しているケースが大半です。重大事件の容疑者を捕まえたかのような扱いがあってはならないし、ほとんどの警察官もそのことは十分に理解しています。
しかし、警察官のなかにはどうしても違反者に対して丁寧な応対ができない人がいるというのも、残念ながら事実です。たとえば「あー、標識見えてなかった?今の、違反だから」「はい、ここに署名して指印すれば今日のところは終わりね」といった対応は、どう考えても間違っています。
お客さま対応をすればいいというわけでもありませんが、警察官は「決して違反者よりも上の立場ではない」ことを再認識するべきです。
「女性にばかり説教」はダメでしょう!……2例目
交通取り締まりに従事する警察官に求められるのは「切符を切る」という手続き上の作業だけではありません。
どういった違反を犯したのかを丁寧に伝えたうえで、違反がどんな危険を招くのか、これからどのような運転を心がけるべきなのかなどを丁寧に指導する義務があります。しかし、説明や指導は「説教タイム」ではないので、説教じみた対応は禁物です。
警察官のなかには、説教好きの人も少なくありません。職業柄を考えれば仕方がないのかもしれませんが、正直にいえば説教なんて余計なお世話だと感じる違反者の方も多いでしょう。
とくに警察官にも負けん気を発揮して説教に反発してくるのは男性が多く、女性の違反者は警察官に停められて違反を追及されているという状況だけで、怖くて何も言えなくなってしまう傾向があります。女性の違反者には決まって説教をはじめる警察官がいますが、同僚からみても気持ちが悪いものです。
「お嬢さん」「お姉さん」「奥さん」といった呼び方をするのも、違反者のことをひとりの人間として軽視している心情が浮き彫りになっている証拠なのでしょう。
「『あそこにスタンドがあります』とバッテリーあがりで訪れた人を帰す」のはダメでしょう!……3例目
幸いなことに、現職のころの私の周囲には「上から目線」や「やたらと説教」といったNG対応をしていた親しい同僚はほとんどいませんでした。しかし、一度だけ「これはナシ!」というひどい対応を目にしたことがあります。
ある日、交番に助けを求めにきた男性がいました。すぐ近くで車のバッテリーがあがってしまい、動けなくなってしまったそうです。男性は3~4歳くらいの子どもを連れていて、子どもも突然のトラブルに不安を隠せない様子でした。
それなのに、あろうことか応対を担当した後輩が「あ、すぐ近くにガソリンスタンドがあるんで、そこでなんとかしてもらって」と帰してしまったのです。
たしかに、クルマの機械的なトラブルは警察業務の担当ではありません。修理が必要なら、警察ではなく自分で自動車整備業者などに相談してレッカーを手配するべきです。
しかし、助けを求めてきた市民にできる限りの手を差し伸べるのは警察官として当然の行為であり、困っている人を目の前にして事情を尋ねもせずに「こちらではなく、あちらへどうぞ」では不適格としかいいようがないでしょう。
その後はすぐに男性を追いかけてクルマをみせてもらい、単なるバッテリーあがりだとわかったのでパトカーのバッテリーと繋いで復旧しました。もちろん、男性を帰してしまった後輩にはこってりと説教したことは言うまでもありません。
取り締まりの場は、警察を審査する場でもある!
さまざまなトラブルや困りごとを抱えている人にとって、まず助けを求めることができる存在が警察です。たとえその内容が警察業務の範囲外だったとしても、無下に扱うような警察官は信頼に値しないでしょう。
もちろん、上から目線の対応も、弱い相手ばかりへの説教も、警察官の行動としてはNGです。
今後、警察が広く市民に信頼されるためには、あらゆる機会を通じて丁寧・親切な対応が求められます。交通取り締まりのように市民と警察官が接する機会こそ「市民が警察を審査する場」なのだと考えて、厳しく監視していきましょう。
レポート●鷹橋公宣

元警察官・刑事のwebライター。
現職時代は知能犯刑事として勤務。退職後は法律事務所のコンテンツ執筆のほか、noteでは元刑事の経験を活かした役立つ情報などを発信している。