バイクライフ

「脱リッターバイク宣言!?」ミドルエイジのための、ミドルクラスのススメ

究極の速さを追求したスーパースポーツ、道を選ばぬアドベンチャーモデル、長距離高速移動が得意なグランドツアラーやビッグクルーザーなど、今や各ライダーの嗜好に合わせて色んな愛車を選べる時代。
また、かつては一発試験だけだった大型二輪免許だが、現在は教習所で取得できることもあり「ビッグバイク」へのハードルも下がっている。

すると、多くの方々の心理的な購買意識として「せっかく買うならば最高のものを」「大は小を兼ねる」の考えから、大排気量モデルに心が動く向きは多そうだ。
一度の人生(経済的に許されるなら……)心の赴くまま、財布のヒモの緩むまま、高価な大排気量モデルに手を出すのは間違いではないが、その選択でバイクの魅力のいくつかを、最初に見えにくくしている面もあり得ると、昔からミドルクラス(*)支持者である筆者は思うのだ。
自身の愛車経験と、長年2輪雑誌で試乗テストを行った経験を踏まえ、どういうことかというと以下の5点に集約される。

*中間排気量のこと。昨今は400ccなども「ミドルクラス」と呼ぶ向きもあるが、筆者として考えるのは「大型二輪」の600cc~900ccまでのクラス。

01.あまりに大きなバイクは、家からの出し入れが億劫になる。

02.ハイパワーマシンでは、下道でストレスがたまる。もしくはストレス発散で(?)手痛い速度違反をする。

03.大排気量の値の張るバイクだと、出先で気軽に止められる場所を探すのに気を遣う。

04.車格・重量があると、見知らぬ田舎道に分け入りたくても、引き返すことを考えると面倒で進む気が萎える。

05.快適装備の大型ツアラーでは、バイクの素の解放感や、その裏返しの荒天時の過酷さといった醍醐味(?)が味わえない。

筆者が所有した車検付きバイクの1号車、カワサキ GPz750(最高出力72馬力/車両重量238kg)。同車が登場した80年代、ナナハンは国内でフラッグシップモデルだったため「ミドル」という位置付けではなかったが……「ザッパー」Z650を原点とするミドル4気筒エンジンを搭載しており、軽快なエンジンフィールが魅力だった。

あくまでミドルクラス好きの独断なので、異論は多々あろうが、高価すぎない、過剰なパワーではない、車格も重量もそこそこ──に留めておくと、さまざまなバイクの魅力が味わいやすくなる。

この論法で行くと、車検のない軽二輪(126cc以上250cc未満)は、かなりいい。実際に一般道メインでたまに高速を利用する程度なら、ベストな選択だ。
しかし、高速道路では往々にして性能面で余裕が足りない。
筆者の経験だと、最高出力20馬力程度のマシンの場合、最高速度は絞り出して120km/h +α、30馬力台ならば150km/h弱は出る(いずれも公道モデルの標準的なギヤレシオの場合で、クローズドコースで実験)。

だが、これら軽二輪の快適な巡行速度は大体90~100km/hに落ち着く(ちなみに24馬力の現行ヤマハ SR400も同様だ)。
高速道路でも最高速度120km/h上限の区間が出始めている昨今、100km/hくらいから余裕を持っての追い越し性能が欲しいなら、軽二輪以上の排気量を選ぶ価値がある。そこで、ミドルクラスなのだ。

高速道路含め、日本の交通環境なら50〜80馬力で十分

では、どんなスタイル、スペックのマシンが好ましいか。
ジャンルで言えば、スタンダード系ネイキッド、スポーツツアラー、アドベンチャー系&オンオフ系モデルだ。

スーパースポーツを選ばないのは、ツーリングと街乗りを重視するライダーの観点からだ。前傾姿勢の強いスーパースポーツを「軽量化が図られているから重たくないし、意外にツーリングでも使える」と紹介している雑誌・web記事は多々あるが、たまのサーキット走行とワインディング走行メインで楽しむ場合以外で、スーパースポーツを使う特別な利点はない。

その前傾姿勢によって乗り手は上体を屈めて前方を向くため、乗車時は首を逸らす(アゴを持ち上げる)ような格好になる。そのため視野はかなり前方で下方(路面が見やすい)に集中させられ、周囲を見回す(景色を愛でる)気分が削がれる。
「なぜこんな姿勢で、景色のいい田舎道をのんびり走ってるんだ」と、スーパースポーツでの公道テストの最中に思うことは多々あった。それゆえ、オールラウンドかつ気軽に使いたい場合にスーパースポーツをお勧めする気持ちになれない。

同じくオールラウンドに使う理由から、意外かもしれないが、ロー&ロングなクルーザーも選択から外したい。バンク角が浅いため、こちらはワインディングを気持ちよく走れないためだ。
ギヤ変速を要しないスクーターなどのATモデルも、バイクの大事な楽しさのひとつを削っている(あくまで昔ながらのライダーによる独断的な意見)と思うので、除外したい。

最高速200km/h出せる性能を「持っていれば」高速道路も快適

一般的なギヤレシオの公道モデルは、50馬力程度の出力があれば170km/h近い速度を出す能力は秘めている。そして70馬力前後のパワーならば200km/h前後まで出るだろう。
そもそも論として、日本の道路環境において、200km/h以上の速度を余裕で超えるマシンは一生その「ピーク性能」を味わえない可能性が高い──。
各エンジンにはパワーバンド(性能を効果的に発揮できる回転域)があるが、100~200馬力の最高出力を持つマシンでパワーバンドに入れて走るだけでも法外な速度域となるわけで……走りを楽しむならサーキットという場を選ぶしかなくなる。
ゆえに、日本の一般道と高速を走るのに、50〜80馬力の出力があれば十二分だと考えるのだ。

筆者がGPz750の次に手にした車検付きバイク2号車、カワサキ ZR-7(最高出力73馬力/車重229kg)。カワサキ ザッパー系エンジンのフィーリングが気に入って手に入れた。

車重は200kg前後、サイズ感・ライディングポジションは体格に無理のない範囲で

車重と車格も、各人がバイクと付き合う上での大事な性能だ。
大旅行のための特別な1台として、巨大なアドベンチャーモデルやツアラーを選ぶのはアリだろうが、愛車がそれ1台しかなければ、日常的に乗る気持ちはだんだん薄れていくだろう。
すべての用途を1台でこなしたいならば、経験的に言って車重は200kg前後、ないしそれ以下がいい。こうしたいわば「取り回し性能」だけで言えば、100kg台前半の重量の軽二輪オンオフモデルなどもかなりいいのだが、前述の通り「安心して高速道路で追い越しをかけられる性能」を考慮し、とりあえず除外する。

また、ハンドル切れ角とか、そのバイクの重心位置、足着き性なども大事だ。
またがるに際してよじ登るような高さがあるとか、またがっての両足接地でつま先しか着かないと言った場合は、気軽に乗り出す気持ちは薄らぐだろう。
ここはひとつ、店頭でまたがって各人が持て余さない車格かどうか、判断するしかない。

大変お節介で独断に満ちたバイク選びへの一考察だが、実はこれ、自分の愛車選びと関係してもいる。バイク歴35年を超えた筆者だが、今までオーバー1リッタークラスのモデルを愛車にしたことがないのだ。
車検付きバイクの車歴は、空冷の750が2台(カワサキ GPz750:最高出力72馬力/車重238kgと、カワサキZR-7:最高出力73馬力/車重229kg)、同じく空冷の800cc1台(BMW R80:最高出力50馬力/車重210kg)だ。
重たいから乗らないという気持ちは起こらず、どこでも連れ回せる。

カワサキ ZR-7の次に入手した車検付きバイク(3号車)は、BMWの797cc空冷2バルブフラットツインのR80(最高出力50馬力/車重210kg)。4気筒を長く愛車にしてきた一方、取材で多様な年代のエンジンに接していくうち、エンジン形式が特徴的な2気筒の個性に魅せられていった。上位機種R100系ほどの爆発力はないが、少し緩いパワー感が心地よかった。

そして一般道でも高速でも、性能に不満がない。意外に短い人生だから、何台も乗り換えてバイク経験を増やしたいという方は別だが、もし自分にベストな1台を見つけて長く付き合いたいと思うなら、これらミドルクラスのバイクに注目してみるのは、大いにアリな選択なのである。

ここから先はそうした条件に合致し、新車で購入できる国産ミドルクラスを紹介していきたい。

50〜80馬力級、国産車のオススメミドルクラス

ホンダのオススメミドルクラス「NC750シリーズ」

ホンダ NC750X(従来型=2代目)。最高出力54馬力、車重221kg(MT車)、価格90万9000円。

国内&世界ナンバーワンメーカーといえるホンダなら、オススメは間違いなくNC750シリーズだ。
現在、自動車教習所の練習車両としても使われているのでなじみ深いかもしれないが「なんだ教習車か」とあなどるなかれ。
筆者が試乗したことがあるのは2代目までだが、特筆すべきは、大型二輪ならではの低回転域から粘るトルク感と、実用的に必要十分なパフォーマンスを発揮する最高出力54馬力の並列OHC2気筒。

NC750シリーズのベースとなったNC700シリーズを開発する際に行った世界的規模での市場調査で「一般ユーザーが通常自動二輪車で常用する領域は速度140km/hまで、回転域は6000rpm以下」との結論を出し、思い切り低中回転域のトルク重視に振られた特性は、750ccならではのパワーを実用域で味わえる。
加えてミドルクラスでは抜群の燃費性能で、どんな走り方でも30km/L以上は走るはず(燃料タンクは14Lあるので航続距離は400km近く確保できる)。

取り回し性重視なら軽量なネイキッドモデルのNC750S(最新版3代目では「S」は廃盤になってしまったが)、旅重視でゆったりした車格が欲しいならクロスオーバー系のNC750Xがオススメ。車重はNC750Sで218kg、NC750Xで221kgだが、モデルチェンジして2月25日に発売となった3代目NC750Xでは214kgとさらに軽量となっている。

最高出力も58馬力へとアップした正常進化版の3代目を選んでも間違いないだろうが、上手くいけば「店頭在庫車」として値引きが期待できそうな(!?)2代目をあえて狙うのもアリかもしれない。

ホンダ NC750X(最新型=3代目)。最高出力58馬力、車重214kg(MT車)、価格92万4000円。

ヤマハのオススメミドルクラス「MT-07 & XSR700」

ヤマハ MT-07、最高出力73馬力、車重183kg、価格79万2000円。

ヤマハ発動機は、長らくライダーの感性に訴えるモノ作りとデザインセンスの良さでアピールしてきたメーカーだと個人的に思う。
そんな同社のお勧めミドルクラスは、MT-07とその派生系ネオレトロモデルのXSR700だ。688ccの270度クランクのDOHC並列2気筒は、軽快な低中速ピックアップと高速まで鋭く伸びるエンジンの回転感が魅力。パワーバンドに入れ、高速道路でズバッと加速したときの爽快感はたまらないが、それでいて危険な速度域にもならない。

MT-07&XSR700とも73馬力と今や「ほどほど」に過ぎないパワーだが、一方ワインディングに入れば、実にニュートラルなハンドリングと軽快な切り返しで、刺激的。
車重はMT-07で183kg、XSR700で186kgで400cc並みかそれ以下の重量と車格に抑えられているから、普段使いで持て余すこともなく、大型二輪としての優位性も引き出しやすいミドルクラスの代表格だ。

ヤマハ XSR700、最高出力73馬力、車重186kg、価格91万6300円。

なおヤマハのMT&XSRシリーズとしては、900cc並列3気筒のMT-09と同車をベースとするXSR900があり、排気量帯としてはミドルクラスに属するが……個性的な3気筒のフィーリングは面白いものの最高出力は116馬力で、調子づいて飛ばしているととんでもない速度領域になってしまい、今回の条件には合致しない。

またMT-07をベースとしたアドベンチャーのテネレ700というモデルもあるが、シート高がかなり高い(875mm)。体格的に恵まれているか、この手のジャンルに慣れているならアリかもしれないが、自分の体格で持て余すボリュームではないか、またがって確認した方がいいだろう。

ヤマハ テネレ700、最高出力72馬力、車重205kg、価格126万5000円。

スズキのオススメミドルクラス「SV650」

スズキ SV650 ABS、最高出力76.1馬力、車重197kg、価格78万5400円。

スズキのミドル代表といえば、650ccVツインエンジン搭載車に尽きる。
90年代末に登場のSV650を原点とする90度Vツインの系統で、長らく熟成を続けてきた。FI化以降はさらに洗練され柔軟性を身に付けたVツインは、ネイキッドのグラディウス、現在も販売されるアドベンチャー系のVストローム650に搭載されきた。

車格とパワーバランスで扱いやすいのはネイキッドの現行SV650(最高出力76.1馬力、車重197kg)だ。
先代と言えるグラディウスからさらに改良を重ねたVツインエンジンは、低回転域からの素直なピックアップ、常用域でのスムーズな加速、高回転域まで滑らかに回るフレキシブルな特性も含め、日本のあらゆる道にフィットする。
またオールラウンドな性能の進化と同時に良好な燃費性能も確保し、25〜35km/Lで推移する燃費は、400ccクラス並みかそれ以上だ。

個人的にはアドベンチャーモデルVストローム650(最高出力69馬力、車重212kg)が非常に好印象で、疲れない走りと万能性、長い航続距離などで、並み居る大排気量モデルの中に入れてもベストなツーリングマシンの1台と感じる。
だが、835mmという高めのシート高や取り回しで大柄に感じる車格などで、乗り手の体格を選ぶ面は否めない。

スズキ Vストローム650ABS、最高出力69馬力、車重212kg、価格92万4000円。

カワサキのオススメミドルクラス「W800」「 Z650 & ニンジャ650」

昔から「男カワサキ」のイメージで、硬派なスポーツモデルの路線を進んできたカワサキ。
Z1に始まり、ニンジャ(GPZ900R)、ZZR系など重厚長大で高性能なフラッグシップモデルも得意なメーカーだが、実は個性的なミドルクラスもラインアップし続けている。

カワサキ W800、最高出力52馬力、車重226kg、価格110万円。

その筆頭はネオクラシックモデルの代表格で90年代末に登場したW650をルーツとするW800シリーズだ。
FI化と排気量アップを含め、熟成を重ねた現行のW800は、現在はスタンダードとマットカラーのストリート、低めにセットされたスワローハンドルとヘッドライトカウルなどを装備したカフェの3バリエーションが設定されている(最高出力52ps、車重はスタンダードで226kg)。

市販量産モデルでは稀有な、ベベルギヤを介したカムシャフト駆動、ロングストローク型のバーチカルツインは、決して高回転型ではないが表情豊かで、意図的に重めとしたクランク(360度位相)がもたらす回転感は、低回転域ではポコポコとした鼓動でゆったりと回り、一般道では独特なパワー&トルク感で気持ちよく流せる。
一方で、中・高速域では振動が増すことなくモーターのように回り、52馬力をきっちり発揮。アップライトな乗車姿勢やカウルレスのボディもあり、長時間の高速走行が決して得意なわけではないが、一般道から高速道路まで、大型二輪ならではのトルクの優越感を味わえるエンジンだ。

もうひとつのお勧めは、ネイキッドモデルのZ650と、そのフルカウル版と言えるニンジャ650の2モデル(最高出力68ps、Z650で車重187kg)。
2006年登場のER-6n/ER-6f系の水冷並列DOHCツインを搭載し、進化熟成を重ねた一方、180度位相クランクの野性味のある低中速域での鼓動感、高回転に向かうほどに振動が収束し滑らかに回り切っていく爽快感を両立している。

低中速域のピックアップのよさと高回転域までのつながりの良さから270度位相クランクの並列2気筒エンジンが増えている中、このカワサキツインはどこか昔くさい懐かしい刺激を味わわせる。スリムな車体と200kgを切る車重により取り回しは気軽で、コストパフォーマンスの高さも光るミドルモデルだ。

カワサキ Z650、最高出力68馬力、車重189kg、価格84万7000円。
カワサキニンジャ650、最高出力68馬力、車重194kg、価格84万7000円。

今回は国産車のミドルクラスのみをクローズアップしたが、輸入車にも個性的で魅力的な機種が多数存在する。こちらも機会があればご紹介したい。

レポート●阪本一史(元『別冊モーターサイクリスト』編集長) 編集●上野茂岐 写真●ホンダ/ヤマハ/スズキ/カワサキ/八重洲出版 

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